今回のお気に入りは、横山光夫です。
横山光夫の文学の香り高いロマンあふれる文章が大好きです。
今では図鑑の解説文に著者の個人的な思い入れが入っているなんてありえません。
でもそういう図鑑の存在価値を、昆虫好きなら理解していただけるはず。
次代の昆虫好きを養成するのは、正確無比な図鑑より、実はこういう図鑑です。
最近流行りの「ときめく○○図鑑」は、横山氏の図鑑の延長線上にあると思います。
「原色日本蝶類図鑑」にすっかりハマったため、もっと彼の文章に触れたい、と思って他の著作2冊を探しました。
=====
「原色日本蝶類図鑑」
1954年刊、保育社の原色図鑑第1巻
「昆虫採集 ~ 採集から標本まで」
1956年刊、保育社のハンドブック
「日本の蝶」
1957年刊、保育社の原色小図鑑第1巻
=====
数年前に「日本の蝶」を手に入れ、「原色日本蝶類図鑑」と違った文章に触れることができ、とてもうれしかったです。
最後の1冊「昆虫採集」はあちこと探しましたが、なかなか見つかりませんでした。
あれから3年、ようやく見つかりました。
注文し、届くのを待つ時間の長かったこと。
本が届いてからの心の声は次の通り。
ドキドキしつつ開封。
表紙カバーがずいぶん傷んでいるな。
発行から60年以上経っているのだから仕方ないか。
あれ? 「横山光夫 編集」って書いているぞ。
「著者」ではないの?
ということは、横山氏とそれ以外の人の文章が入り混じっているということか。
いささかショック。
しかし、かつて増補改訂版「原色日本蝶類図鑑」の解説文を読み、
横山氏の文章を見つけ出すことに喜びを得たときと同じ。
よーし、やるぞ!
という訳で、腕まくりして読み始めました。
話を進める都合上、本書にない「もくじ」を作ってみました。
昆虫の写真 1-8
春 9-19
夏 20-37
秋 38-41
冬 42-43
標本の作り方 44-56
(無題) 57-58
採集 59-62
標本 62-64
飼育 64-66
採集の道しるべ 67-97
昆虫と人生 98
昆虫手帳 99-101
全国の昆虫分布 102-103
昆虫と趣味のゆくえ 104
いたるところで横山氏と別の人の文章が入り混じっています。
まとめて楽しめるのは、春・夏・秋・冬の各章の冒頭部分。
あとは昆虫と人生、昆虫と趣味のゆくえ辺りでしょうか。
一部をご紹介します。
=====
春
地上の星のそれのように、見わたす限り野も山も「緑のしとね」におおわれ、七つの色もとりどりの花に色どられます。
自然のうるわしい環境のなかに、植物も昆虫と共にあでやかにわが世の春をうたっています。
冬の眠りからめざめた「蝶の踊子」たちは、明るい陽光の中に新しい生活の営みをはじめます。(以下略)
=====
夏
昆虫のファミリアにとって「夏」は待望の訪れである。
春のウグイスもハルゼミの調べも、いつか衰えて青衣に装う山も林も、幽谷のホトトギスの雄叫びに季節は溌剌として移り変わっていきます。(以下略)
=====
秋
高原の空に雲のたなびく色にも秋の気配を感じ、山の道標の草むらに早や虫の鳴く音も聞かれます。(以下略)
=====
冬
ひと夜の木枯らしに落葉して、冬の鳥がこずえの実をついばむのも、ひとしお冬の寂しさをそえます。(以下略)
=====
英国ではやや日本とその行き方をことにして、かつて少年の時代昆虫などには何の関心も持たなかった年老いた将軍や、銀行家、政界を引退した大政治家(チャーチル英首相なども)また老学者といった人達で、昆虫を趣味とする人びとが多いといわれます。
=====
「自然の鑑賞」をかね「趣味の行楽」として、ながく虫たちと親しみを共にされることを念願いたします。
=====
「わが世の春」「ひとしお」など、これまで何度も目にした単語があります。
いかにも横山氏の文章を読んでいる、と実感できる個所です。
他にも「かくて山小屋の灯は虫談に夜のふけるのも知らないほどです。」など、らしさあふれる文章があちこちにありましたが省略します。
あー、横山節に浸った浸った。
読むことができて本当に良かった!
