新国立劇場バレエ「ラ・バヤデール」

  週末はいろいろと立て込んでいまして、その中の一つに新国立劇場バレエ「ラ・バヤデール」(2007年5月18~25日)のチケット取りがありました。一般発売初日が23日(土)だったのです。

  チケットぴあ(オンライン)で取りました。覚悟はしていましたが、最初は「ただいまアクセスが集中しております」云々の表示が出て、なかなかつながりませんでした。数分してようやくアクセスできて、チケットは取れたことは取れました。でも、視力の超低い私にとっては、お世辞にもよいとは言い難い席でした。

  新国立劇場バレエのなんかの会員とかになればいいんだろうけど、すべての公演を観に行くほどのファンではないしなあ・・・。一般で、チケットを取れただけよかったと思いましょう。

  スヴェトラーナ・ザハロワの踊るニキヤをどうしても観たかったので、ザハロワが主演の日を選びました。新国立劇場バレエのダンサーが主演する公演も観ようかと考えましたが、寺島ひろみさんが主演するのは21日(水)で、この日は仕事で遅くなるだろうからだめ、本島美和さんが主演するのは25日(日)ですが、本島さんは以前にアシュトン版「シンデレラ」で観て、演技力とスタミナに不安を感じたので、今回は見合わせました(なにせニキヤだから)。

  ガムザッティは西川貴子さん(18・20日)、真忠久美子さん(21日)、湯川麻美子さん(24日)、西山裕子さん(25日)で、全員が新国立劇場バレエのダンサーです(たぶん)。ガムザッティも演技と踊りの両方で大変な役だと思います。どんな舞台になるのか楽しみです。

  ソロルは誰だか忘れました。・・・デニス・マトヴィエンコ、中村誠さん、マイレン・トレウバエフだったような気がします。どうも、「ラ・バヤデール」だと、ニキヤとガムザッティばかりに注目してしまいます。

  音楽はジョン・ランチベリーの編曲版を使うようです。ランチベリーの編曲版では、「太鼓の踊り」と「壷の踊り」が削除されているのです。以前にコメントを頂きましたが、新国立劇場バレエの「ラ・バヤデール」には、実際にこの二つの踊りがないそうですね。ちょっと残念です。

  新国立劇場バレエが「ラ・バヤデール」を上演するのは2003年以来だそうです。2003年といえば、マシュー・ボーン版「白鳥の湖」日本公演が行なわれた年です。この公演に参加していたアダム・クーパーが、やはり日本公演を行なっていたパリ・オペラ座バレエ団の「ラ・バヤデール」と、新国立劇場バレエの「ラ・バヤデール」の両方を観て、新国立劇場バレエのほうが優れている、と日記に書いたのは有名な話(←あくまでファンの間では)。新国立劇場のオペラ劇場に、アダム・クーパーがふら~、と現れた目撃談もお聞きました。

  クーパー君も褒めた新国立劇場バレエの「ラ・バヤデール」、今からとても楽しみです。
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眼に到る花枝 転眼に空し

  先週末は、恩師の葬儀に参列してきました。午前からお昼過ぎにかけては、風が強いものの、快晴で暖かい良いお天気でした。

  恩師は80代でしたから、私はひどい悲しみや衝撃といった激しい感情は起こりませんでした。ただ、先生は健在なのが当たり前だと思っていました。死ぬはずはないと思っていました。だから、先生が亡くなってしまった、いなくなってしまった、ということがいまだに信じられず、また実感が湧いてきません。

  喪主である息子さんは、挨拶の中で風の強さに触れて、「まったく父は最後までいたずら好きで」とおっしゃっていました。

  先生のことを思い出すと、ニコニコと笑っている顔しか浮かんでこないのです。

  焼香を終えた後、友人たち数人と連れ立って帰りました。帰り道に自家製の天日干しの干物を売る魚屋さんの前を通りかかりました。喪服を着た集団が買いあさりました。

  お葬式に参列した後に生臭物を買うなんて、とみなさんには叱られそうですが、先生はきっと、「ああ、そうですか、それはそれは。よかったよかった。はっはっは」と目を細めて笑うだろうな、と思いました。

  強風の吹く中、花やほころびかけたつぼみをつけた梅の木が風に揺れていました。風が強くなるたびに、梅のよい香りが波のように漂ってきました。

  春晴雖好恨多風 春の晴れた天気はよいものだが、風が強いのが残念だ。
  到眼花枝轉眼空 花をつけた枝を見つけたら、あっという間に花を散らせてしまう。
  晴不與花爲道地 晴れた天気は花に味方してくれない。
  爭如雲淡雨濛濛 淡い雲がたちこめて、雨が煙るように降るほうがまだましだ。

  風に揺れる梅の木を見ながら、この詩が頭に浮かんでいました。もっとも、青空を背景に、風に揺れる梅の花は美しいものだと思うのですが。
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銀聯カード

  いつか書いたように、私は中国の某銀行に口座を持っていまして(他人名義だけど)、去年の秋に中国に行ったとき、カードを作ってもらいました。そのカードは単なるキャッシュ・カード(クレジット・カード機能なし)ですが、「銀聯(ぎんれん)カード」でした。

  「銀聯」とは、正式名称は「中国銀聯」というそうです。中国の各銀行によって結成されたネットワーク組織で、「銀聯カード」であれば、中国のどこの銀行のATMでも現金を引き下ろすことができます。・・・という程度の知識しか、私にはありませんでした。でも、このまえ新宿の某有名百貨店に買い物に行ったら、「銀聯カードが使えます」という意味の掲示がレジ横に立ててありました。

  えっ!?と思って、レジのお姉さんに聞いてみました。「銀聯のカードは、中国の銀行の口座に、外貨預金(米ドル、ユーロ、日本円などの基軸通貨)がある場合に限って使えるのですか?人民元の預金しかないと使えないのでしょうか。」

  レジのお姉さんによると、基軸通貨の外貨預金の有無は関係なく、人民元オンリーの預金でも、日本で「銀聯カード」で決済することが可能だそうです。

  「銀聯カード」のすごいところは、中国の銀行の口座の残高を即座にチェックして、買い物の決済を残高の範囲内に限定できることです。つまり、日本円をその場で人民元に換算して、口座の残高で支払いができるかどうか確認できるのです。

  これはわたくしにとっては福音です。中国でしか使えないと思っていた「銀聯カード」が、まさか日本で使用可能とは!日本円が足りないとき(つまり給料前でビンボーなとき)には、「銀聯カード」が使えるお店に行って、人民元の預金でまかなえばいいのです。

  日本のデビット・カードも、いずれ「銀聯カード」のように、外国でも使えるようになってほしいものです。
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「ゾロ」リハーサル映像

  アダム・クーパー公式サイトがリンクしている、サウザンプトンのメイフラワー劇場の公式サイト上で、ミュージカル「ゾロ」のリハーサル風景、監督、振付家、ジプシー・キングス、主演者へのインタビュー映像が公開されています。クーパー君の公式サイト から跳んで下さい。

  別枠で映像のあるページが開きます。下のリストから“Zorro”をクリックします。すると自動的に映像が再生されます。時間はおよそ5分間です。

  残念ながら、クーパー君のインタビューはほんのわずかな時間ですが、リハーサルのシーンでは、割とマメにクーパー君の姿がちらほら見えます。少しですが踊る姿、それから歩いていく姿、そして、私が何よりも恐れていた、歌っている姿。最後は振付家のアマルゴ(←おネエ疑惑急浮上)に撫でられて、おまけに抱き寄せられているクーパー君の後頭部。

  なお、私のパソコンでビデオ・クリップのページを開いて映像を見た後、そのページを閉じようとしたら、パソコンが制御不能になりました。みなさんのパソコンで同じことが起きた場合は、Ctrl、Alt、Delのキーを同時に押してタスク・マネージャを呼び出し、映像のページのタスクを終了させて下さい。そうすれば映像のページが閉じて、パソコンが再び制御可能になります。
  (追記:上のパソコンが制御不能になる現象は、最初に映像をダウンロードしたときに起こりやすいようです。さっき、あらためて映像を再生したところ、今度は制御不能になりませんでした。)
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マラーホフの贈り物Bプロ(3)

  第3部の続き。「ドン・キホーテ」よりグラン・パ・ド・ドゥ、ヤーナ・サレンコ、ズデネク・コンヴァリーナ。サレンコは朱に近い赤いチュチュ(金の刺繍入り)、コンヴァリーナは黒いボレロ、黒いタイツ姿で登場。

  最初に二人で踊るところでは、サレンコが「爪先立ちアティチュードによるバランス・キープ耐久レース」を披露しました。本当にバランスを保つ能力を持っているダンサーです。最も長かった記録は5~6秒間くらいだと思います。でも、ちょっと鼻についてきました。軸足はグラグラしてたし、どうせやるならタマラ・ロホ(英国ロイヤル・バレエ)みたいに、文字どおり微動だにしないレベルにまで達してほしいものです。

  バジル(コンヴァリーナ)のヴァリエーション。「グラン・パ・クラシック」を観て、このダンサーのどこがいいのか、と思いましたが、ヴァリエーションもそんなにすばらしいというほどではありませんでした。キトリ(サレンコ)のヴァリエーションでは、サレンコはやっぱり安定したバランス・キープと、ゆっくりした余裕ある回転を見せてくれました。

  コンヴァリーナはコーダでの舞台ジャンプ一周で根性を見せました。力強くて、ダイナミックで、そしてほとんどヤケになっていて、迫力満点でした。最後の連続回転もぐるぐるとパワフルに回っていました。サレンコは32回転で、きっとやるだろうと思いましたが、2回転どころか、3回転を織り込んで回っていました。ところが、途中でバランスを崩してしまい、立て直そうとした拍子に、思いっきり斜めに移動しました。32回転もタマラ・ロホの勝ちです。

  「ラ・ヴィータ・ヌォーヴァ」、振付はロナルド・ザコヴィッチ(ベルリン国立バレエ団プリンシパル兼振付家)で、この公演のためにマラーホフが振付を依頼した作品だそうです。もちろん世界初演。

  コンテンポラリー作品です。マラーホフは白のTシャツと白のショート・パンツの上に、濃いグレーの透ける生地のTシャツを着て、同色のズボンを穿いています。踊っている途中で床に横たわり、グレーのTシャツとズボンを脱ぎます。この脱皮は、プログラム(正確にはキャスト表の紙の裏)に書いてある、「天使のようなものが禍々しい部分から生まれる」ことを表現しているのでしょう。でも、こんな演出は不要に思われます。踊り自体で何かを表現できるダンサーに、こんな演出は余計です。

