真夏の夜の夢

  忙しさのヤマは越えた、などと前に書きましたが、結局まだ忙しいままです。というより、大きな忙しさばかりに気を取られて、普通にあった忙しさをすっかり忘れていたわけです。
  で、6月越えたらワタシは自由だわっ、と思い込んで、バレエのチケットを買い込んでしまっていました。それで更に忙しさに拍車がかかっている次第。なんとか時間をやりくりしなければなりません。

  6-7月は「ヨーロピアン・コンテンポラリー・ワークス強化月間」になりそうです。ネザーランド・ダンス・シアターIとモンテカルロ・バレエを観に行くのです。
  私は今まで、ウィリアム・フォーサイスの「ステップテクスト」、モーリス・ベジャールの「春の祭典」と「ボレロ」しか観たことがなく、果たしてついていけるかどうかいまいち不安です。でもこれも経験、せっかくの機会ですから、楽しむよう努力しようと思います。
  新国立劇場バレエ団の「ジゼル」も観ます。これは純粋に楽しみです。

  東京は毎日蒸し暑い日々が続いています。書類の紙もねえ、時間が経つにつれて、湿ってぐんにゃりしていくんですよ。脳ミソや各種神経の働きも鈍くなっているようで、頭の回転がハエが止まるほどゆっくりになり、疲れているはずなのにあまり自覚症状がありません。熱帯植物園の中を夢心地でさまよい歩いているようです。恐るべし80%超の湿度。

  やっと本題です。クーパー君はどうせ元気だろうからいいとして、サラ・ウィルドーは今ごろ、ラドロー・フェスティバルの「真夏の夜の夢」出演で忙しいはずです。検索したら、個人のブログに感想を見つけました(←忙しくてもこーいうことはする)。
  そしたら、どうもサラ演ずるタイターニアが踊るシーンがあるようですね。褒められていました。また、セリフだけの劇かと思い込んでいたのですが、効果音、また音楽も用いているそうです。メンデルスゾーンの曲でしょうか。
  
  サラが踊ったというのがいちばん嬉しいです。私は、彼女には決して踊りを止めてほしくない。あまりにもったいないもの。
  サラが出演している「真夏の夜の夢」、観てみたいものです。  
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やっぱり?

  クーパー君の公式サイトによると、クーパー君は6月26日(月)の「ガイズ・アンド・ドールズ」を休演するそうだ。「休暇」と説明されている。

  しかし!これはたぶん(というより十中八九)、ラドロー・フェスティバルで上演される「真夏の夜の夢」を観に出かけるものと思われる。26日にはちょうど公演があるもんね。クーパー君の「ゴージャス・アンド・ビューティフル・ワイフ」、サラ・ウィルドーのタイターニアを観に行こうという魂胆に違いない。

  クーパー君目当てで、26日の「ガイズ・アンド・ドールズ」のチケットを取ってしまった人は気の毒だ。けど、彼が本当はもっと愛妻の演ずるタイターニアを見たいのに、一日だけで我慢した、というのなら、いかにも仕事に真面目なクーパー君らしい。

  たぶん27日の朝とかに大急ぎでロンドンに戻るんだろうなあ。想像するとちょっとほほえましい。
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Fairy-tale Prince

  ballet.coで面白い記事が紹介されていたので、さっそく行ってみた。6月11日の「サンデー・タイムズ」に掲載された、ジョナサン・コープ(Jonathan Cope、元ロイヤル・バレエ プリンシパル)のインタビュー"Handing on to others"である。

  ジョナサン・コープは今シーズンをもって引退したが、二月に上演された「火の鳥」が彼のさよなら公演となるはずだった。しかし、公演直前の一月、彼は交通事故を起こして左脚を負傷し、出演が予定されていた「火の鳥」をすべて降板した。その交通事故とは、コープがバイクに乗っていてバスに衝突し、路面に投げ出されたというのだから凄まじい。よく骨折程度で済んだものである。

  コープは今後もロイヤル・バレエにとどまって、後進の指導にあたるそうだ。現役時代はシルヴィ・ギエムやダーシー・バッセルの定番パートナーだった。ダーシー・バッセルやサラ・ウィルドーはかつて、ギエムがコープを「占有している」ことに言及したが、これはコープがパートナーとしてすばらしい能力を持ったダンサーであったことを示している。
  批評家たちは時おり彼のパフォーマンスを「退屈」と表現したものの、彼がロイヤル・バレエを代表する「プリンス」であることは、否定しようのない事実だった。

  しかし、年齢を重ねるとともに、コープは"fairy-tale prince"からの脱却を試みたようだ。その一つが、2001年秋に上演されることになった、ジョン・クランコ振付「オネーギン」のタイトル・ロールへの立候補である。だが彼の申し出は、「オネーギン」のキャスティングを担当したシュトゥットガルト・バレエ団芸術監督、リード・アンダーソンによって却下された。
  その理由は明らかにされていないが、私が個人的に思うことには、コープの演技力、表現力がネックになったのだろう。

  2004年の「マイヤリング」で、コープは初めてルドルフ皇太子役を踊った。時に彼は39歳だった。イレク・ムハメドフが30代前半で、アダム・クーパーが20代前半でルドルフ皇太子を踊ったのと比べると、かなり遅い「ルドルフ・デビュー」だといえる。
  コープのルドルフ皇太子は大絶賛され、「コープは一皮むけた」と評された。また「オネーギン」再演にもキャスティングされた(体調不良で降板したが)。

  今回の「サンデー・タイムズ」で興味深いのは、役柄の解釈と表現というものに対して、自分はのんびりしすぎていたと、コープ自身が認めていることである。以下にその部分を引用する。
  “I was a slow learner,” he says. “Any character can be invested with magic and depth if you are committed to it, and I was very late to realise that. Too late, almost... I got it just in time.”

  また、コープはケネス・マクミランと長い時間を共有していたにも関わらず、そのチャンスを充分に生かさなかった。以下も記事に載っているコープ自身の言である。
   “I should have got more out of Kenneth,” says Cope. “He could have taught me. I think he tried to connect, but I was in fear of him most of the time. Even when we were making Pagodas together, it was like having God sitting in front of me.”

  王子役を担当することは、男性バレエ・ダンサーの世界では「勝ち組」を意味する。コープは輝かしい「勝ち組」ダンサーであった。
  クーパー君は「負け組」であり、代役としての場合のみ、辛うじて王子役を踊ることができた。あの熊川哲也でさえも、ドゥミ・キャラクテールの地位に甘んじた。

  両人はバレエ団で生き残るために知恵をしぼっただろう。クーパー君の演技力と表現力は天賦の才などではなく、彼が意識的に努力して身につけた能力に違いない。マシュー・ボーンもこの点を指摘して、「彼の『自然な演技』とは、実はすみずみまで計算され尽くしたものだ」と言っている。
  熊川哲也は卓越したテクニックを前面に押し出したが、しかしこれは逆効果をもたらした。「自己顕示欲が強すぎる」、「派手で仰々しい」という評価が定着してしまい、テクニックを見せるための役柄に、レパートリーが限定されるようになった。

  だが、ロイヤル・バレエではどちらかというと不遇だったクーパー君と熊川君は、ロイヤル・バレエを飛び出して、先の見えない不安を常に抱えながらも、それぞれがより広い世界で活動している。
  ロイヤル・バレエの華々しくも怠惰な王子だったジョナサン・コープは、女王からの叙勲という栄誉を片手に、ロイヤル・バレエという小さな世界の中に安定した座を占め、これからを過ごそうとしている。
  
  いったいどちらが幸せなのだろう。
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居場所

  相変わらず更新がなくてすみません。おかげさまで、仕事の忙しさの山は越えました。ところが、一段落した途端に疲れがドッと出てしまったようです。しつこい頭痛(バファリン飲んでも効かない!)、全身倦怠感、軽い胃腸炎などが同時勃発した上に、昨日なんか地下鉄の階段ですべって転び(雨でぬれていた)、足首の皮膚がヨコ3センチにわたってべろん、と削げて垂れました。でも靴や服を汚さずに済んだので、それに一番ホッとしている私はやはり女、と思いました。不思議なのは、皮膚が削げたのにストッキングは無傷だったことです。優れた伸縮性のなせる業でしょうか。

