▼4日。2016年の国会が動いた。昨年制定された安保関連法案は今年の3月に施行される。中東ではサウジアラビアとイランの国交断絶が宣言されたようだ。世界が中東に注目する中「積極的平和主義」の御旗は、今年中にも中東にはためくのだろうか。5月の「伊勢・志摩サミット」には、我が国が世界をリードしたいと意気込むアベ総理。その背景には、世界中どこにでも派兵できる、武器を持ち活躍できる自衛隊の存在があるからだろう。7月の参議院選挙には、18歳まで選挙権を付与し、ゲーム世代のバトル意識の高い若者に「戦う日本」をアピールし、「改憲」を成し遂げるアベ総理の決意だけが、国民の心に伝わってきた4日の国会だ。
▼アベ総理は「ちょうせん・ちょうせん・ちょうせんあるのみ」と叫んだので、最近ないがしろにしていた「北朝鮮の拉致問題解決」に本格的に着手するのかと思ったが、テレビドラマ「下町のロケット」でのセリフをパクっての「改憲への挑戦」という意味らしい。そういえば、我が北海道にも種子島に次ぐロケット基地構想を発表した。「北町のロケット」だという、アベ総理の初笑いの声が聞こえてきそうだ。
▼参議院選挙に向け、準備万端のアベ政権だが、対抗する野党はもはや見る影もない様相だ。民主や維新の党首は病み上がりのような顔色をしている。その中でも、なんだか浮かれている感んじがするのは、普段はしかめっ面で、絶対ブレないと胸を張り、意地を張りっぱなしの共産党だ。だが「アカ」と呼ばれる共産党、昨年突然野党共闘を主張し始め、野党のリーダーシップを発揮しそうな意気込みだ。
▼「アカ」色からの急激な変身ぶりに、他の野党が戸惑いを見せている気がする。その共産党、69年ぶりで天皇陛下が召集する国会に出席した。出席後の志位委員長のコメントだ。「主権在民の憲法下で、天皇が一番上の席にいるのはおかしいと参加を拒否してきたが、お言葉の内容に政治的発言がなくなった」というような、現実路線をアピールする、変わりぶりを見せている。正月だけに「アカ」に「シロ」を足して、ピンクになったような共産党も、なんだかキモい感じで、学者のような感じがする志位さんの発言に、ちょっぴり物足りなさを感じた。
▼「天皇陛下も先の大戦の反省を踏まえ、近年は平和を希望するお言葉や海外での行動が多く見られます。私たち共産党は、国民統合の象徴である天皇陛下の平和の心を尊重し、陛下と共に戦争のない国を目指すことにすることを誓い、今国会の出席を決定いたしました」とインタービューに応じる、志位委員長に私がなった夢を、昨夜は見てしまったのだ。
▼日本共産党委員長になった夢を、ついに戦後71年目の始まりに見てしまったのだ。我が国の象徴としていただく天皇陛下を平和のシンボルとして、参議院選挙に向かう野党共闘体制が結成されれば、今年はアベ政権の「去る年」になるのではないかと希望が持てた、5日の波が穏やかで、カモメが数千羽も波間に漂う静かな前浜の夜明けだ。
▼昨日4日。この海で網を仕掛けに沖に出た漁師が、網投下の最後のロープに足を取られ海中に転落、71歳の命が奪われた。この海域は流れが早く遺体の回収は困難かと思われたが、仲間の船が網を引き上げたら、ロープに足が巻かれたまま遺体が浮上してきたという。私も漁師に手伝いをするが、船上では、事故を防ぐため、足場の整理整頓が厳しく注意される。
▼「板子一枚下は地獄」と言われる漁師。私は「船上」という言葉が「戦場」という言葉とダブル。「常在戦場」と言われる政治の世界も、漁師の世界も同じかもしれない。平和とは、命を奪わないということではないかと、しみじみ考えさせられた、1月4日の出来事である。
▼海面に浮かぶ無数のカモメの群れ。海の仲間の供養のよう私は感じる。