『兵士の物語』日本再公演決定


  アダ友(アダム・クーパーのファン友だち)のエミリーさまから嬉しい急報が!!!


   ウィル・タケット版『兵士の物語』日本公演が再び行われることになりました!


  詳細は PARCO STAGE公式サイト をご覧下さい。

  公演期間は2015年7月24日(金)から年8月2日(日)まで、公演数は全12回です。会場は東京芸術劇場(池袋駅西口すぐそば)プレイハウス 、チケット料金は12,000円(U-25チケットは6,000円)で、一律料金のようです。チケットの一般発売は2015年6月20日(土)10:00より開始です。

  主催はパルコ、ホリプロ、TSP(たぶん この企業さん だと思います)、協賛はクレディ・セゾン、企画はパルコとTSP、制作協力はCMP(←どの企業さんかちょっと分かりません)、製作はパルコということなので、まあ大丈夫だと思います(何がって?www)。

  この作品は一幕物で、上演時間は1時間強です。オーケストラ(7人)の生演奏が付くはずです。ラミュの脚本のオリジナル言語はフランス語ですが、このウィル・タケット版はすべて英語で上演されます。以前、ウィル・タケットから聞いたところによると、この版の制作にあたって新たに依頼作成した英語翻訳版だということでした(だから出版はされていない)。字幕が付くと思います。ただ、かなり平易な英語を使用していますので、聞き取りはさほど大変ではないと思います。

  ウィル・タケットの振付はいいです。過度にクラシカルではなく、過度にコンテンポラリー風でもない。演出は、いかにもイギリス的なブラック・ユーモアとグロテスクさに満ちています。後半は大爆笑シーンが続きますが、最後の最後はかなりショッキングです。子どもに見せちゃいけないよね、あのラスト・シーンは(笑)。

   肝心のキャスト。


   兵士:アダム・クーパー
   兵士の婚約者/王女:ラウラ・モレーラ(英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル)
   悪魔:サム・アーチャー(ニュー・アドヴェンチャーズ←マシュー・ボーンのカンパニー)
   語り手/王様:アレクサンダー・キャンベル(英国ロイヤル・バレエ団ファースト・ソリスト)


  『兵士の物語』の上演形態はいろいろあります。たとえば1人のキャストによる一人芝居形式、語り手役/悪魔役と兵士役の2人のキャストによる上演形式、語り手役、兵士役、悪魔役の3人のキャストによる上演形式などで、踊りなしで上演されることも多いです。踊りが付いている公演では、俳優がセリフを担当してダンサーが踊りを担当する分業制になっている場合もあります。

  一方、このウィル・タケット版は、ダンサー4人(兵士役、悪魔役、婚約者/王女役、語り手/王様役)が出演し、それぞれがセリフと踊りの両方を担当します。

  今回の再公演、アダム・クーパー以外は全員新顔のキャストです。特に王女役がラウラ・モレーラだと知って、それは楽しみなキャスティングだ♪と思いました。モレーラは英国ロイヤル・バレエ団のベテラン・ダンサーで、バレエ・ガラ公演「ロイヤル・エレガンスの夕べ」の座長でもあります。クーパーとは旧知の仲で、バレエ・ダンサー時代のクーパーと頻繁に共演していました。これはほんとに楽しみです。オリジナル・キャストのゼナイダ・ヤノウスキーに負けない怪演を見せてくれるでしょうか。

  オリジナル・キャストたち、婚約者/王女役のヤノウスキーをはじめとして、悪魔役のマシュー・ハート、語り手のウィル・ケンプは、みな優れた演技と踊りとで強烈な印象を残しました。彼らを凌駕するのはかなり難しいことと思います。特にマシュー・ハートの悪魔とウィル・ケンプの語り手はねー、…相当手ごわいよ。彼らを超えるのは本当に困難。

  そんな中で、王女役のモレーラ、悪魔役のサム・アーチャー、語り手のアレクサンダー・キャンベルが、それぞれの役をどんなふうなキャラクターに独自に作り上げてみせるのか、すごく楽しみです。

  兵士役のアダム・クーパーも、去年の『雨に唄えば』とは異なり、バレエのための身体に戻さなくてはなりません。動きもバレエのそれを取り戻さなくてはいけません。今ごろはバレエの集中レッスンに取り組んでいることでしょう。初日のパフォーマンスはいささか精彩を欠くかもしれませんが、日を追うごとにどんどん良くなっていくと思いますので、あまり心配はしていません。

  「前回とまったく同じもののくり返しではいけない、新しく進歩したものを見せなくてはならない」とかつてクーパーは言っていました。今回はどんな兵士像を作り上げてくれるのでしょうか。

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闘う白鳥、逝く


  マイヤ・プリセツカヤが5月2日にドイツで急逝したそうです。享年89歳。

  自伝『闘う白鳥』(文藝春秋社刊)には、彼女の壮絶な半生が綴られています。舞台や映画で見せていた美しい踊りからは想像できない、体制(旧ソ連政府)との闘いの日々。

  また、自身が属していたボリショイ・バレエのダンサーたち、更に旧ソ連の世界的な名だたる芸術家たちが、実はソ連政府からどんな扱いを受けていたのかも、生々しいエピソードとともに記されています。

  最も印象的なのは、ボリショイ・バレエがアメリカ公演を行なっていたときの、ダンサーたちの給料と食事に関するエピソードです。ダンサーたちに支払われる給料はわずかな上に、更にそれをソ連政府の役人たちがピンハネする。毎回の食事代はダンサーたちの自己負担で、ソ連より物価の高いアメリカでの食事代が払えず、食事を摂らずに栄養不良で倒れるダンサーたちが続出し、果てに、ダンサーたちは安くて栄養価の高い犬用のペットフードを食べて舞台に立っていた…。

  プリセツカヤは父親が政治犯として処刑されたこと、母親も連座して流刑に処されたこと、親族がアメリカに亡命していたことで、海外公演に参加することを長いあいだ許されませんでした。やっと参加できたアメリカ公演では、身辺にソ連当局の監視役が常時つきまとい(亡命を阻止するため)、出演料の中からソ連政府に対する巨額の上納金を課されます。

  しかし、そんな状況下でも、プリセツカヤは海外公演に参加するたびに、アメリカ、イギリス、フランスなどの有力者や著名人たちと個人的なコネクションを築き上げ、それを武器にしてソ連当局の圧力と不当な仕打ちに対抗します。イギリスでは、イギリス政府職員やマーゴ・フォンテーンの協力によって、ソ連当局の監視の目をかいくぐり、亡命していたルドルフ・ヌレエフとの面会もやってのけます。

  ソ連国内でも、事あるごとにプリセツカヤは当局と衝突してばかりでしたが、自分に味方してくれる数少ない政治家、官僚、芸術家たちの助力を受け、また厖大なファンと観客の圧倒的な支持をバックに、自分のダンサーとしての野心を実現するために努力し続けました。当局との一連のやり取りやせめぎ合いの詳細も赤裸々に描かれており、旧ソ連下での芸術家の立場が知られます。

  プリセツカヤはキューバの振付家アルベルト・アロンソ、夫である作曲家ロジオン・シチェドリンとともに、一幕物バレエ『カルメン組曲』を作り上げます。ソ連と同じ社会主義国家のキューバ人であるアロンソは、プリセツカヤが置かれていた状況をよく理解していました。アロンソが設定した『カルメン組曲』のテーマは、自由のない、抑圧された状況下にある人間が、その中で個人の意志をいかに貫いていくか、ということでした。

  制限され抑圧された環境の中で、人はどれだけ自分の意志を貫きとおすことができるか。『カルメン組曲』のこのテーマは、そのままプリセツカヤの生き様でもあったのです。

  100歳くらいまでは元気で生きてくれると思ってたんだけどなあ…。今晩はプリセツカヤの踊る映像を観ようと思います。

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バーミンガム・ロイヤル・バレエ『シンデレラ』(仮)


  後で思い出し用メモ。


  シンデレラと王子と王子の友人以外はみな頭がシザーハンズ。

  第一幕:開演前に時計の文字盤と星々が描かれた幕が下ろされている。

   シンデレラは裸足という設定で、トゥ・シューズは穿いていない(シースルーの足カバーはもちろん穿いている)。第一幕は半爪先立ちで踊る。

   義理の姉たちがかなり乱暴にシンデレラをいじめるので最初はちょっと不快だったが、シンデレラもやられっぱなしではなく、ブチキレるとホウキで姉たちを散々ぶん殴って追い払う。

   14「コオロギとトンボ」あり。カエルの御者、トカゲの従僕2人、ネズミの小姓2人が踊る。

  第二幕:最初に5「仙女」が演奏される。舞踏会に集まった人々のシルエット。

   王子役のジョゼフ・ケイリーは、顔は私の好みじゃないが、脚がやたらと長くて、身長の三分の二くらいは脚じゃないかと思えるほどだった。踊りのほうは安定感抜群。王子らしい上品さと優雅な雰囲気もある。

   シンデレラと王子のパ・ド・ドゥは、ビントリー版『シルヴィア』のシルヴィアとアミンタのパ・ド・ドゥを彷彿とさせる超絶困難技ばかりで構成されていた。特にリフト。『スパルタクス』みたいだった。

   12時になって魔法が解けるシーンで、時計の内部を模した大型の装置が背景に下ろされる。ねじや歯車がぐるぐる回転している半円形の装置が、左右からそれぞれ下りてきて最後に合わさる。このへんはビントリーらしい演出だと思った。

   第二幕終了後に下された幕が、文字盤が粉々に割れて中からねじが飛び出した時計の絵に変わっていた。

  第三幕:

   39「王子と靴職人」もしくは40「王子の最初のギャロップ」→45「シンデレラの目覚め」(41「誘惑」、42「王子の第2のギャロップ」、43「オリエンタル」、44「王子の第3のギャロップ」はなし。)

   二人の姉が靴を履くのに失敗した後、今度は継母がトライするのには笑った。継母役は『白鳥の湖』で王妃を演じたアナ・アルブダッシュヴィリ。同一人物とは思えない変わりっぷりで、悲しみに打ちひしがれた老いた王妃から、強気で色気ムンムンの現役セクシー熟女に変貌。

   ガラスの靴を履いてみせたシンデレラが王子と踊るシーンで、短い間だったが、シンデレラ役の平田桃子さんがポワントで踊ったのでびっくりした。ガラスの靴はトゥ・シューズだが、紐もゴムも付いていない。穿くだけ。平田さんが踊っているときに、シューズの側面がしょっちゅうカパカパと折れ曲がる。今にもシューズがすっぽ抜けそうでちょっとハラハラした。

   シンデレラはガラスの靴を仙女に返す。ガラスの靴は亡き母親の形見で、シンデレラの仙女に対する態度からすると、仙女はどうやら母親そっくりか、母親の化身そのものらしい。母の形見である靴を母に返したということは、シンデレラにもう母の形見は必要なくなった、つまりシンデレラは強くなって「親離れ」した、ということなのかな。こういうオチにするあたりもビントリーらしい。

   観客の中に子どもが多くなりがちな作品だから、シンデレラと同じように母親のいない子どもたちが観ることも念頭に置いているんじゃないかと深読み。

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