現代にもこういう研究者がいてくれたらいいのに。
なお本書はカバーの状態がとても悪いので、和紙テープで補修し、長く楽しみたいと思います。
横山光夫の文学の香り高いロマンあふれる文章が大好きです。
今では図鑑の解説文に著者の個人的な思い入れが入っているなんてありえません。
でもそういう図鑑の存在価値を、昆虫好きなら理解していただけるはず。
次代の昆虫好きを養成するのは、正確無比な図鑑より、実はこういう図鑑です。
最近流行りの「ときめく○○図鑑」は、横山氏の図鑑の延長線上にあると思います。
「原色日本蝶類図鑑」にすっかりハマったため、もっと彼の文章に触れたい、と思って他の著作2冊を探しました。
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「原色日本蝶類図鑑」
1954年刊、保育社の原色図鑑第1巻
「昆虫採集 ~ 採集から標本まで」
1956年刊、保育社のハンドブック
「日本の蝶」
1957年刊、保育社の原色小図鑑第1巻
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数年前に「日本の蝶」を手に入れ、「原色日本蝶類図鑑」と違った文章に触れることができ、とてもうれしかったです。
最後の1冊「昆虫採集」はあちこと探しましたが、なかなか見つかりませんでした。
あれから3年、ようやく見つかりました。
注文し、届くのを待つ時間の長かったこと。
本が届いてからの心の声は次の通り。
ドキドキしつつ開封。
表紙カバーがずいぶん傷んでいるな。
発行から60年以上経っているのだから仕方ないか。
あれ? 「横山光夫 編集」って書いているぞ。
「著者」ではないの?
ということは、横山氏とそれ以外の人の文章が入り混じっているということか。
いささかショック。
しかし、かつて増補改訂版「原色日本蝶類図鑑」の解説文を読み、
横山氏の文章を見つけ出すことに喜びを得たときと同じ。
よーし、やるぞ!
という訳で、腕まくりして読み始めました。
話を進める都合上、本書にない「もくじ」を作ってみました。
昆虫の写真 1-8
春 9-19
夏 20-37
秋 38-41
冬 42-43
標本の作り方 44-56
(無題) 57-58
採集 59-62
標本 62-64
飼育 64-66
採集の道しるべ 67-97
昆虫と人生 98
昆虫手帳 99-101
全国の昆虫分布 102-103
昆虫と趣味のゆくえ 104
いたるところで横山氏と別の人の文章が入り混じっています。
まとめて楽しめるのは、春・夏・秋・冬の各章の冒頭部分。
あとは昆虫と人生、昆虫と趣味のゆくえ辺りでしょうか。
一部をご紹介します。
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春
地上の星のそれのように、見わたす限り野も山も「緑のしとね」におおわれ、七つの色もとりどりの花に色どられます。
自然のうるわしい環境のなかに、植物も昆虫と共にあでやかにわが世の春をうたっています。
冬の眠りからめざめた「蝶の踊子」たちは、明るい陽光の中に新しい生活の営みをはじめます。(以下略)
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夏
昆虫のファミリアにとって「夏」は待望の訪れである。
春のウグイスもハルゼミの調べも、いつか衰えて青衣に装う山も林も、幽谷のホトトギスの雄叫びに季節は溌剌として移り変わっていきます。(以下略)
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秋
高原の空に雲のたなびく色にも秋の気配を感じ、山の道標の草むらに早や虫の鳴く音も聞かれます。(以下略)
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冬
ひと夜の木枯らしに落葉して、冬の鳥がこずえの実をついばむのも、ひとしお冬の寂しさをそえます。(以下略)
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英国ではやや日本とその行き方をことにして、かつて少年の時代昆虫などには何の関心も持たなかった年老いた将軍や、銀行家、政界を引退した大政治家(チャーチル英首相なども)また老学者といった人達で、昆虫を趣味とする人びとが多いといわれます。
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「自然の鑑賞」をかね「趣味の行楽」として、ながく虫たちと親しみを共にされることを念願いたします。
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「わが世の春」「ひとしお」など、これまで何度も目にした単語があります。
いかにも横山氏の文章を読んでいる、と実感できる個所です。
他にも「かくて山小屋の灯は虫談に夜のふけるのも知らないほどです。」など、らしさあふれる文章があちこちにありましたが省略します。
あー、横山節に浸った浸った。
読むことができて本当に良かった!
現代にもこういう研究者がいてくれたらいいのに。
なお本書はカバーの状態がとても悪いので、和紙テープで補修し、長く楽しみたいと思います。
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