東京都内の空中放射線量結果

  日本共産党東京都議会議員団による、5月6日より5月25日までの東京都内各所の空中放射線量測定結果です。

  文部科学省や東京都が地上10数メートルという高さで計測しているのとは異なり、日本共産党東京都議会議員団は地上1メートルの高さ(つまり赤ちゃん、子ども、犬や猫などのペット、大人が実際に地上で活動する高さ)で行なったということで、より現実的に参考になる数値です(単位はマイクロシーベルト毎時)。


   東京都内各地の空中放射線量測定結果について(日本共産党東京都議会議員団、2011年5月25日)


  都内各所の詳細な(実に詳細です!)計測結果は、各リンク先で確認して下さい(PDFファイルです)。

  この測定結果は、5月6日~5月25日までの期間における、自分が浴びた放射線の累積線量の大体を計算する目安とすることができるでしょう。また、大気中に含まれた放射性物質が東京都に到達したといわれる2011年3月15日から、来年の2012年3月14日までの、1年間の累積線量の概数を予測できると思います。

  これを見て、いたずらに不安になったり、むやみに恐怖に陥ったりするのではなく、自分や家族の被曝量の大体が今の時点でどの程度なのか、1年間でどの程度になるのかを冷静に判断、予測し、落ち着いて適切に対処するために活用しましょう。

  ちなみに私は日本共産党の回し者ではありません(笑)。前にも言ったけど、真実を教えてくれるのであれば、それがどの政党だろうと、どの機関だろうと、関係ないです(いちいちこんなことわりを入れなきゃいけないってゆうのもなー)。
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バーミンガム・ロイヤル・バレエ「ダフニスとクロエ」(5月27日)

  「ダフニスとクロエ」の振付者であるフレデリック・アシュトン(1904-88)は1926年に振付活動を開始した。そもそも、アシュトンのバレエの出発点はバレエ・リュスであり、レオニード・マシーン、マリー・ランバート、イーダ・ルービンシュタイン、ブロニスラヴァ・ニジンスカに師事してバレエを学んだ。

  現在のロイヤル・バレエ(コヴェント・ガーデン)の創立者であり、アシュトンを見出して後押ししたニネット・ド・ヴァロワも、バレエ・リュスに在籍していた経歴を持つ。

  というわけで、アシュトンとバレエ・リュスは元来、切り離せない関係にあったといえる。

  しかしながら、1930年代から60年代までのアシュトンの主な作品は:

   「レ・パティヌール」(1937)
   「シンフォニック・ヴァリエーションズ」(1946)
   「バレエの情景」(1948)
   『シンデレラ』(1948)
   「ダフニスとクロエ」(1951)
   『シルヴィア』(1952)
   『オンディーヌ』(1958)
   「ラ・ヴァルス」(1958)
   『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』(1960)
   「二羽の鳩」(1961)
   「マルグリットとアルマン」(1963)
   『真夏の夜の夢』(1964)
   「モノトーンズ」(1965-66)
   「エニグマ・ヴァリエーションズ」(1968)

である。

  こうしてみると、アシュトンが「ダフニスとクロエ」を振り付けた当時、アシュトンはすでに自身の作風を確立している。だから「ダフニスとクロエ」は、アシュトンの作品の中では振付面において非常に異色の作品だといえる。

  「ダフニスとクロエ」は1921年にバレエ・リュスがパリで初演した作品であり、脚本と振付はミハイル・フォーキンであった。音楽の作曲はモーリス・ラヴェルに委嘱された。ラヴェルの音楽は、特に物語最後の15分ほどが「第2組曲」として後に編成し直され、現在でもよく演奏されている。

  私は「ダフニスとクロエ」を全編で聴いたことがなく、また30分ほどから構成されるであろう本編の音楽に当たる「第1組曲」も聴いたことがない。今回はじめて「ダフニスとクロエ」を通しで聴いてみて、「第2組曲」のほうが演奏されることが多い理由が納得できた。

