1回戦 対 ヴィクトル・ハネスク(ルーマニア)
6-3、6-2、6-0
まず、主審のコールからしてバリバリなイギリス英語。観客席にも見るからにアッパーな方々が多数ご来臨。成金セレブとかじゃなくて、いわゆる「アッパー・クラス」のみなさまね。服装、髪型、表情、姿勢、仕草、あと女性の場合はメイクやアクセサリーとかで分かる。
ウィリアム王子とキャサリン妃もいたような?(←ごめん。人違いでした。キャサリン妃の弟さんと妹さんだって。) コンドリーザ・ライス元アメリカ国務長官もいました。
他にも有名人、いとやんごとなき方々が多数いらしたようなので、ちゃんとテロップで紹介してくれんかね。
この試合がセンター・コートで行われた大会最初の試合だったそうです。前年度の優勝者がやることになってるんだって。だからフェデラー、ツイッターに「大会初日にセンター・コートで第一試合をやるのは、いつも名誉なこと」と言ってたのか。
フェデラーのツイッターは現在、およそ1~2日に1万人の割合でフォロワーが増加中です。今は41万人を突破しました。いずれ孫正義と有吉弘行越えを果たしてほしいものです。
当然のことに、コートの芝がまだハゲてなくて、とてもきれいでした。大会日程が進むと、特にベース・ラインのところがハゲてくるんだよね。決勝のころには、ベース・ラインのあたりはペンペン草も生えんつるっパゲの不毛地帯と化します。
いつもスポーツのルールを教えてもらっている先輩がいるのですが、その先輩は、最近のテニスはベース・ラインからの打ち合いが主体になっているから、ウィンブルドンの芝のコートもベース・ライン周辺の芝ばかりが剥げて、ネット前はほとんど芝が剥げてない、と嘆いていました。
ヴィクトル・ハネスクはビッグ・サーブが武器らしいです。エースをいくつか取っていました。ネット・プレーもそこそこやります。でも、フェデラーはハネスクの凄まじいサーブを凄まじい強打で返してインになっていましたし、ネット・プレーでも一枚も二枚も上手でした。
フェデラーのサーブ、そんなに速くはないらしいのですが、どうして返せない選手が多いのでしょうか?ハネスクもほとんど返すことができませんでした。ハネスクは身長が…(ATP公式サイトを調べてる)…198センチ!?こんなに背が高いのにどうして返せないのか?
ものすごく高くバウンドするサーブと、あとなんと形容したらいいのか、バウンドしてから、するる~っ、と速く抜けるようなサーブがあります。バウンドしてからいきなりスピードが速くなる感じです。
今日のフェデラーは「無理せず流します」的なところがなく、最後まで攻撃の手を緩めませんでした。サーブではいくつエースを取ったのだろう。フォア・ハンドとバック・ハンドのリターンはコートのすみっこにバシバシ決まるわ、ハネスクの強い球威のボレーやパッシング・ショットをネット際で打ち返すわ、ハネスクをコートから追い出してドロップ・ショットをネット際ぎりぎりに落とすわ、観ていてとても楽しかったです。
あと、フェデラーは奇妙なボレー(?)をしました。ハネスクが打ったパッシング・ショットが、ネット際にいたフェデラーの手元あたりに飛んで来ました。そのボールを、フェデラーはなんか肘から下だけをちょちょい、という感じで動かしてボレーで返しました。(You Tubeウィンブルドン選手権公式チャンネルの「本日のボレー」に選ばれていました。やはりよく見えませんが、最初はバック・ハンドで返そうとしたのを、いきなりフォア・ハンドに変えて打ち返したようです。)
フェデラーはウェアの下に白いインナーシャツを着込んでいました。ロンドンって、夏といわれる時季でもすごく寒いときがあるからね。また、試合の序盤でふと空を見上げると、一瞬ですが心配そうな表情をしました。カメラもフェデラーのこの表情に気づいたようで、すぐに上空を映しました。すると、濃い灰色のぶ厚そうな雲が空を一面に覆っていました。フェデラーは雨が降ることを心配したようです。
と、るんるん気分でいたら、事態は急転直下、気分は一気に奈落の底へ(笑)。そう、「世界的大事件」とまで報じられたショッキングなことが起こりました。
2回戦 対 セルギイ・スタコフスキー(ウクライナ)
7-6(5), 6-7(5), 5-7, 6-7(5)
私はこの試合をリアルタイムで観なかったんです。試合は現地時間26日の午後に予定されていました。ただ、センター・コートでの第3試合でした。現地時間午後1時からヴィクトーリア・アザレンカの試合、次がジョー・ウィルフリード・ツォンガの試合、最後がフェデラーの試合です。
フェデラーの試合は、現地時間午後4時30分(日本時間27日午前12時30分)から開始予定、となっていたと思います。しかし、試合開始時間は押すのが当たり前です。アザレンカの試合は1時間で終わるかもしれませんが、問題はツォンガの試合。
ツォンガの相手はエルネスツ・グルビスです。ツォンガとグルビスが戦って2時間半で終わるとは思えない。おまけに雨が降って、試合がいったん中止になったりしたら、フェデラーの試合は何時に始まるのかまったく予想がつきません。
仕方ない、どーせフェデラーが勝つだろうからもう寝よう、と寝ることにしました。それでも未練たらしく、寝る寸前の午前12時過ぎにセンター・コートの試合の進捗状況を見たら、ほーら、まだツォンガ対グルビスの第1セット(ツォンガが5-3でリード)じゃん。こりゃ、フェデラーの試合開始はいつになるか分かんねえわ、寝よ寝よ、と寝ちゃいました。
翌朝。試合結果を見て愕然、茫然自失。ええっ!?フェデラーが負けただぁ!?だってまだ2回戦よ?ウソでしょ?これって夢だよね?私、本当はまだ寝てて、起きてないんだよね?と、人生初めて自分の頬をつねるということをしちゃいました。
ところが、驚愕したのはフェデラーの試合結果だけではなかった。アザレンカが試合前に棄権して、代わりにアナ・イヴァノヴィッチの試合が急遽センター・コートで行われ、あとはなんとツォンガも棄権したという。だって、ツォンガ、第1セットはリードしてたじゃん。じゃあ、あの後に途中棄権したってことか。
アザレンカが棄権したのは分かる。アザレンカが転倒した瞬間を見てたけど、踏ん張ろうとした足が滑って、両脚がスプリットする感じで地面に尻もちをついてしまってました。アザレンカは「キャー!」とものすごい悲鳴をあげました。膝を痛めたということですが、滑って反射的に踏ん張ろうとした瞬間に、膝に重い負荷がかかって痛めちゃったんでしょう。あれは見てるほうも痛くなりました。
ツォンガが棄権した理由もやはり膝だそうですね。今年のウィンブルドンの芝は滑りやすいという説があります。アザレンカやマリア・シャラポワははっきりそう言ってたそうです。NHKの実況中継は、コートの管理がずさんらしいという話を伝えていました。たとえば、刈り取った芝(芝を一定の長さに揃えるために先端を刈り取る)を回収せず、そのままコートに置きっぱなしだったとか。
いくらウィンブルドン選手権とはいえ、選手生命に影響する重い怪我をするかもしれない危険を冒してまで、一生懸命にプレーして勝ちたくなんかないよなあ。棄権を選んだ選手たちは正しい。ウィンブルドン選手権公式サイトにコメントを寄せた古参ファンもこう書いてます。
"The problem is with the courts. I've been watching Wimbledon for 40 years and never seen this many players get injured and repeatedly slip on the apparently slick surface. Either they have regulated shoes that are inadequate for proper movement, or there is something unusual about the ground maintenance this year. If I was a professional, I'd likely withdraw from this year's event before tearing an ACL. When the Chief Executive of the All England Club, notoriously silent about all issues, releases an official statement about the condition of the grounds and player withdrawals, you KNOW there is a problem. But, typically Wimbledon, they'll never admit it." (*tearing an ACL:前十字靭帯〔←膝にある〕の断裂。)