  マラーホフの動きはすごかったです。男性ダンサーであんなふうに踊れる人を見たことがありません。まるでザハーロワかギエムかアレクサンドロワみたいでした。彼が手足を動かす様は、とにかく柔らかい、しなやか、鋭い、きれい、美しい、螺旋のよう、流線のよう、連続写真のよう、どんなふうに形容すればいいのか分かりません。

  最後の最後でガツンと一発やられました。闇の中で踊るマラーホフを、緊張して見入っていました。そして、マラーホフが本当に優れたダンサーであることを実感しました。

  カーテン・コールには「威風堂々」が流れる中(確か「ルグリと輝ける仲間たち」でも流れたような・・・)、ダンサーたちが集結しました。そこでもやられました。マラーホフの笑顔に。本当に嬉しそうに、そしてとても優しい目で他のダンサーたちや観客を見るのです。これが(1)の冒頭の感想につながるわけです。ニコニコ笑って、両腕を広げて、両手を胸に当てて、投げキッスをして、人柄の良さがにじみ出ています。ダンサーとしての能力と人格が比例している最もよい例です。  

  そうそう。マリーヤ・アレクサンドロワとセルゲイ・フィーリンが二人でカーテン・コールに出てきて、それからカーテンの後ろに退場するとき、フィーリンは先に姿を消したアレクサンドロワに「手を強く引っ張られて前につんのめるフリ」をしました。また、全員が並んでのカーテン・コールのときには、アレクサンドロワがフィーリンから差し出された手に、わざとバチン!という乱暴な感じで手を置きました。

  観客からは、アレクサンドロワのほうが強くてフィーリンが弱気そうにみえる、ということを両人とも知っていて、それでふざけたんでしょうね。アレクサンドロワとフィーリンは本当に仲がいいんだな、と思いました。

  マラーホフが嬉しそうに笑っている顔が強く印象に残りました。そして、「ラ・ヴィータ・ヌォーヴァ」でのマラーホフの動き、あれは久々の衝撃的出会いでした。でも、舞台に復帰してまだそんなに月日が経っていないとのことですから、どうか無理せず、着実に治して、完全復活することを祈っています。マラーホフは本当にいいダンサーです。また機会があったら絶対に観に行きます。  
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マラーホフの贈り物Bプロ(2)

  第2部:「バレエ・インペリアル」、ポリーナ・セミオノワ、ウラジーミル・マラーホフ、奈良春夏、中島周、横内国弘、東京バレエ団。

  去年の秋、やはり東京バレエ団による「バレエ・インペリアル」を観たときには、なんてヒマくさいつまらない作品だろう、と思いました。しかし、今回の公演での「バレエ・インペリアル」は、まったく別の作品のように思えました。すごく見ごたえがあって、最後まで飽きませんでした。

  セミオノワの踊りがとてもすばらしかったです。チャイコフスキーのピアノ協奏曲をそのまま踊りにしたような、音楽性に溢れた端正で美しい動きでした。セミオノワは長身(確実に170センチはあると思う)で手足が長く、純白のチュチュがよく似合います。もちろん振付もいいのでしょうが、同じ作品でも踊れる人が踊ればこんなに見違えるものか、と感動しました。

  最もすばらしかったのは、ストーリー性がほとんど削除されたというこの作品に、「ドラマ」があったことです。マラーホフの踊りにはやはり力がなく、おっかなびっくり踊って、セミオノワをなんとか持ち上げている、といった感がありました。しかし、マラーホフ、セミオノワ、そしてマラーホフとセミオノワが踊っているのを見ていると、ロシアの宮廷で舞踏会があって、美しく誇り高いロシア皇女がいて、皇女に恋する下級貴族の青年がいて、皇女と青年は互いに心を惹かれあって・・・という具合に、勝手ですがストーリーが浮かんでくるのです。

  そういうドラマを作り上げてしまうマラーホフの演技力は大したものです。そして、セミオノワの演技もすばらしくて、能面で踊るのではなく、気高い雰囲気を保ちながらも、貴族の青年に惹かれていって、女性らしい愛らしさを表情に出すようになります。セミオノワは「牧神の午後」ではあどけない少女でしたが、この「バレエ・インペリアル」では誇り高い皇女様でした。役によって雰囲気を変えられるのはすごいことです。ちなみに、最後はハッピー・エンドらしいのでよかったです。

  おっと、ぜひとも書いておかなくてはなりません。東京バレエ団のダンサーたちもすばらしかったです。奈良春夏さんはちょびっとミスはしたけれど、堂々と華やかに踊っていました。それに、なんといっても群舞が非常に整然としていて、列も動きもよく揃っていました。第2楽章の最後(たぶん)なんか、叫びたいくらいカッコよかったです。

  第3部:「シンデレラ」(ロスチスラフ・ザハーロフ振付)、マリーヤ・アレクサンドロワ、セルゲイ・フィーリン。このザハーロフ版「シンデレラ」は、1945年にボリショイ・バレエが初演したそうです。

  ザハーロフ版はプロコフィエフの原曲を削除していないそうです。だとすると、今回踊られたのは第49曲「ゆるやかなワルツ」で、最後から2番目の曲です。プログラムには「シンデレラと王子の華やかな結婚式の場面」とありますが、アレクサンドロワは淡いブルーグレーのワンピース、髪は1本のみつあみにして垂らしていた(新鮮!)。フィーリンは白いシャツに白いタイツだったので、結婚式にしてはそぐわない衣装だと思うんだけど。