  フォーキンの振付による「ダフニスとクロエ」は現存していないようである。アシュトンはフォーキンの台本に基づいて、「ダフニスとクロエ」を新たに振り付けたのだろう。

  原点回帰というのか、アシュトンの「ダフニスとクロエ」は、フォーキン、そしてとりわけヴァツラフ・ニジンスキーの「牧神の午後」、「春の祭典」の振付に影響を受けている、もしくはニジンスキーの振付を故意に模倣しているのは明らかである。

  それは特に第一場の群舞の振付や配置において顕著で、男性たちと女性たちはそれぞれ一列に並び、もしくは円陣を組んで、互いに腕を組み合わせてゆっくりと踊る。腕の組み合わせ方とか、ポーズとか、ニジンスキーの「牧神の午後」のニンフたちの踊りにそっくり。

  第三場の大団円の群舞(なんでか知らんが全員が色とりどりのハンカチをもって激しく踊る)では、フォーキンの「シェヘラザード」の、オダリスクたちと奴隷たちとの激しい群舞を思い出した。

  ただ、その他の踊りは、いかにも「アシュトン的」な、やたらと足さばきの細かい振付で、特に『シルヴィア』、『オンディーヌ』、「二羽の鳩」を彷彿とさせるものだった。とはいえ、特に印象に残った踊りはなかった。

  場面構成とそれぞれの場面で展開される踊りのタイプもよく似ている。とりわけ、第二幕もしくは第二場が、それまでとは異なる一種の闇世界(悪玉の住処とか海底世界とかジプシーのキャンプとか)という設定で、そこでアレグロでキャラクター的な群舞が展開されるところ。海賊のブリュアクシスに囚われたクロエが海賊の巣窟で踊るというのも、『シルヴィア』にそっくりだ。

  キャラもかぶる。ブリュアクシスは『シルヴィア』のオリオンや「二羽の鳩」のジプシーの首領と、ダフニスとクロエを救うパンの神は『シルヴィア』のエロス神、また役割は異なるが『オンディーヌ』の海の神と、クロエに横恋慕するドルコンは『ジゼル』のヒラリオンと位置や役割が同じである。

  もっとも、場面構成やキャラクターが似ているのは、古典バレエ作品一般に通じていえることで、別にアシュトンのせいではない。『ドン・キホーテ』だって、同じような場面構成、キャラクター、踊りから成っている。パンの神に祈る3人のニンフたちも、こっちはオペラだけど、ワーグナーの『ラインの黄金』の3人のラインの乙女(ライン川の妖精)、『神々の黄昏』の3人のノルン(運命の女神)にかぶるような気がする。


  27日の主な配役:

   クロエ(羊飼い):ナターシャ・オートレッド
   ダフニス(山羊飼い):ジェイミー・ボンド
   リュカイオン(ダフニスに横恋慕する人妻):アンブラ・ヴァッロ
   ドルコン(クロエに横恋慕する牧夫):マシュー・ローレンス
   ブリュアクシス(海賊の首領):アレクサンダー・キャンベル
   パンの神:トム・ロジャース
   ニンフたち:ヴィクトリア・マール、ジェンナ・ロバーツ、アンドレア・トレディニック


  作品自体がさほど良いとは思えないので、特に印象に残ったダンサーはいなかった。これはダンサーのせいではなく、振付が不均一で統一性がなく、中途半端だったからである。アシュトンによるフォーキンとニジンスキーの振付の模倣の稚拙さと、アシュトン自身の欠点(軽業的な意味のない動き、陳腐で大仰に過ぎる動きと演出)が見事に(?)結合してしまった作品である。ストーリーもさして面白くない(これはアシュトンのせいではないけど)。

  しいていえば、ダフニスを誘惑するリュカイオンを踊ったアンブラ・ヴァッロがすばらしかったと思う。動きが機敏でメリハリがあり、演技もダフニスを誘惑、翻弄して、目的を遂げるとあっさりダフニスを捨ててしまう悪女ぶりが堂に入っていた。

  あと、ダフニス役のジェイミー・ボンドがすごいイケメンだった。黒髪で色白の美青年。

  演奏は東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、指揮はフィリップ・エリス。演奏は、オーケストレーションの天才といわれたラヴェルの音楽、そして情景が目に浮かぶような「ダフニスとクロエ」の音楽の魅力を充分に堪能できる出来ではなかった。原因はたぶん、「ダフニスとクロエ」では管楽器が重要だからだと思う。