芝は生き物だから、その年によって生育状況が異なるのは仕方のないことだと思います。だから、人間の力でコントロールできない自然の結果として、滑りやすい芝になってしまったのなら、それは主催者側のせいとはいえない。しかし、人工の庭造りを得意とするイギリス人らしい言い分というか、「芝の状態は例年どおりである」とか頑固に言い張るもんだから、選手やファンの間に不信感と疑心暗鬼を生じさせてしまったんだよねえ。
素人意見だけど、本当に芝が滑りやすかったとすれば、それは多分にコートの管理がいいかげんなせいだったのでは?おそらく人的コストの問題で、例年よりもコートの管理や整備に手抜かりが多かったんじゃないかなあ。つまり、芝の生育状況の問題ではなく、刈り取った芝をコートにそのまま放置する類の人為的なミスのせい。
滑って転倒して膝や肩を痛めた選手たち、また転倒には至らなかったものの、深刻な怪我や故障につながる危険のある、膝に重い負担のかかるプレーを強いられて棄権を余儀なくされた選手たちが続出した後、主催者側があわててコートの管理と整備を厳しくした可能性は充分にあります。
そう考えると、試合中に転倒する選手たち、試合中の転倒による怪我が原因で棄権した選手たちが続出した大会3日目の6月26日を境に、こうした現象がいきなり止んだこと、また選手間で芝の滑りやすさについて意見が分かれていることが納得できます。
来年からは、ウィンブルドンの会場の全コートに、オンラインでいつでも閲覧できる、24時間ライブカメラを設置するといいと思うよ。事故後の福島第一原発みたいに。そしたら、主催者側によるコートの管理実態が分かりますから。
「世界を揺るがした1日間」、フェデラーの2回戦敗退については、試合の録画を観てからまた後日ね。フェデラーが負けたと分かってる試合を観るのはクソ面白くもなんともねえけど、でも観なくてはね。でないと試合について何も言えん。
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準々決勝 対ミーシャ・ズヴェレフ(ドイツ)
6-0、6-0
3回戦かと思ったら、ATP250の大会って、2回戦の次がすぐ準々決勝なんですね。
日本時間14日夜7時10分くらいから試合開始で、終わったのが7時50分前だったので、試合時間は40分弱だと思います(ニュースによれば39分だって)。
フェデラーは初戦より調子がずっと良く、今日はファースト・サーブもどんどん入るし、セカンド・サーブでもエースを取ったほどでした。スピードはそんなにないのですが(時速200キロ前後)、異様に高く跳ね返るために打ち返しにくいみたいです。身長が190センチもあるというズヴェレフでもボールに届きませんでした。
ズヴェレフは盛んにネットに出るタイプの選手で、フェデラーもネット・プレーを得意とする選手ですから、両者ともにネット・プレーを繰り広げる私好みの試合になりました。
フェデラーは今日はミスもほとんどなく、完全にフェデラーのペースで試合が進みました。フェデラーは終始一貫して非常に攻撃的で、ズヴェレフはフェデラーに振り回されていた感じでした。今日はフェデラーの多彩なネット・プレーを多く見ることができました。あの後ろ向きにジャンプしてのボレーは超カッコいいね。
ズヴェレフは高い身長、左利き、ネット・プレーの技術など、身体条件と能力に恵まれているのに、自分の持ってるそれらの長所を今ひとつ生かしきれていない印象でした。バック・ハンド(両手打ち)でのミスも多かったです。
好調なフェデラーとは反対に、ズヴェレフは今日かなり調子が悪かったようです。凡ミスが非常に多く、ボールを追うのをあっさりとあきらめてしまいます。サーブの入りも良くなく、肝心なところでダブル・フォールトを連続でやっちゃったりしてました。
怪我をしているのか、病気だったのか、それとも試合を投げてしまったのか、理由は分かりません。ズヴェレフは休憩時間、疲れた表情で肩を上下させて息をしていましたから、体調不良とかだったのかも。でも、誤解なら申し訳ないのですが、なんかズヴェレフは無気力な感じがしました。特に第2セットの終盤。
試合終了後、コートを去るズヴェレフに対して、観客からブーイングが浴びせられました。観客はみなお金を払ってチケットを買って、わざわざ時間を割いて観に来たのですから、ズヴェレフのあの凡ミスだらけのプレーと無気力な態度では、怒るのも無理はないと思います。