  振付は、これが1945年の作品かと思えるほど斬新でした。お約束のクラシカルな動きがほとんどなく、アレクサンドロワとフィーリンが第1部で踊った「ハムレット」そっくりな、モダンな振付でした。

  やはりアレクサンドロワの見事な動きと、フィーリンとアレクサンドロワによる息の完璧に合った踊りが印象的でした。アレクサンドロワは手足を美しく、絶妙のタイミングで旋回させ、アレクサンドロワの体をフィーリンが自然な動きで受け止めます。

  アレクサンドロワの演技にも感動しました。シンデレラは王子が自分を見つけて求愛してくれたことに感動しつつも、それでも最初は王子の愛を信じることができないようでした。自分なんかが王子に求愛されるなんて、と戸惑っているようにも見えました。王子がシンデレラを抱きしめながら踊るうちに、シンデレラもだんだんと切なそうな表情になっていきます。シンデレラの気持ちが王子に傾きつつあるのが分かります。王子が彼女の両足に口づけをすると、シンデレラは完全に王子を信じます。ふたりは床に横たわって抱き合います。

  (追記:NBSの公式サイトには、アレクサンドロワとフィーリンが踊ったのはユーリー・ポソホフ版「シンデレラ」だと書いてあります。プログラムの紹介文は、アレクサンドロワとフィーリンによる実際の踊りとは、音楽、シーン、衣装の点で重ならないので、おそらくポソホフ版であるというのが正しいと思われます。)

  「アポロ」(ジョージ・バランシン振付)、イリーナ・ドヴォロヴェンコ、マクシム・ベロツェルコフスキー。ドヴォロヴェンコもベロツェルコフスキーも白いギリシャ風の短いヒラヒラ衣装を着ていました。ベロツェルコフスキーはアポロの役だと思いますが、ドヴォロヴェンコは何の役なのか、そしてこれはどんな場面での踊りなのかが分かりませんでした。

  早くも記憶が薄れかかっているのですが、ドヴォロヴェンコが最初に一人でコミカルな踊りを踊り、次にベロツェルコフスキーが一人で踊り、最後に二人で踊ったのではないかと思います。

  ドヴォロヴェンコとベロツェルコフスキーの踊りより先に、まずバランシンの振付の多様さに感心しました。クラシックの技がほとんどない振付だったのです。同じ振付家が、一方では「バレエ・インペリアル」のようなクラシカルな作品を振り付け、また一方では「アポロ」のようなモダン作品を振り付けたのですから。

  振付は鋭くてメリハリのある、かつスピーディーな動きで構成されていました。ドヴォロヴェンコとベロツェルコフスキーの踊りは、第1部での「黒鳥のパ・ド・ドゥ」よりはるかによかったです。とてもキレがあって、またダイナミックでした。

  一昨年からいろんな公演でアメリカン・バレエ・シアターのプリンシパルたち(ジュリー・ケント、パロマ・ヘレーラ、ホセ・カレーニョ、マルセロ・ゴメス、デヴィッド・ホールバーグ)の踊りを観てきて、今回イリーナ・ドヴォロヴェンコとマクシム・ベロツェルコフスキーの踊りを観た結果、多数決で今年のアメリカン・バレエ・シアター日本公演は観ないことに決定しました。  
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マラーホフの贈り物Bプロ(1)

  昨夜(21日)の公演に行ってきました。いや~、マラーホフはいい人ですね!あんなに感じの良い、優しげで親しみやすい雰囲気のダンサーは初めて見ました。友だちになりたいほどです。

  第1部:「牧神の午後」(振付:ジェローム・ロビンス)、ウラジーミル・マラーホフ、ポリーナ・セミオノワ(ベルリン国立バレエ団プリンシパル)。

  舞台はバレエのレッスン・スタジオという設定で、客席を全面の鏡に見立てていました。上半身裸の青年(マラーホフ)が寝転がっていて、鏡(つまり客席)を見つめながらストレッチをしたり、ゆっくりと踊ります。そこへ淡いラベンダー色のワンピースを着た少女(セミオノワ)が入ってきて、同じく鏡を見つめながら踊ります。

  最初こそ鏡に映る自分の踊りだけに見入っていた彼らは、やがて鏡の中にお互いの姿を認めあいます。少女は恥ずかしがってバー・レッスンに移りますが、青年は彼女に近づき、彼らは鏡を見つめながら一緒に踊り始めます。

  青年が少女の頬にキスをすると、少女はその頬を押さえながらスタジオから去ってしまいます。青年はスタジオにひとり残されます。

  マラーホフの役を青年、と書きましたが、おそらく少年なんでしょうね。マラーホフもセミオノワも非常に表情が豊かで、最初は自分に夢中になっていたのが、やがて互いの存在に気づいて相手を異性として意識し、恋のような感情が湧いてくるものの、少女はためらって逃げてしまい、少年の恋心は性的な形で爆発する。たった20分弱の間に、静かで穏やかではあるけれど、危うい色っぽさをともなったドラマが繰り広げられます。

  最初、マラーホフは床に寝転がっていて、片脚を上に伸ばします。脚から爪先までの形がまるで弓道で使う長弓のようで、あ、この人はすごいダンサーだ、と一発で分かりました。また、腕の動きも波打つようでとても美しかったです。