  芸術監督のデヴィッド・ビントリーは、アシュトンが本当に好きなんだな、と思った。正直言って、佳作とはいえないこんな作品を再演しちゃうくらいだから。

  この「ダフニスとクロエ」は、たとえば「バレエ・リュス特別シーズン」とかの前座として、アシュトン、ひいてはイギリスのバレエの淵源がバレエ・リュスにあることを示すために上演するにはいいかもしれない。個人的にはその程度の作品だと思う。  
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バーミンガム・ロイヤル・バレエ『眠れる森の美女』

  5月21日の夜公演に行ってきました。ピーター・ライト版です。主演は佐久間奈緒さん、ツァオ・チー。前回の日本公演ではツァオ・チーを見逃したから、今度はぜひ観たかったんです。

  佐久間さんもツァオ・チーもすばらしかったです。佐久間さんの重力を感じさせない、薄い絹がしんなりと沈むかのような柔らかな動きと確かなテクニック(微動だにしないバランス・キープ、繊細な爪先での動き、軽い跳躍、などなど)、また、なによりもその稀有といっていいほどの優れた音楽性には驚くばかりでした。観ていて気持ちよかったです。

  ツァオ・チーは身体が非常に柔軟なようで、特にジャンプの着地のプリエは柔らかい!の一言に尽き、硬さがまったく感じられませんでした。見せ場はビシッと確実に決め、不安定さがまったくありません。

  が、なんといっても圧巻は第三幕のグラン・パ・ド・ドゥ。完璧なパートナーシップとは、ああいう踊りをいうんだろうなー。

  カラボスのマリオン・テイトは急な代役での出演でしたが、往年のプリマ、今はBRBのバレエ・ミストレスの怪演が見られてラッキーでした。

  喜びの精を踊り(←一般の版ではリラの精のヴァリエーション)、またコール・ドの中で踊っていたセリーヌ・ギッテンスは大いに要注目。彼女はたぶん上まで行くんではないかと(今はファースト・アーティスト)。プログラムには名前しか載っていませんが、踊りが他のダンサーとぜんぜん違うので、見ればすぐに分かります。

  ピーター・ライト版は、従来版の冗長さを省いてコンパクトにし、ストーリー性を持たせているという印象。飽きがこなくてよかった。

  第一幕冒頭のガチャガチャしたエピソード(編み物女とか)を全部削除して、いきなりガーランド(花のワルツ)で始め、続けてオーロラの登場に持っていったのはよい展開だと思う。

  第二幕の終わりでカラボスが敗北したのは、リラの精の力によるものではなく、オーロラを目覚めさせるにはキスをすればよい、と王子が自力で謎を解いてみせたから、ということが強調された演出になっていた。「謎解き」によって呪いを打ち破るという話は民話や伝説にはよく出てくる。これもナイスな演出。

  オーロラが目覚めた後、王子はオーロラに求婚し、ふたりはパ・ド・ドゥを踊る。このパ・ド・ドゥはピーター・ライトの創作らしい。音楽は間奏曲を使用していた。

  演奏(指揮:フィリップ・エリス)は全体的にかなり速め。わざと速度を落としていたのは、ローズ・アダージョの最後くらい。つい先日観た映画『赤い靴』の劇中バレエ(赤い靴)のリハーサル・シーンを思い出した。

  指揮をしていたクラスターが、バレリーナのヴィクトリアに怒鳴る。「踊りが音楽と合っていない!君のピルエットが遅いせいだ!もっと速く回転しろ!」 ヴィクトリアも怒鳴り返す。「演奏のほうを遅くしなさいよ!」 クラスターは意に介さない。「音楽が第一だ!」 イギリス・バレエは今でもやっぱり「音楽第一」らしい。

  詳しくは(できれば)また後日。
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「ネットワークでつくる放射能汚染地図 福島原発事故から2か月」再々放送

