函館市とどほっけ村

法華宗の日持上人にまつわる伝説のムラ・椴法華。
目の前の太平洋からのメッセージです。

しかたがない大地・北海道

2016年01月22日 08時16分22秒 | えいこう語る

 

経済産業省が、核のゴミの処分に本格的に動き出した。核のゴミはすでにあるから、原発に賛成・反対とは関係なく、処分地を決めるというものだ。どの自治体が引き受けてくれるかということではなく、引き受けてくれる自治体を国がつくり出すとい決意だ。つまり、原発建設の時と同じ手法を使えばいいのだ。まずは経済的に困窮する自治体をつくり出すことだ。首長も議会も、住民を飢えさせてはならないので、引き受けざるを得なくする作戦だ。名付けて「しかたがない作戦」だ。

日本全体で考えると、広大な大地・北海道はゴミ捨て場としては好適地だ。破産自治体で辛抱を強いられている夕張市などは、炭鉱の跡地があるので有力候補に違いない。核のゴミ処分研究施設がある幌延町はNO1候補だ。だが、私が最近心配しているのは、日高地方だ。高波による土砂崩れで、日高線の存続が危ぶまれているからだ。JR北海道としては、赤字路線でこれからも売上が期待できないこの路線は、廃止にしたいのが本音だ。

だが、地元自治体にとって、この路線が廃止になると、地域はますます疲弊するのだ。復旧額は38億円にもなるが、JRと国と道が3分の1ずつ負担する案が浮上して、地元に希望をもたせている。この希望が実は悩ましい希望なのだ。さらに、こんな問題が起きるというより、起こすのだ。復旧したとしても離岸堤がなければまた削られてしまうので、離岸堤の設置をJRが要望しているのだ。この費用負担の見通しが立たなければ、存続を断念しなければならないという。さらに、存続後の赤字は、沿線自治体に一定負担してもらうという条件まで付く。

離岸堤さえ設置してもらえれば存続は可能だ。沿線自治体としては知事にお願いするしかない。だが、大津波や高潮被害の防御のため、全道各地で海岸整備の要望は多い。日高方面を優先させるには、道議会の理解が必要になる。はるみ知事は沿線自治体の首長を、ある夜に知事公館に招待した。期待に胸を膨らませる首長を前に、はるみ知事はいつもの笑顔で話しはじめる。

「私が見た夢を皆さんにお話したい。夢の話だから、私の真意と少し違うところがあるというのも理解してほしい。我が国の戦後の経済復興は、電力により支えられた。私が以前勤務していた通産省が主導し、原子力での発電がそれを支えてきた。だが原子力のゴミがたまり、処分に困っている。このゴミの処理は地中深く埋めれば安心だといわれている。もしそれを引き受ける自治体があれば、国は相当な補助金を未来永劫に用意してくれるという夢だ」と。

その夢を聞いた沿線の自治体の首長たちは、その夜札幌のホテルでこんな夢を見る。「新幹線の札幌早期延伸に国も前向きだ。ということは、国と道とJRとそして道議会も良好な関係を結んでいる。後は我々地元が決断すればいいのだ。夢の中では、今までに見せたことがない、とびっきりの笑顔でそれが正解ですとはるみ知事が微笑んだ。首長たちはお互い協力し合い、地中深く、さらに深いゴミの処分場の誘致を、地元民に理解してもらうことを誓った」というところで、首長たちが夢から覚めるという夢を、私は昨夜夢に見たのだ。

何かを得るためには何かの犠牲が必要なのだ。歴史は「しかたがない」という諦念で成り立っているような気がする。先の大戦も国民すべてが協力し参加したのだ。済んだことは「しかたがない」ことなのだ。それを引きずっていてもなんの解決にもならないのだ。要は前向きに事を処理することなのだ。

昔我が国には「神隠し」という共同体存続の知恵があった。人目の届かぬところに追いやってしまえばいいのだ。1月21日の北海道新聞の「核のゴミ処分有望地、年内選定」「適地道内にも当然ある」という、経済産業省地層処分技術WGの栃山修委員長の言葉が、私にこんな夢を見させてしまったのだ。