  ですが、マラーホフは、たぶんまだ完全に怪我から回復していないのではないですか?両足を揃えて半爪先立ちで立つとグラつくし、セミオノワを持ち上げるときもなんだか危なっかしかったです。

  「グラン・パ・クラシック」、ヤーナ・サレンコ(ベルリン国立バレエ団プリンシパル)、ズデネク・コンヴァリーナ(ナショナル・バレエ・オブ・カナダ プリンシパル)。

  まず、サレンコがNBSの公式サイトや公演プログラムに載っている写真とは別人で、すごくかわいい、きれいな人でした。写真写りがあんまりよくないんでしょう。本当にかわいかったですよ。

  サレンコはこの「グラン・パ・クラシック」の他に、「ドン・キホーテ」のグラン・パ・ドゥを踊りました。ですからおのずと「得意科目」が分かります。長時間バランスを保つことと、安定感のあるゆっくりな回転に長けているダンサーでした。アダージョ、ヴァリエーション、コーダで見事なバランス保持力を披露しました。ただ、去年の夏に観たヴィクトリア・テリョーシキナ(マリインスキー劇場バレエ)のほうがすごかったと思います。

  コンヴァリーナは、サレンコが順調にバランスを保てるような、上手なサポートをしたのがよかったです。ただ、コーダでの踊りの一部(下半身を左右にひねりながら連続して跳ぶところ)はヘンでした。

  「ハムレット」(ボリス・エイフマン振付)、マリーヤ・アレクサンドロワ、セルゲイ・フィーリン(ともにボリショイ・バレエ団プリンシパル)。この作品の原題は「ロシアン・ハムレット」(←・・・・・・)で、エカテリーナII世とその息子であるパーヴェルI世との間の愛憎を描いており、1999年に初演されたそうです。

  アレクサンドロワ(エカテリーナII世)はゴールドのラメの入った紫(だったかな?)の長いドレス、フィーリン(パーヴェル皇太子)はグレーのビロードのシャツとズボンに、なぜか茶色の膝上まである長靴(築地市場でおっちゃんが穿いてるようなヤツ)姿。

  振付はクラシカルな動きとモダンぽい動きが混ざっていて、組体操かアクロバットみたいな動きもありました。アレクサンドロワが長いドレスの裾を翻しながら、蹴り上げるように跳躍する動きがすごかったです。アレクサンドロワはいかにも女帝らしい威厳を漂わせながら鋭い動きで踊ったかと思うと、皇太子とのちょっとアブない踊りでは、皇帝、母親、女、とめまぐるしく変わる複雑な感情を醸し出していました。彼女はすごい演技達者でもあると思いました。

  振付の良し悪しは分かりません。でもアレクサンドロワの踊りは凄まじいほどすばらしかったです。他の女性ダンサーたちとは別格でした。うまくいえませんが、技術とか以前に、動きそのものからして他の女性ダンサーたちとは違うんです。

  似たような体験はいくつかあります。たとえば、去年のボリショイ&マリインスキー・バレエ合同ガラ公演で、ウリヤーナ・ロパートキナが出てきて踊ったときとか、一昨年の「ルジマトフ&インペリアル・ロシア・バレエ」公演の「シェヘラザード」で、スヴェトラーナ・ザハーロワが出てきて踊ったときとか、去年の「シルヴィ・ギエム・オン・ステージ」で、東京バレエ団による「ステッピング・ストーンズ」のすぐ後に、ギエムとニコラ・ル・リッシュが出てきて「優しい嘘」を踊ったときとかです。

  私は古典作品を踊るアレクサンドロワしか観たことがなかったので、彼女がこうしたモダン作品で、これほど流麗な動きで踊れるとは思ってもいませんでした。この公演に参加した女性ダンサーの中では、アレクサンドロワが(ダントツで)最も優れたダンサーだろうと思います。

  フィーリンも、母親への(異性としての)愛情、父親を殺した女への憎しみ、皇帝への畏怖など、激しく交錯する感情を漂わせながら踊っていました。この人はベテランのようですが、何歳ぐらいなのでしょう?すごく若く見えました。たぶんアレクサンドロワのほうがずっと年下なのでしょうが、母親と息子として踊っても、違和感がまったくなかったです。

  「白鳥の湖」より「黒鳥のパ・ド・ドゥ」、イリーナ・ドヴォロヴェンコ、マクシム・ベロツェルコフスキー(ともにアメリカン・バレエ・シアター プリンシパル)。

  普通によかったと思います。可もなく不可もないです。ただ、テープ演奏なのでいつもと勝手が違ったのでしょうが、特にドヴォロヴェンコの踊りが音楽に合っていませんでした。本人的にはうまく合わせていたつもりのようです。踊り全体がなんだかあわただしく、辻褄を合わせるようにあわてて見得を切っても、カッコよくもなんともないのですが。

  それと、全幕上演するときには、「黒鳥のパ・ド・ドゥ」のときにはロットバルトがいて、オディールのヴァリエーションのときには王子が舞台の脇に立って見ているのかもしれません。でも、今回はガラですよ。誰もいない空間を邪悪そうな目つきで見つめてどーするんですか。今回はガラ公演であるということに機転を利かせず、いつもの調子でルーティン・ワーク的に演技するのはどうかと思います。

  更に、カーテン・コールで、ドヴォロヴェンコがオディールのキャラを保ったまま、お辞儀しているのがわざとらしくて演技過剰で、見ているほうが恥ずかしかったです。アメリカの善良な観客は、この程度のダンサーに感動して拍手喝采しているのかと思うと気の毒です。   
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ミュージカル「ゾロ」について・続き

  昨日に引き続き、クーパー君の出演するミュージカル「ゾロ」について、「ゾロ・ザ・ミュージカル」公式サイト でお勉強。“About Zorro”によると、このプロダクションの概要は以下のとおりです。

  「『ゾロ』は、近年ではイギリスやブロードウェイで『王様と私』、“We Will Rock You”を手がけたChristopher Renshawを監督とし、また国際的に有名なフラメンコ・ダンサーであるラファエル・アマルゴによる振付が見どころです。

  ヨーロッパでは映画スターとしての地位を享受しつつ、ラファエルはヨーロッパ全域に流通している一流雑誌の表紙の常連であり、更にブルース・ウェーバー、アニー・リボヴィッツ、クリストファー・マコスによって撮影されてきました。純粋なフラメンコのスタイルを忠実に守る一方、ニューヨークにあるマーサ・グラハム・スクール・オブ・コンテンポラリー・ダンスで学んだことに触発されて、ラファエルは他の種類のダンスをも吸収してきました。スペインのアーティストであるLuis GordilloやEsperanza D'Orsは、ラファエルのキャリアを支え続け、ラファエルはMax Awards(スペインで最も権威あるパフォーミング・アーツの賞)を4回、最優秀ダンサー賞を3回、年間最優秀ダンス作品賞を1回受賞しています。

  『ゾロ』は有限会社ゾロ・プロダクションと、John Gertzとアダム・ケンライトを筆頭とするaka(注:←意味不明) Productionによって製作されます。ニューヨーク・タイムズのベストセラー作家であるIsabel Allendeが、このミュージカルのクリエイティヴ・プロデューサーとして参加します。Allendeの2005年のベストセラーとなった小説『ゾロ』は、ゾロ伝説の原話に基づいたクラシカルな物語であり、このミュージカル『ゾロ』製作の契機となりました。彼女の作品群は30ヶ国語に翻訳され、5200万部以上の販売数を誇っています。1942年にチリで生まれたイザベルは、チリとベネズエラでジャーナリストや司会者として活動を開始しました。

  1919年に通俗小説家のジョンストン・マッカレーによって生み出された、偶像的人物のゾロは、映画、舞台、テレビ・アニメ、本、マンガ化され、そしてなんと、まもなく任天堂Wiiのゲームとして(注:←ぶっ)もリリースされることになっています。ゾロはドン・ディエゴ・デ・ラ・ヴェガ、スペインのカリフォルニア(注:←???)で暮らしている、金持ちの騎士であり剣の達人でもあるという架空の人物が正体であり、彼は土地の人々を不正義から守っているのです。

  この新作のミュージカルは、ロマンティックなヒーローのドラマティックな物語を、優れた空中アクロバット、迫真の殺陣、驚くべきマジックによって作り直し、伝統的なフラメンコの本物のきらめきとともにイギリスの舞台に持ち込まれる、情熱に燃える有名なジプシー・キングスのビートを迎えます。」

  つまり、ミュージカル「ゾロ」のあらすじを知りたければ、イザベル・アレンデの小説「ゾロ」を読むか、任天堂Wiiのゲーム・ソフトを買えばいいわけですね。それにしても、Wiiはイギリスでも売れ行きがいいんでしょうね。技術大国日本が健在で嬉しいことです。Wiiのゾロのゲームって、悪徳代官をやっつけてお宝を盗み、貧しい人々に分け与えて、最後にヒロインと結ばれてクリアなのかな。

  けっこうお金かかってるみたいだし、ストーリー重視というよりは見た目重視みたいだし、観るぶんには楽しそうです。旅行ガイドブックによくある言い方をすれば、「英語が母語ではない人向け」のミュージカルなんでしょう。

  アダム・クーパー演ずる騎士ラモンの存在度と踊る割合はどのくらいなのでしょうか。「迫真の剣での闘い」は、クーパー君がやったら鉄壁カッコいいだろうけど(「危険な関係」で実証済み)、「優れた空中アクロバット」はあんまりやってほしくないなあ(でもこれは役柄的にゾロがやるんでしょうね)。

  てか、もうフラメンコでもなんでもいいから、とにかく踊って下さい
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ミュージカル「ゾロ」について

  来月から、クーパー君の出演するミュージカル「ゾロ」のツアーがイギリスで始まります。内容がアホらしい(たぶん)のと、音楽がジプシー・キングスだから、なんか今ひとつ興味が湧かなかったんですが、クーパー君が出るので、公式サイト でちょっとお勉強しようと思います。

  まずは公式サイトに掲載されている紹介文。

  「アクションとアドヴェンチャー満載の、数百万ポンドをかけたこのミュージカルが、マスクをかぶったスペインのヒーロー、元祖正義の騎士の伝説をスリリングによみがえらせる!

  スペインの輝かしきラファエル・アマルゴによる躍動感溢れる振付によって、『ゾロ』は最も正統的なスペインのフラメンコを繰り広げます。みなさんはイギリスの舞台でそれを目にすることになるでしょう!

  多くの賞を受賞した製作チームの団結の下、『ゾロ』はイギリスを代表する3人のミュージカル・スター、マット・レーウィ、アダム・クーパー、エイミー・アトキンソンを結集させました!