  ほんとは映画『赤い靴』(1948年)デジタルリマスター版の感想を書かなくちゃいけないんだけど(笑)、こっちのほうが今はやはり優先順位が高いので。

  今日の未明に再放送された「ネットワークで作る放射能汚染地図 福島原発事故から2ヵ月」が再々放送されます。本放送は5月15日の夜でした。それから2週間も経たないうちに再放送、ついで再々放送というのは、この番組への反響がいかに大きかったかということを物語っていると思います。


  「ネットワークでつくる放射能汚染地図 福島原発事故から2ヵ月」

  再々放送予定日時:NHK教育 2011年5月28日(土)午後3:00~


  この番組を放映したことと、この番組が大反響を呼び起こし、視聴者に高く評価されたことによって、制作に関わった人々に対して懲罰的・報復的な措置が採られるのではないか、という心配を、友人にメールで書き送りました。友人はそのメールを関係者に転送してくれたそうです。これからも定期的に状況を尋ねてみようと思います。

  ただ、そうした不安要素をなくすことができるのは、やはり私たち視聴者の力しかありません。テレビというマス・メディアでは、この番組が福島第一原発事故による汚染状況の真実をはじめて報じてくれたこと(「情報強者」な人々の一部が、この番組が報じた内容なんてとっくの昔に分かっていた、などと「自慢」するのはまったくナンセンスです)、視聴者はそれを強く支持することを、NHKに対して明確に意思表示する必要があります。

  私はこの番組についての感想を伝えるついでに、これからもこういう良心的な番組を制作し続けてくれるよう、NHKにしつこく(笑)要望していくつもりです。
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「ネットワークでつくる放射能汚染地図 福島原発事故から2か月」再放送

  5月15日(日)の夜にNHK教育テレビで放映されたETV特集「ネットワークで作る放射能汚染地図 福島原発事故から2か月」が再放送されるようです。

  再放送については、NHKから直接ご回答(メール)を頂きました。「このメールの他への周知につきましては、ご遠慮いただきますようお願い申し上げます」との但し書きがありましたが、NHKオンラインをはじめ、多くのポータル・サイトのテレビ欄にもすでに掲載されておりますから、ここに書いてもかまわないでしょう。


  ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図 福島原発事故から2か月」

  再放送予定日時:NHK総合 2011年5月19日(木)深夜25:30~27:02(つまり20日〔金〕未明の午前1:30~3:02)


  ただし、放送や放送日時は変更もあり得るとのことなので、直前に最新の番組表で確認したほうがよいです。実際、再放送は教育テレビではなく、総合テレビで行なわれる予定ですから、緊急ニュースが入ったりする可能性があります。東京電力、原子力安全・保安院、文部科学省、政府が、もはや得意芸と化した「深夜の緊急会見」をぶつけてくる(笑)可能性もあるし。

  見逃した方はぜひご覧下さい。この番組は「番組」ではなく、後世に残す価値のある「記録」といえるほどのものだと思いますよ。
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「ネットワークでつくる放射能汚染地図 福島原発事故から2か月」

  NHK教育で昨夜放送されたETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図 福島原発事故から2か月」を観ました。

  下の記事で「観たら余計に不安になるだろう」と書きましたが、結果はまったく違いました。正しい情報を知ることができて、逆に落ち着くことができたのです。

  ただし、「安心した」のではありません。原発周辺地域を中心とした福島はもちろん、東京も安全というわけではないことは、東京や神奈川在住の研究者たちが毎日、自宅の外で放射線量と放射性物質を計測・測定しているシーンで分かりました。

  でも、私は東京から離れることができません。仕事がありますから。ここにいるしかないのです。ならば、できるだけ被曝しないように防備する、被曝の危険にさらされている状況の中にあって、できるだけ危険を避けられるような対策を採る、という覚悟ができました。

  それにしても、東京電力、経済産業省、文部科学省、政府の対応は本当にひどいですね。原発周辺地域の汚染状況は「まだら模様」の呈をなしていて、たとえば原発を中心とした20キロ圏内が一律に同程度の汚染状況にあるわけではありません。原発から数キロしか離れていないのに低い数値を示す地域もあれば、原発から30キロ離れていても高い数値を示す地域もあります。

  最近よく使われる語で、高濃度汚染地域を示す「ホットスポット」というのがあります。研究者たちが細かく放射線量を測定していったら、「ホットスポット」に該当する地域があって、なんとそこに地元住民たちが自主的に避難所を設けて共同生活を送っていた。しかし、避難している住民たちには、そこが高濃度汚染地域であることはまったく知らされておらず、更に地元の役場でさえも、東京電力、経済産業省、文部科学省、政府から何の連絡も受けていなかったというのです。

  対応がひどいというのは、文部科学省は放射性物質と放射線量を計測する「モニタリングポスト」を各地域に設置しています。研究者たちが上記の地域がホットスポットであると分かった時点で、すでに文部科学省はその地域にモニタリングポストを設置していました。

  つまり、文部科学省はその地域が高濃度汚染地域であろうことを、おそらく拡散予測に基づいて、かなり早い段階で把握しており、それでモニタリングポストを設置したのであろうと思われるのです。でも、それをその地域の避難所の住民たちに通知していませんでした。数値自体は発表したものの、どの地域で計測したのかについては隠したのです。

  研究者たちは各地域の土壌や植物を採取し、それを複数の大学に送って分析してもらいました。各地の研究者たちのネットワークを活用して、ただ1人の研究者、ただ1箇所の大学の測定結果のみに頼るのではなく、単一の同じサンプルを複数の大学でそれぞれに分析してもらったのです。実に科学的な対応です。

  注目すべきは、現地に赴いて放射線量を計測して土壌や植物を採取したのも、それらのサンプルを分析したのも、中部、関西、中国、九州地方にある大学の研究者であり、東京大学をはじめとする関東地方の大学はまったく関わっていないらしいことでした。

  このことは、とりわけ東京大学をはじめとする関東地方の大学の研究者たちが、今回の原発事故に関しては、科学的な測定や分析を厳密に行なって、その結果を事実のとおりに発表することが極めて難しい現状を示しているように思われます。

  特に、東京電力-東京大学-経済産業省-文部科学省-政府-マスコミという繋がりは、原発事故の発生以来、徐々に明るみに出てきました。この繋がりはもちろん、人脈を通じて利権を保持しようとする性質のものです。

  今回の番組が信用に値すると思われるのは、計測と分析に関わった研究者たちが、この繋がりに属していない人々だからです。

  また、現在の政権がもし自民党だったら、今回のような番組は制作できなかったろうし、放映もできなかったでしょう。東京電力が官僚以上に官僚的だというのはよくいわれることですが、NHKも同じです。NHKも東京大学出身者が幅を利かせており、政界、特に自民党との結びつきも強いです。民放も似たり寄ったりで、更に民放は東京電力から多額の広告収入を得ていますから、東京電力に都合のわるいことはあまり報道できないだろうと思われます。

  ですが、現在の政権はヘタレの民主党ですから、以前にあったといわれるような、与党の政治家から、放送内容を無難で穏便で事実をねじ曲げたものに変更するよう強い圧力がかかるということがなかったのかもしれません。

  とはいえ、よく今回のような番組を制作して放映できたものです。NHKには、上司たちが寄ってたかって、優秀な人材を正当に評価しなかったり、閑職に異動させたりするやり方で潰してしまうという体質があります。ですから、タブーに挑んだ今回のような番組を制作・放映できたこと自体、私には驚きでした。

  私が落ち着いた気持ちになれたのは、NHKの中にもこういった番組を制作するような、良心的で勇気ある人々がいるということが分かったからでもあります。

  同時に、上にも書いたように、日本の原子力事業の利権構造に属していない研究者たちが、科学的に調査し、真実の結果を記録してくれていること、それに私は希望が持てました。

  今回の番組では、ただ単に放射性物質の量や放射線量の計測結果を明らかにするだけではなく、原発事故によって避難を余儀なくされた人々、生産再開の目途がつかない農家、飼っていた鶏をすべて失った養鶏業者の人々にも取材を行なっていました。