6-0、6-0なんて、男子の試合ではめったにない稀なスコアです。でも、フェデラーは力で相手をねじ伏せるような、高圧的なえげつないプレーをしたわけではありません。好調だったフェデラーに、不調だったズヴェレフが当たってしまったということじゃないでしょうか。
現に、フェデラーは勝ってもあまり嬉しそうではありませんでした。勝った瞬間に手を上げもしませんでした。口角をほんのちょっと持ち上げて、いかにもお愛想で観客にほほえんでみせましたが、目が笑ってなかったです。すぐに踵を返してさっさと帰り支度を始めました。
こぼれ話その1。フェデラーの打ったボールがネットにちょっと引っかかってから、ネットを越えてズヴェレフ側のコートに入りました。一応コード・ボールなんでしょうが、ネットのすぐ裏にぽとりと落ちたんじゃなく、ぐんと伸びて横のライン後方ぎりぎりに落ちました。あれはネットに引っかからなくても、ほぼ同じところに落ちただろうと思います。
でも、フェデラーは自分の打ったボールがネットに一旦かかった瞬間、"Sorry!"とズヴェレフに謝りました。いつだったか、最近の他の試合でも、フェデラーがサーブをしようとしてボールを上げたのに、いきなり動きを止めたことがありました。そのときも相手選手に"Sorry!"と謝っていました。
こぼれ話その2。フェデラーは自分のサービス・ゲームを1分以内に終えることが多いです。これをふざけて「フェデラー・エクスプレス(Federer Express)」と呼ぶようです。航空輸送会社のフェデックス(Fedex)とかけた冗談なのでしょう。今日は試合自体が40分弱で終わったので、実況中継は試合が終わった瞬間に"Federer Express!"と言っていました。
準決勝 対トミー・ハース(ドイツ)
3-6、6-3、6-4
夜まで所用があり、生で観戦できませんでした。10時過ぎに帰宅したら、ちょうど第3セット第10ゲーム、フェデラーが5-4でリードしており、フェデラーのサービス・ゲームでした。フェデラーが30-0と先行していました。
とても見ごたえのある試合だったそうなので、生で観られなかったことが悔やまれます。結果を知ってから録画を観ると、「だから勝ったんだ」とか「だから負けたんだ」とか、どうしても予定調和的な目で眺めてしまうし、ドキドキ感もないしね。でも録画、ちゃんと観るけどね(笑)。
というわけで録画を観ました。第1セット、フェデラーは確かにミスが多いですね。フォア・ハンドがアウトになることが多いです。が、不調というわけではないような?ハースのパワーに押されている感じです。ただし、中盤以降はハースのほうが調子が崩れてきたようです。ミスが多いし、サーブも入りません。それでも、第9ゲームでフェデラーにブレーク・ポイントを2つ握られてからのハースのプレーはすばらしく、このゲームを守って第1セットを取りました。
第2セットに入ると、フェデラーのプレーが俄然攻撃的になりました。サーブがバンバン入り、フット・ワークと動きも軽やかになって、鋭いリターンや緩いドロップ・ショットで攻めていきます。フォア・ハンドでのミスも減りました。今度はフェデラーが主導権を握り、ハースの最初のサービス・ゲームをブレークしました。
一方、ハースはサーブが入らなくなり、ダブル・フォールトが多くなりました。ショットのミスも増えていきます。しかし、5-2でフェデラーにブレーク・ポイントを2つも握られたとき、ベテランならではのしぶとさをここでも発揮、パワフルなリターンでフェデラーを押しまくり、自分のサービス・ゲームを守りました。でもフェデラーは次の自分のサービス・ゲームを隙のない鉄壁さで守り、第2セットを取り返しました。
第3セット、序盤のハースはやはり調子が良くなく、ダブル・フォールトでフェデラーにサービス・ゲームをブレークさせてしまいました。フェデラーは落ち着いています。自分のサービス・ゲームでハースにリードされると、あの速くて異様に跳ね返るサーブが爆裂します。フェデラーは順調に自分のサービス・ゲームを守っていきます。
第3セット中盤以降のハースはピンチになると強かったです。その次のハースのサービス・ゲームで、ハースはまたフェデラーにブレーク・ポイントを2つ握られました。でも、やっぱりすごいサーブと積極的なプレーで挽回して守りぬきました。
その後、フェデラーがリードしての4-2だったかで、ハースのサービス・ゲームになりました。このゲームは絶対にブレークされてはいけません。こういう大事なゲームを守りきるのがプロです。ハースはさすがです。40-0で守りました。
フェデラーのサービス・ゲームは盤石で、ハースはつけ入る余地がないようでした。大事な局面になると、例によってフェデラーは異常な強さを発揮します。すごいサーブと攻撃的なプレーで守るのです。
フェデラーが5-4でリードしての第10ゲームも同様で、フェデラーは鋭いサーブとネット・プレーで一気に勝負を決めました。
今回の主審もあのマルチリンガル慧眼審判でした。フェデラーはこの審判のことを信頼してるよな。この審判の判定には素直に従うもん。
ハースは、今回はいったい何回ウェアを着替えたんでしょうか?3色以上は確実にあったぞ。暑がりの汗っかきなのか?一方のフェデラーは2枚重ねのようで、白いウェアの下に黒いアンダーシャツを着ていました。
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注1:以下の記事には、ロジャー・フェデラーに対する悪口雑言が含まれています。フェデラーの悪口を読むのが我慢ならないというファンのみなさまは、どうか閲覧をお控え下さい。
注2:念のために申し添えておきます。私は本来、バレエとかミュージカルとかを観るのが好きなんですが、熱狂的に応援している大好きなダンサーに対しても、彼が良くないパフォーマンスをしたと感じたら、そのとおりに書いてしまう性分です。そのダンサー本人に面と向かって批判を口にしたこともあります。ファンだからといって、なんでもかんでも褒めまくることは性格的にどうしてもできません。なにとぞお許し下さいませ。
準々決勝 対ジョー・ウィルフリード・ツォンガ(フランス)
5-7、3-6、3-6
今回ばかりは怒ってます。フェデラーに。
よくもあんなひどい試合を見せてくれたな。死に物狂いで戦ったのに、準々決勝までたどりつけなかった他の選手たちに失礼だと思わないの?
同じひどい試合でも、マドリッド・オープンでの対錦織圭戦のほうがまだマシだったよ。
ツォンガは確かに強かったです。速くて高く弾むファースト・サーブがほぼ完璧に入り、リターンもパワフル、しかもコントロールがよく効いていて鋭く、ネット・プレーもフェデラー以上にすばらしかったです。精神的にもずっと安定しており、最後まで自信と集中力とを保ち続けていました。
でも、フェデラーは絶対に勝てないわけじゃなかったと思います。実際にツォンガのサービス・ゲームを2度もブレークしたわけですからね。他にも、ツォンガが崩れかけた隙は何度もありましたから、勝てるチャンスは充分にあったはずです。
ところが、ファースト・サーブは入らないわ、セカンド・サーブも入らないでダブル・フォールトを犯すわ、サーブが入ってもスピードはないし弾みもしないわ(そこをツォンガに叩かれた)、凡ミス(←いつものフェデラーなら絶対にミスしない簡単なショットを打ち損じる、アウトになる)を量産するわ、きちんとショットの組み立てをせずにやみくもに打ち返すわ、精神的に崩れて苛立ちを露わにするわ、敗因はズバリ自滅です。
パワーでは自分よりも勝る相手と同じ土俵の上で勝負してどうすんの。フェデラーはツォンガのプレー・スタイルに巻き込まれて、同化してしまいました。唸りながら力任せに打つだけのプレーなど、およそフェデラーらしくありません。「エンドレス絶叫強打ラリー合戦」は他の選手たちに任せておけばよいのに。
今日はフェデラーらしい高度な技術のプレーがほとんど見られず、戦略や組み立ても感じられませんでした。対ジル・シモン戦では、試合を観ながらしょっちゅう思わず拍手してたけど、今日はまったく拍手しなかったです。
観客のせいにもできないですよ。全仏オープンの観客は、確かに会場が一丸となって選手たちに容赦ない野次やブーイングを飛ばし、時に試合結果を左右してしまうほどですが、今回は別に自国のツォンガばかりを応援してたわけではありません。
もう復帰後1週目や2週目ではないんです。同じ負けるにしても、最善を尽くしてほしかった。
……と、怒りを思いっきり吐き出したところで、冷静になりましょう。
フェデラー、やっぱり4回戦の対ジル・シモン戦で転倒したとき、足首を痛めたね。フェデラーの公式サイトに掲載された、対シモン戦についての最初の記事には足首の件が書かれていたのに、改訂された記事では足首に関する記述が全部削除されていたので、おかしいと思いました。
最初の記事には、対シモン戦直後のフェデラーのコメントが載っていました。「足首については、明日の状態を見てスタッフたちと話し合う」という内容でした。ファンのコメントも、フェデラーは足首を痛めたのではないかという内容が多かったです。ところが、最初の記事に引用されていた、足首についてのフェデラー自身のコメントはすぐに削除されました。
翌日になってフェデラーが自分のツイッター上で「今日は無理をしないよ。軽く打って、それからストレッチするだけ」とつぶやきました。このツイートが、ファンの間で話題になったのかもしれません。数時間後、ファンのツイートに対し、フェデラーは「足首の状態は良いよ。ただの心配に終わってよかった。明日の試合(対ツォンガ戦)が楽しみだよ」と返信しました。
でも、今日の対ツォンガ戦での、フェデラーのあの異様に精彩のないプレーは、ただ単にフェデラーの精神面や調子の問題だけじゃなかったことはバレバレです。足に力を入れることができなかったんでしょう。
それが特にサーブの入りの異常な悪さ、スピードと威力のなさ、ほとんど弾まない、といったことに表れていたのだと思います。足首への不安が、集中力の欠如、苛立ち、そして大量の凡ミスにつながったというのが本当のところでしょうね。
これは負け惜しみじゃなくて(まあ多少はそうなんだけど)、フェデラーの今日のプレーのひどさは、「ツォンガがとても強かったから」だけではマジで説明がつかないレベルだったのよ。
フェデラーは出場した以上は途中棄権しない主義で、しかも自身の故障や怪我については徹底して隠しとおします。今回の敗戦も怪我のせいだとは絶対に言わないでしょうし、足首の怪我がどの程度なのかについても、今後も言及することはないと思われます。
全仏オープンが終われば、すぐに芝の大会が始まります。あまり時間がありませんが、治療に専念してほしいと思います。怪我の状態が軽いものであるよう、またウィンブルドン選手権までにはなんとか完治してくれるように祈るばかりです。
とりあえず、全仏オープンベスト8進出、おめでとう。
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4回戦 対ジル・シモン(フランス)
6-1、4-6、2-6、6-2、6-3
いや~、面白かった!寝不足になっても観る価値のある試合でした♪
フェデラーが第1セットを6-1であっさり取りました。フェデラーのプレーは好調で、シモンを圧倒していたので、このままストレートで勝つかな、と思いました。ところが、第2セットでアクシデント発生。
フェデラーのサービス・ゲームで、シモンのリターンに追いつこうとしたフェデラーが足を取られ、前に膝をつく形で転んでしまいました。そのとき、両足首が互い違いにおかしな方向に曲がりました。フェデラーは顔を痛そうにややしかめながら、慎重にゆっくりと立ち上がりました。その直後のサーブで、フェデラーはダブル・フォールトを犯してしまいました。
足首が気になって、フェデラーは不安に陥ったようでした。その後のサービス・ゲームをシモンにブレークされ、そのままシモンが第2セットを取りました。
第3セットに入ると、フェデラーのプレーはどんどん精彩を欠き、凡ミスを量産していきます。反対に、シモンのプレーはどんどん良くなっていきました。先々週のローマでの大会とは別人です。
シモンは敏捷で反射神経が良く、コントロールの利いた鋭くて速いボールをどんどん打ち込んでいきます。素人の印象ですが、錦織圭選手に打ち方が似ているように思いました。特に、空中に跳び上がってボールを叩きつけるように打つところです。性根もすわっていて、ピンチに陥っても良いサーブと良いリターンで切り抜けていました。
フェデラーはもう雪崩式にシモンにポイントを取られていきます。ああ、よくあるフェデラーの負けパターンに完全になっちゃった、と嫌な予感が脳内に浮かびます。試合の中盤以降にリードされると精神的に崩れてしまって、そのままあっさり負けてしまうあのパターンです。シモンの独壇場ともいえる一方的な試合内容で、第3セットもシモンが取りました。
ところが第4セット。フェデラーのサービス・ゲームで始まったのですが、フェデラーのプレーがいきなり豹変しました。速くて異様に弾むサーブ、ベース・ラインからの速くてパワフルなリターン、相手の不意を突くドロップ・ショット、ネット・プレーなど、多彩なショットの組み立てで、自分のサービス・ゲームを確実にキープしていきます。
シモンのサービス・ゲームでも、フェデラーは怒涛のごとく超攻撃的になりました。フット・ワークと動きが軽くなって、臆することなくラインぎりぎりのショットを打っていきます。シモンを振り回し、シモンをコートの一角に引きつけて空いたスペースにウィナーを叩き込む、ふんわりしたドロップ・ショットでシモンをネットにおびき寄せ、一転して鋭いパッシング・ショットでシモンの背後へ抜くなど、第3セットでミスを量産していたのが嘘のようです。
攻撃的になったフェデラーは鬼気迫る感じというよりは、不思議なことになんだかやたらと楽しそうでした。悲壮感がまるでなく、明るくて生き生きしているのです。ポイントを取ると、「カモーン!」とガッツ・ポーズを連発。あ、フェデラーが開き直った!と思いました。ところで、足首はどうなったんだおっさん。
テニスは本当にメンタル・スポーツなんだな~、とつくづく思います。フェデラーの豹変ぶりと攻撃的なプレーに、今度はシモンが動揺してしまったようでした。シモンの表情は硬くなり、プレーにも軽やかさがなくなりました。フェデラーは手を緩めずに攻撃を続け、シモンのサービス・ゲームを2度ブレークして第4セットを取り返し、セット・スコア2-2のタイに戻してしまいました。
最終セット、第5セットに入りました。これはもう精神的に先に崩れたほうが負ける、と素人でも分かります。第5セットもフェデラーのサービス・ゲームで始まりました。凄まじく弾むサーブとミスのないショットで、フェデラーはとりあえず大丈夫だと分かりました。
一方、シモンは第4セットでの動揺をまだ引きずっており、最初のサービス・ゲームをフェデラーにブレークされてしまいました。しかし、次のサービス・ゲームからはなんとか持ち直しました。シモンはミスが増えてきていましたが、劣勢に陥った大事な局面では、すばらしいサーブとショットでしのいでいきます。
両者のプレーはほぼ互角ですから、フェデラーはなんとかもう1ゲーム、シモンのサービス・ゲームをブレークしたいところです。でも、フェデラーはシモンのサービス・ゲームをブレークしそうなところまで行くのですが、なかなかチャンスを生かせません。
フェデラーがいつブレークし返されてもおかしくない一進一退の攻防が続く中、シモンのリターンが偶然でインになり(後記:ごめんなさい。「偶然」ではなく、見事なラインぎりぎりのショットででした)、シモンがポイントを取ったときのことです。面白いことが起こりました。
非常に緊迫した状況だったにも関わらず、フェデラーがニッコリと笑ったのです。その後もうつむいてしばらく面白そうにニヤニヤしていました。これは前回の対ジュリアン・ベネトー戦でも見られた光景です。私はフェデラーのこの表情を見て、フェデラーはテニスが本当に好きなんだ、と実感しました。フェデラーはこの接戦を楽しんでいるのです。
フェデラーのリードで5-2となった第8ゲーム、シモンのサービス・ゲームです。フェデラーはブレークしかけましたが、シモンが見事にしのぎました。これで5-3。フェデラーが次の第9ゲーム、自分のサービス・ゲームを守ればフェデラーが勝ちます。
それでもシモンは最後まであきらめませんでした。シモンはなんと2回もブレーク・ポイントを握りました。ここでシモンがフェデラーのサービス・ゲームをブレークすれば、試合はどうなるかまた分からなくなります。
しかし、こういうところで、フェデラーの例の爆速&異様に弾むサーブが炸裂するのです。フェデラーが2回目のマッチ・ポイントを握りました。最後はシモンのリターンがアウトになって、3時間の激戦がようやく終わりました。
ところで、試合がフルセットになったことですっかり陰に隠れてしまいましたが、第1セットでフェデラーはすんごいショットを放ったんですよ。コートの外側からボールを打ち、ネットのポールと審判席の間、1メートル余りの間を縫って相手コートの隅ぎりぎりに入れるショット。(画面を通してだけど)生で見たのははじめて。
全仏オープンの観客というのは面白くて、自国の選手(シモン)を必ずしも応援するわけではないのね。劣勢になってる選手を応援するようです。フェデラーが劣勢になると「ロージャ!ロージャ!」、シモンが劣勢になると「シーモン!シーモン!」といった具合。おもしれえなフランス人。
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