  『ゾロ』の原作の物語にたちこめる情熱、ドラマ、そしてロマンスが、ジプシー・キングスによる、弾けるようなラテン・アメリカのリズムと結合します!『ゾロ』は熱気に満ち溢れる、心波打つ冒険活劇たるミュージカル・エンタテイメントの夕べとなることをお約束します!」

  (注:私のいつものクセで、上の訳文はいささかおちゃらけてます。)

  クーパー君は騎士ラモンの役です。ポスターではお得意のオール・ブラックの衣装でキメていますが、クーパー君もあのジプシー・キングスの音楽に乗って、「本場モノのフラメンコ」とやらを踊るのでしょうか・・・。いや、そりゃ一応は踊れるだろうけどさー。ダンサーだから。

  素朴な疑問。クーパー君はいつから「イギリスを代表するミュージカル・スター」になったのでしょう。
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ロイヤル・バレエ日本公演

  コヴェント・ガーデンのロイヤル・バレエも今夏に日本公演を行なうんですね。すっかり忘れてました。チケットの一般発売は2月2日から始まりましたが、私はこっちも先行予約で、一般発売前にすでにチケットを取っていたのです。

  演目はフレデリック・アシュトン振付「シルヴィア」とモニカ・メイスン(現芸術監督)版「眠れる森の美女」です。こちらの招聘元は老舗のNBSで、公演日程は週末中心に配置してあってさすがです。公演の詳細については、NBS公式サイトの こちらのページ をどうぞ。

  数年前のロイヤル・バレエ日本公演と比べると、今回はあまり目玉がないというか、話題性に欠けるというか、ぴあとかのチケット残席状況を見てみましたけど、やはりお席にまだまだゆとりがあるようです。

  演目は今シーズンにコヴェント・ガーデンで上演しているのをそのまま持ってくるだけだし、そのアシュトン版「シルヴィア」もメイスン版「眠れる森の美女」も、日本ではまだそれほど知られているわけではないでしょう。

  また、来日メンバーの顔ぶれを見ると、前回でのシルヴィ・ギエム、ダーシー・バッセル、吉田都、ジョナサン・コープ、アンソニー・ダウエル、ウェイン・スリープに匹敵する集客力を持つスターがいないというのが、最も弱いところだと思われます。

  アリーナ・コジョカル、タマラ・ロホ、フェデリコ・ボネッリ、ヨハン・コボーは参加する予定ですが、彼らを日本で観られる機会は他にもあるでしょうから、今回は一切アウトオブ眼中(←死語)でした。

  「シルヴィア」については、迷うことなくゼナイダ・ヤノウスキーとデヴィッド・マッカテリ主演の日に決めました。ヤノウスキーは絶対に外せないと思うし、マッカテリは賛否両論があるダンサーですが、私は人畜無害で無個性なダンサーよりは、多少アラがあっても個性的なダンサーが好きですから。

  「眠れる森の美女」は、作品そのものが好きではないので迷いました。で、こちらは日程で決めました。マリアネラ・ヌニェスとティアゴ・ソアレスが主演する日です。ブルー・バードのパ・ド・ドゥを、佐々木陽平とローレン・カスバートソンが踊るというのも興味を引きました。

  本当は、サラ・ラムが主演する公演も観たかったのです。ずいぶん前にサラ・ラムを見て、この子はいいなあ、と目を付けていました。彼女の成長ぶりを見たかったのですが、彼女は「シルヴィア」と「眠れる森の美女」の両方に主演するものの、どちらも昼公演なのです。しかも開演は午後1:00。午後1:00なんて、私のエンジンがかかりません。それであきらめました。

  シルヴィ・ギエムばかりを偏重したキャスティングだった前回の日本公演に比べれば、今回の日本公演は、現在の英国ロイヤル・バレエのダンサーたちを、日本での人気度に関わらず総動員するという感じで、逆に面白い公演になるんではないか、と思っています。

  話は変わりますが、14日に限って、このブログの閲覧数が異常に多かったのですが、何かあったのですか?クーパー君関連で何か重大事件が起こったとか?心当たりがまったくないので、ご存知の方はぜひお知らせ下さい。 
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ボリショイ・バレエ日本公演

  年末のチケットをもう売り出すとは気の早いこと、と思いながら、「ジャパン・アーツぴあメール会員」向けの先行予約で買いました。でも、公演日程を見てびっくり。

  「ドン・キホーテ」が12月3日(水) 、12月4日(木)、12月11日(木) 、「白鳥の湖」が12月5日(金)、12月6日(土)、12月7日(日)、「明るい小川」が12月9日(火) 、12月10日(水)と、週の中日の公演がほとんどです(公演の詳細は 公式ブログ をどうぞ)。

  なので、キャストで観る日を決めたというよりは、観に行けないであろう日を消去法で除いていって、残った日の公演のチケットを買う、という選択をせざるを得ませんでした。

  結果、「ドン・キホーテ」は消去法とキャストと半々で選んで、ナターリヤ・オーシポワとイワン・ワシーリエフが主演する日、「白鳥の湖」は週末公演なので、完全にキャストで選んでマリヤ・アレクサンドロワとセルゲイ・フィーリンが主演する日、「明るい小川」は完全消去法で12月9日(火)の公演を観に行くことにしました。