  福島だからという理由で餌の運送を拒否され、飼っていた3万羽の鶏がすべて餓死したのを目の前にして、呆然とした表情でたたずむ養鶏業者の男性。

  育てた苗を捨てるためにむしり取りながら悔し涙を流す男性。

  作付けできない種もみを手にすくい取っていとおしそうに見つめる女性。

  涙を手でぬぐいながら、「私は原発関係の会社で働いたこともあります。でも、今はむなしい、東電が憎い。暗くてもいい、明かりが点かなくてもいい、原発はいらない」とつぶやいた避難している女性。

  そんな人々の姿を見ると、「原発でさんざんおいしい思いをしてきたんだから、今さら文句は言えないでしょ」とは、とても思えなくなりました。

  福島第一原発の事故によって避難を余儀なくされた人々といえば、テレビ(特に民放)のニュースに写る様子は、「補償」、「賠償」、「一時金」、「仮払い」等々、ヒステリックに大声でお金を要求する姿ばかりでした。その様子に私は感情的に違和感を抱いていました。でも、それが人々の心情のすべてではなく、本当は故郷を失った悲しみ、今まで築き上げてきたものを失った悲しみ、思い出と未来への展望を失った悲しみが、人々の心のほとんどを占めているのだと実感しました。

  最後に付け加えると、文部科学省が行なっているモニタリングは、東京は新宿区が基準になっています。今回の番組では、放射性物質や放射線量の測定には、学校の校庭や公園など、土がむき出しになっている場所が適切であり、アスファルトやコンクリートで覆われた地面は、雨水などで放射性物質が流れやすいため適切でないことが示されていました。

  そうなると、アスファルトやコンクリートだらけの新宿区をモニタリングの地点としているのは、放射性物質や放射線量が低いと見込まれる場所をわざと選んだのではないか、と邪推してしまいます。具体的に新宿区のどこにモニタリングポストを設置しているのか、ぜひとも知りたいところですし、どうせ測定するなら土がむき出しになっている場所を選んでほしいものです(ただし、西新宿の高層ビル群の真下あたりに設置しているのなら、設置場所としては適しているだろうと思います)。
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原発事故の話なんてうんざり、だけれども

  最初は注視していた福島第一原子力発電所の事故ですが、最近は見出しを見るのもイヤになりました。そんな私の心境を見透かしたかのように、原発事故がマスコミの報道に占める割合は減り、東京電力と原子力安全・保安院は、今になって(やや)本当の情報をコソコソと小出しに発表しています。

  友人の友人が直接関わったということで、友人から番宣のメールが来ました。今夜、NHK教育で原発事故関連の特集番組があります。(以下は友人のメールより転載)


  2011年5月15日(日) 22時00分~23時30分

  ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図 福島原発事故から2か月」(NHK教育)

   原発事故直後、元放射線医学総合研究所の研究員、木村真三さん(43歳)は勤務先の研究所に辞表を出し福島の放射能汚染の実態調査に入った。

   強烈な放射線が飛び交う原発から半径10キロ圏にも突入、土壌や植物、水などのサンプルを採取、京都大学、広島大学などの友人の研究者たちに送って測定、分析を行った。

   また、かつてビキニ事件やチェルノブイリ事故後の調査を手がけた放射線測定の草分け岡野真治さん(84歳)が開発した測定記録装置を車に積んで、汚染地帯を3000キロにわたり走破、放射能汚染地図をつくりあげた。
 
   その途中で見つけた浪江町赤宇木の高濃度汚染地帯では何の情報もないまま取り残された人々に出会う。

   また飯舘村では大地の汚染を前に農業も、居住もあきらめざるを得なくなった人々の慟哭を聞き、福島市では汚染された学校の校庭の土をめぐる紛糾に出会う。

   国の情報統制の締め付けを脱して、自らの意志で調査に乗り出した科学者たちの動きを追いながらいま汚染大地で何が起こっているのか、を見つめる。

  (転載終わり)