  時間ができたので、久しぶりに本を読みました(だから心の休養は必要なのよ~)。まず、「毎日かあさん」(西原理恵子著、毎日新聞社)の第3巻「背脂(せあぶら)編」が出ていたのでさっそく購入。今回も大いに笑わせてもらったと同時に、ほのぼのした気持ちになったり、しんみりした気持ちになったり、サイバラ作品を堪能しました。それにしても、西原理恵子の描く海の色は、吸い込まれるように深くて濃い青で、ほんとにきれいだよね。

  あと、齋藤学の新刊もあったので買いました。「自分の居場所のみつけかた」(大和書房)。齋藤学の前の著書、「男の勘ちがい」(毎日新聞社)では、なんか文章が虚無的というか、厭世的というか、投げやりというか、全体的に絶望感が漂っている感じで心配だったのですが、「自分の居場所のみつけかた」では、この人独特の、シニカルで冷めたユーモアのある文章になっていたので安心しました。 

  齋藤学は一時マスコミにバッシングされましたが、まったくめげてないどころか、逆にそれを面白がってるのが痛快でした。この人はさまざまな「患者」とその家族のありようを、長年にわたって見つめ続け、それに関わってきた人ですから、もう多少のことでは動じなくなっているのでしょう。
  しかも、齋藤学は常に「患者」とその家族を突き放して見ていて、その記述は時に冷たいと思えるほど客観的でシンプルです。この「自分の居場所のみつけかた」でも、「まあ、みなさんもその気があるなら試してみれば?」という感じで、これがまた読者と「適正距離」を保っていて非常によろしいと思います。

  今ワイドショーが大騒ぎしている秋田の児童殺人事件の容疑者などは、齋藤学に診察してもらうべき人だったろうと思います。新聞や雑誌の報道から感じるのは、おそらくは彼女自身が、かつては被虐待児童であったのだろうということです。しかもかなり深刻な虐待を受けた人だろうと感じます。
  というわけで、まず心理療法士をやってる人に聞いてみました。私「あの人、病気でしょ?」 心理療法士「うーん、そうだねえ。」 私「あなた治せる?」 心理療法士「来て話をしてくれればねえ。」
  次に精神科医をやってる人に聞いてみました。私「あの人、病気でしょ?あなたならどうやって治す?」 精神科医「話をさせて、つまり子どもの頃からの悲嘆を出させるかな。」
  二人とも「まず話をさせる」という点で一致しました。あの容疑者から真っ先に聞き出す必要があるのは、彼女自身の被虐待歴なのかもしれません。

  最後はヘンな話になっちゃってごめんなさい。
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ケリー、バランシン

  まずは、サイトの更新が遅れてしまってすみません。例によって仕事が忙しいためです。来週には楽になりますので、なるべく来週にはまとまった更新ができればと思います。
  といいつつ、青風さんから教えてもらった「ザッツ・エンタテイメント3」(94年)と「ザッツ・ダンシング」(85年)を観ました(心の休養は必要なのよ~)。「ザッツ・エンタテイメント3」には、ジーン・ケリー振付・主演の「十番街の殺人」の一部が、「ザッツ・ダンシング」には、ジョージ・バランシン振付の「オン・ユア・トウズ」から「王女ゼノビア」パ・ド・ドゥの一部が収録されています。

  ジーン・ケリーの「十番街の殺人」はなんだかポップで明るい感じで(ストーリーは楽譜のト書きの通りらしいですが)、クーパー君がやった「オン・ユア・トウズ」の「十番街の殺人」とは、雰囲気がだいぶん違います。
  でもケリーの振付は音楽のツボをしっかり押さえてあってカッコいいです。またケリーの踊りはやっぱり卓越しています。顔はハンサムとはいえないし、体型もずんぐりむっくりですが(ファンの方ごめんなさい)、ケリーの踊りには一種の「色気」のようなものがあります。私はケリーのタップ・ダンスよりは、普通のダンスのほうが好きです。

  バランシンの「オン・ユア・トウズ」はモノクロでした。全編を収録した映像版が出ているかどうかは謎ですが、映像そのものはどこかに残っているようです。
  ゼノビア(ヴェラ)役はヴェラ・ゾリーナで、貧しい青年(コンスタンティン)役はチャールズ・ラスキーという人です。ヴェラは白い短いチュチュ、コンスタンティンは上半身裸に短いボロボロのズボン、という衣装です。
  振付は当たり前ですが純粋なクラシック・バレエです。でもコンスタンティンとヴェラが両腕を複雑に交差させて絡み合わせたり、コンスタンティンが太腿やふくらはぎでヴェラの体を支えたりと、面白い動きが入っています。

  「ザッツ・ダンシング」にはこの他、ミハイル・バリシニコフが踊る「海賊」第二幕よりアリのバリエーション、ロイ・フラー、イサドラ・ダンカンの踊る映像、アンナ・パブロヴァの踊る映像と彼女が出演した映画「ポルチシの唖娘」の一部、映画「赤い靴」の一部、タマラ・トマーノバの踊る「ドン・キホーテ」第三幕グラン・パ・ド・ドゥよりキトリのバリエーション、映画「回転木馬」よりジャック・ダンボワーズ(NYCB)のソロ、ルドルフ・ヌレエフとマーゴ・フォンテーンの踊る「海賊」第二幕グラン・パ・ド・ドゥのコーダが収録されています。

  中でもすごいのが、ミハイル・バリシニコフが踊る「海賊」のアリのバリエーションで、ジャンプした途端に空中で体全体を回転させながら、更に両脚をねじるようにして下半身を半回転させています。
  あと、アンナ・パブロヴァが、両足を揃えてポワントで立ち、それからゆっくりと片脚を上げてアラベスクをするのです。最初から片足ポワントでアラベスク、というのは普通に見ます。でも最初は両足ポワントで立っていたのが、それから片足はポワントを保ちつつ、もう片脚を上げてアラベスクをする、というのは可能なのでしょうか。誰か後ろで支えていたのをカットした映像ではないかと思うのですが。

 「ザッツ・エンタテイメント」シリーズと「ザッツ・ダンシング」は、主にMGMミュージカル映画のいいとこ取りをした映画ですが、バレエを含めたダンスの歴史が分かって面白いです(青風さん、教えて下さってどうもありがとうございます)。「ザッツ・エンタテイメント」の1と2も観てみようかな、と思っています。
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ガイズ・アンド・ドールズ新キャスト

  クーパー君の公式サイトでもうみなさんご覧になったでしょうが、パトリック・スウェイジなる人物が、7月中旬から「ガイズ・アンド・ドールズ」にネイサン・デトロイト役で出演することになったとのこと。

  同姓同名の別人でなければ、新ネイサンとなる「パトリック・スウェイジ」とは、有名俳優であるあのパトリック・スウェイジのはずだ。彼はもともとはダンサーであり、いくつかのダンス映画に出演している。また、正義漢から悪役までをこなすスウェイジの芸域の広さは、みなさんすでにご存知のとおりである。

  これは強敵だぞ、クーパー君。踊りに関しては、ネイサンは「クラップ・シューターズ・ダンス」と"Sit Down You're Rockin' The Boat"で、群舞の一員として踊るだけである。しかし演技に関しては、百戦錬磨の俳優であるスウェイジと、クーパー君が果たして対等に渡り合えるかどうか、これは見ものだ。下手をすると、スカイがネイサンに呑まれてしまう可能性がある。

  クーパー君とスウェイジの出演時期が重なるのは1ヶ月余りだが、どうか負けないでねクーパー君!余談だけど、「ガイズ・アンド・ドールズ」は、明らかに有名スターをキャスティングすることで客を引き寄せる手法を採っているなあ。

  これもクーパー君の公式サイトに載っていたニュース。サラ・ウィルドーが、今月末から7月初めまで開催される「ラドロー・フェスティバル」で、シェイクスピアの「真夏の夜の夢」にタイターニア役で出演するそうだ。

  残念ながら、これはアシュトン振付のバレエではなく劇らしい。でもタイターニアはウィルドーのイメージにまさにぴったりな役だと思う。さぞ美しくて魅力的な妖精の女王となることだろう。

  調べてみたら、ラドローはシュロップシャーにあるらしい。ロンドンからは遠いし、もちろん上演日は「ガイズ・アンド・ドールズ」と完全に重なっている。クーパー君は休みを取って観に行くのだろうか、それとも自分の舞台に集中するのだろうか。クーパー君も今ごろどうしようか悩んでいるのかもしれない(笑)。  
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