  登録すればいいだけで会費のかからない「メール会員」の先行予約には、正直あんまり期待していなかったのですが、私にとっては決してわるくはないお席が買えました。購入を確定する前に席番を表示してくれるのはありがたいです。

  それでも、年末の予定なんて今から分かるワケないから、買っても観に行けない可能性はあるわけですが・・・。

  オシポワとワシリーエフ主演の「ドン・キホーテ」は、ボリショイ・バレエがいつだったかロンドン公演をしたときに、大きな話題になったと聞いたような覚えがあるので、それで選びました。「白鳥の湖」は、アレクサンドロワとフィーリンが観たいから選びました。「明るい小川」はどんな作品か分かればいいので、特にキャストにはこだわりません。

  ニコライ・ツィスカリーゼは来ないみたいですね。デニス・マトヴィエンコも参加しないようです。ちょっと残念です。

  残る問題は、「ドン・キホーテ」のエスパーダ、「白鳥の湖」のロットバルトを誰が踊るのか、ということです。できればエスパーダとロットバルトは、どっちか一つでいいからアルテム・シュピレフスキーの日に当たればいいなあ。

  また、「ドン・キホーテ」のジプシーの踊りを誰が担当するのかも気になります。Yulianna Malkhasyantsという、ロンドン公演で観たあの強烈なおばさん(すみません)が出てくれないものでしょうか。このおばさん(再度すみません)の「ジプシーの踊り」は、とにかく濃くて強烈で凄かったので。
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セカンド・オピニオン

  母親が白内障の手術をするというので帰省していました。日帰り手術だということでしたが、感染を防ぐために術後しばらくは眼帯をしていなければならないそうなので、家事手伝い(&雪かき)に赴いたのです。それに、入院不要の手術といえど、手術は手術、身内が傍にいるほうがいいだろうと思いましたし、友人からもそう言われました。

  ところが、実家に着いてみたら、母親が相談してきました。母親の知人に、福祉施設でケア・マネージャーをしている人がいて、母がその人に白内障の手術をする予定であることを話したそうです。その人は母親が手術を受ける病院名を聞いたとたん、別の病院にすごく腕のいい眼科医がいるから、手術を受ける前に、その医者にも診察してもらったらどうか、と熱心に勧めてきたそうです。

  白内障は一般に年輩の人がかかりやすい病気です。ケア・マネージャーという職業柄、その人は年輩の人がかかりやすい病気に関して、どこの病院のどの医者がいい、といった情報に詳しいはずです。もちろん、どの病院のどの医者がよくない、といった情報にもです。その人ははっきりした理由は言わなかったそうですが、あまりに何度も何度も勧めるので、母親はその腕のいい眼科医の診察を受けてみようかと思っている、と私に言いました。

  母親もその腕のいい眼科医のことを知っていたのですが、予約待ちでなかなか診察を受けられないと聞き、それで別の病院に行って診察してもらったら、なるべく早く手術したほうがいい、と医者から言われて、なかば一方的に、急かされるように手術日を決められたということでした。

  手術となると当然、費用がどのくらいかかるかが気になるところです。でも、なぜかその病院は、なかなか具体的な手術費を教えてくれなかったそうです。母親がちょうどその病院に不審の念を抱き始めていたところに、ケア・マネージャーさんから、予約待ちの行列ができているという別の病院の医者の診察を受けるように勧められて、母親は気持ちが傾いているようでした。

  私も、セカンド・オピニオンとして別の医師の診察を受けるのはよいことだと言いました。それに、そのケア・マネージャーの人は、明言はしなかったけれども、母親が手術を受けようとしている病院やそこの医者についてのよくない噂や、その病院で起こったトラブルなどを具体的に知っているに違いない、と思いました。

  私が帰省した2日後の早朝、母親はケア・マネージャーさんから勧められた医者のいる病院に行きました。午後を過ぎてようやく帰ってきましたが、母親の顔は晴れ晴れとしていました。母親によると、母親の白内障はまだ手術が必要な状態には至っておらず、半年後にまた検診を受けに来ればよい、とその腕のいいという医者から言われたそうです。

  こうして、母親が最初にかかった医者の診察結果と、ケア・マネージャーさんから勧められた医者の診察結果は、まったく正反対のものとなりました。母親は結局、セカンド・オピニオンのほうを信用し、もやもやした不信感を抱いた病院で手術を受けることはやめることにしました。母親は手術を受けるはずだった病院に電話をかけて断りました。

  別の医者にかかったことは言わず、いろんな用事で忙しいから、という理由で断っていました。後で聞いたら、母親が手術をキャンセルする、と言ったとたん、先方はしつこく理由を問いただしてきて、いま手術しなければ後で大変なことになる、と言ったそうです。それがまるで脅しのような言い方だったそうで、母親はますます不信感が募ったみたいです。

  私は医者ではないので、どちらが正しいのかは分かりません。しかし、患者の恐怖心を煽るようなことを言う、患者を急かしてやたらと手術をしたがる、手術にかかる費用を事前にはっきりと説明しないなど、これらの点だけをとってみても、母親が最初にかかったその病院はヤバいんではないかと思います。母親には、後にかかった医者に言われたとおり、目の定期検診を欠かさないように言いました。

  慎重な言い回しながら、しかし断固として、母親に別の(しかも優れた)医者のセカンド・オピニオンを求めるよう助言してくれたケア・マネージャーさんに感謝です。

  頭でしか知らなかったセカンド・オピニオンの重要性を体感した出来事でした。  
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