  友人によると、これは「独自データを用いた調査報道」とのことで、文部科学省などが発表している放射線量の計測結果とはまったく別の計測データに基づいているそうです。

  観たら余計に不安になるだろうことはうけあいですが、現実に起きていることなら、私はやはり知ろうと思うのです。できれば原発事故から目をそむけたい私の心理につけこもうとする連中の思うツボにはまらないためにも。
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ごまめの歯ぎしり

  今までエラソーに福島第一原発事故についてうんちくたれてきましたが、実は虎の巻があります。

  河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり

  河野太郎氏は自民党所属の衆議院議員。自民党だからといって、すべての党員が執行部と同じ原発推進派・電力族議員・原子力村の住人というわけではないし、与党である民主党執行部の中にも原発推進派・電力族議員・原子力村の住人が跳梁跋扈しています。

  河野氏は政府、与党民主党、更に自民党執行部に対して、異論があるときは批判し、自分の意見をはっきり明晰に述べています。

  今回の原発事故に関しては、政界・官僚界・経済界の動きをリークしていて(それでも政治家として書いてはならない「一線」は越えていないと思いますが)、福島原発事故をめぐって、永田町と霞ヶ関で今どういう議論と動きが起きているのかを明らかにしています。リアルタイムで読んでいるとすっごい生々しい。

  私はブログでなくメールマガジンを受け取っているのですが、今日(4日)に来たメルマガに書かれていたことには腹が立ちました。

  目下のところ、経済産業省、東京電力、電気事業連合会は、東京電力の補償・賠償責任を免れさせよう、かつ東京電力を分割したりしないよう、国会議員に盛んに働きかけ(いわゆる「ロビー活動」)を行なっているそうです。

  つまりこれは、東京電力は一切損をせず、電気料金の値上げや増税によって、国民に補償金と賠償金をすべて負担させる、ということです。

  興味のある方はぜひのぞいてみて下さい。ちなみに、私は河野氏の支持者、自民党の支持者ではありません。本当のことを教えてくれる人ならば、その人がどの政党に属しているかは関係のないことです。

  

  

  
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テルマエ・ロマエIII

テルマエ・ロマエ III (ビームコミックス)
ヤマザキマリ
エンターブレイン


(↑表紙を見た時点ですでに大爆笑。シャンプーハットかぶって髪を洗って、実に気持ちよさそう~!)

  テルマエ・ロマエIIIが出ました。本の帯をみてびっくりしたことには、なんと実写映画化が決定だそうです。主演は阿部寛と上戸彩で、阿部寛がルシウス役、上戸彩が「平たい顔族」(←もはやいうまでもないが、現代の日本人)役だそうです。

  ルシウスが阿部寛というのはナイスキャスティング。顔といい雰囲気といい、生真面目だけどなんか笑えるルシウスにぴったり。脳裏に浮かぶようです(笑)。

  さて新刊のこのIII、ネタ切れどころかますます面白くなっていて、相変わらず笑えるんだけど、物語に更に深み(?)が増して、ルシウスを通じて、風呂を美学的・哲学的視点から論じているほどです。今にして思えば、Iは単純な一発ギャグで笑わせる、いわば「短く持ってコツコツ当てる」式のテスト執筆だったのだな、と感じます。

  今までは1話完結方式だったのが、IIIからは複数回完結方式になっていて、そのぶん各話の内容も豊かになりました。古代ローマの浴場文化や歴史について知ることができるのはもちろん、更に思い起こすことができるのです、私たちがすっかり忘れていた、日本の伝統的風呂文化の良さと豊かさというものを……

  IIIで私が特にツボったのは、

   ・温泉街の射的屋でルシウスが当てた巨大ぬいぐるみのキモカワいさ。
   ・ルシウスが「平たい顔族」の温泉街のラーメン屋で味噌ラーメンを食べて、そのあまりな美味に、またしても誇り高いローマ人として文化的敗北感に打ちのめされる様子。
   ・ルシウスが「平たい顔族」の設計技師が持っていた古代ローマっぽい浴場の設計図を見て、はじめて誇り高いローマ人として文化的勝利感に打ち震える様子。

  です。また、このIIIでは、I、IIではほとんど笑ったことのないルシウスの笑顔が2回くらい見られます(訂正:読み直したら1回でした)。
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