![](/images/clear.gif)
無更新記録更新ですなー。困ったもんだ。4~5月の年度始めはいつもこうです。新しい環境にまだ慣れなくて疲れやすいんですね。ごめんなさいです。
『雨に唄えば』の続きは追い追い書くとして(←努力します)、まずは新国立劇場バレエ団の『白鳥の湖』。
『白鳥の湖』全4幕(5月8日、於新国立劇場オペラパレス)
オデット/オディール:ワン・チーミン(中国中央バレエ団)
ジークフリード王子:リー・チュン(中国中央バレエ団)
ロートバルト:貝川鐵夫
王妃:楠元郁子
道化:八幡顕光
家庭教師:石井四郎
王子の友人(パ・ド・トロワ):川村真樹、本島美和、江本 拓
小さい白鳥:さいとう美帆、長田佳世、寺田亜沙子、細田千晶
大きい白鳥:本島美和、厚木三杏、堀口 純、丸尾孝子
スペインの踊り:厚木三杏、西川貴子、マイレン・トレウバエフ、江本 拓
ナポリの踊り:さいとう美帆、井倉真未、福田圭吾
ルースカヤ:湯川麻美子
ハンガリーの踊り:大和雅美、輪島拓也
2羽の白鳥:厚木三杏、堀口 純
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:アレクセイ・バクラン
ゲストに中国中央バレエ団のダンサーたちを招くというのは、とかく金髪碧眼の欧米人ダンサーばかりをゲストに呼ぶ日本のバレエ団としては非常に珍しいことでしょう。どういう事情があったのかは知りませんが、これはすごく良い試みだと思います。
この夏に上演される『マノン』のゲストは、ヒューストン・バレエのダンサーたちだそうです。日本でまだ名をあまり知られていない、海外の優秀なダンサーたちを紹介できるのは、新国立劇場バレエ団ならではのことでしょう。すばらしいことではないでしょうか。
新国立劇場バレエ団の『白鳥の湖』を観るのは9年ぶりだと思います。あのときは確か、ディアナ・ヴィシニョーワとイーゴリ・コルプ(マリインスキー劇場バレエ)がゲストでした。その当時は、両人とも今ほど有名ではなかったはずです。特にコルプのほうは。
今回観た版は、9年前とは演出や振付がかなり変わった気がします。個人的には、9年前のほうが良かったです。特に、第四幕の冒頭、王子が幕の前に出てきて悩ましげに踊るのは、前世紀的な野暮ったい演出で、かつ振付もお約束的でつまらないと感じましたし、9年前の版にはあった、幕が開くと白鳥たちが処々でうずくまり、藍色の背景の中、純白のチュチュがそこかしこで花のように広がっていた幻想的な光景が消えてしまったのも残念でした。
(追記:9年前のプログラムを引っ張り出してみたら、9年前はコンスタンチン・セルゲーエフ版でした。今回は「演出・改訂振付:牧阿佐美」となっています。セルゲーエフ版を下敷きに牧阿佐美さんが改訂したもののようです。セルゲーエフ版は全3幕構成ですが、牧阿佐美改訂版は全4幕構成で、第一、二幕-休憩時間-第三、四幕という形で上演され、休憩を除くと上演時間は2時間ちょっとです。新国立劇場バレエ団における牧版作品にはよくある「コンパクト・ヴァージョン」に変更された模様。)
新国立劇場バレエ団は、コール・ドから脇役に至るまで、演技も踊りもみな非常にしっかりしており、どのシーン、どの踊りであれ、とても見ごたえがありました。舞台全体がきっちりとまとまっている印象です。
白鳥たちのコール・ドは一糸乱れぬすばらしさでした。私は今回、文字どおりど真ん中の席で観ました。第一幕の人々の群舞も、第二、四幕の白鳥の群舞も、列は真っ直ぐ、手足の動きもみなきっちり揃っており、感嘆するばかりでした。
第三幕の各国の民族舞踊も、多くの場合は「とっとと終われよ」とつい思ってしまうのですが、上に書いたように、主役級のダンサーたちがソリストとしてバンバン出てきて踊るし、群舞も生き生きとすばらしく踊っていたので、引き込まれて見入っていました。
個人的には、スペインの踊りの西川貴子さん、ハンガリーの踊りの大和雅美さん、輪島拓也さんが特にすばらしかったと思います。
どういう評価が一般的なのか知りませんが、スペイン、ナポリ、ロシア、ハンガリーの踊りは、音楽自体も非常に優れているのだろうと思います。この一連の民族舞踊では、観客がすごく盛り上がりました。これは音楽の効果も大きかったでしょう。
またこれはもちろん、アレクセイ・バクランの指揮と東京フィルハーモニー交響楽団の演奏がすばらしかったからでもあります。しかしバクランは、今回は妙におしとやかでしたね。指揮台の上で飛んだり跳ねたりしてなかったし、唸り声も聞こえなかったし。
第三幕、王子の花嫁候補である王女たちの踊りと演技にも感心しました。王子から求婚されることを期待して、憧れに満ちた瞳で王子を見つめ、しかし王子に選ばれなかった後、とたんに失望の色を浮かべて悲しむ、王女たちの表情の変化が良かったです。
パ・ド・トロワ(第一幕)と大きな白鳥(第二幕)には本島美和さんが加わっていました。誰だってミスはします。仕方のないことです。しかし、大きなミスはできれば1回にとどめてほしいです。パ・ド・トロワのときに大きくつまづいてよろけたのは、相手がいきなり変わった(本来は菅野英男さんだったが、江本拓さんに変更)から無理ないかな、と思いました。でも、大きな白鳥の踊りの最後、まさに決めのポーズでバランスを崩して大きくグラついたときには、結果的にそれで踊り全体がぶち壊しになってしまったため、ナニやってんだよ、とついムッとしてしまいました(ごめんね)。
今まで気をつけていませんでしたが、堀口純さん(大きな白鳥、2羽の白鳥)はいいですね。2羽の白鳥のソロ(1番目)でのアラベスクがあまりに凄絶に美しくて、思わず鳥肌が立ちましたよ。これから堀口さんをチェックしていくことにしました。
最もすばらしかったのが、道化役の八幡顕光さんです。もっとも、今さら言うことではないかもしれません。本当に筋肉が強い!あんなにぽんぽん跳んでるのに、足音や着地音が全然しなかったです。動きは柔らかいし、技術は安定していて、まさしく安心・安全な踊り。
最近(?)流行っている、仰向け気味に半回転ジャンプをしていった最後の1回で、跳躍した瞬間に脚を大きく振り切り、身体をくるりと1回転させて着地するという技もやりました。今の日本人ダンサーでこれができるのは八幡さんくらいでは?
また感心したのが、八幡さんの雰囲気作りの上手さです。第一幕というのは観客のノリがよくないものですが、八幡さんの演技と踊りのおかげで、客席に漂っていた硬い雰囲気がほぐれたのです。舞台の上で八幡さんが孤軍奮闘している感じで、八幡さんが作品の世界を作り出そうと、そこに観客を引き込もうと意識的に努力していたのは確かだと思います。
![](/images/clear.gif)
| Trackback ( 0 )