鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその687~夜と霧

2012-09-25 07:04:45 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「夜と霧」です。

ついに「夜と霧」を読みました。
ナチスの強制収容所に収容された心理学者が自らの体験を心理学的
側面から書いた名著中の名著です。
いつかは読もうと思っていましたが、主題が主題だけに気が重く、
先延ばししていた本です。
旧版と新版が併売されていましたが、少しでも読みやすい方が良いと
思い、新版を選びました。

実際に手に取ると本の薄さに驚き、また読み始めるとその読み易さに
驚きました。
これは本書が簡単な内容を書いているというわけではなく、深い内容を
浅くしか読めないので、そういう感想をもったということですが・・・。

人間とは? 生きるとは? 
何度も立ち止まり、わが身、家族などに思いをはせながら読みました。

人類史上最も残虐な行為といわれるナチスの強制収容所での体験を
あれほどまでに心理学者として冷静に分析し、平易な言葉で伝えた、
その裏にはどれだけの葛藤があったでしょうか?
特に、著者の両親や妻、娘が収容所で亡くなったことや、ユダヤ人を
主に収容したという事実にあえて触れないことで、世界中の誰もに
共感を持ち、我がことのように考えてもらうよう努めています。
その想像を絶する努力に敬意を表します。

後世に伝えるべき本の代表格という評価に同意します。

(おまけ1)
本書を読むきっかけとなったのは、「神様のカルテ」です。
ハルさんイチオシの本であり、屋久杉くんが一歩を踏み出すきっかけに
なった本として登場しており、ついに読もうという気になりました。

(おまけ2)
若い頃、北杜夫のファンで「夜と霧の隅で」を読みました。
題名から判るとおり「夜と霧」に刺激を受けて書いた小説のはずですが、
その内容を思い出せません。
今回「夜と霧」を読むにあたり、どんな内容だったか調べました。

ある日、精神病院に「夜と霧」命令が届きます。
治るあてのない患者は安楽死させよ、という命令です。
物語は、医師たちが患者たちを何とか治療して安楽死を阻止しようと
悪戦苦闘する姿を描いています。

「夜と霧」命令は、強制収容所だけでなく精神病院にも届いていたの
ですね。
国家の方針に正面から抗うことはできなくても、自分のできることに
必死に取り組む、そんな姿は美しいです。
まさに「夜と霧」命令の行き渡った国家の隅で行われたであろう物語。
北杜夫はこの作品で芥川賞を受賞したそうですが、その魅力的な内容に
今一度読みたいという気になりました。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする