元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「戒厳令下 チリ潜入記」

2006-06-18 08:02:28 | 映画の感想(か行)
 (原題:Acta General de Chile)87年スペイン作品。監督のミゲル・リティンは、75年の南米チリのクーデターの際、九死に一生を得て亡命したチリの映画作家である。このフィルムはその彼が変装し、名前まで変えてクーデター後のチリの状況をつかむため潜入していったときの記録だ。

 ハッキリ言ってこの映画は迫力が違う。恐怖政治で知られたピノチェト政権下でのゲリラ撮影。ヘタすると命はない。全篇ピーンと張りつめたせっぱつまった雰囲気は観る者をイッキに引き込んでしまう。

 映画はまず首都サンチアゴの貧民街の状況を写し出す。近代的な表通りから一歩入っただけで貧しい住民の悲惨な生活環境を目の当たりにすることができ、この国のゆがんだ政治体制が浮き彫りにされる。

 それと目を奪うのはチリ北部の硝石の採掘現場の描写で、荒涼とした大地の中にぽつんと建っている今はもう訪れる人もない廃坑を広角でとらえたカメラワークが素晴らしい。こんな映像を観ていると、たび重なる政変によってチリの民衆・文化がどのように変わっていったかが伝わってきて、ある種の戦慄を覚えてしまう。

 クライマックスは当時のアジェンデ大統領の友人・知人らによる証言とニュース・フィルムとの合成によるクーデターの再現であるが、この映画の成功の要因はそれよりも民衆の目から見たチリの状況を丹念に描いた前半部分にあるといってもよい。それによって愛する祖国にあえて“潜入”しなければならなかった作者の悲しみが伝わってくるのである。

 それと作者がクライマックスに持ってきたかったクーデターの再現部分がいくぶん演出過多で劇映画風になっていたのに対し、対象をありのままに写した前半部分が説得力を持ってしまったことは、ドキュメンタリー映画の演出の難しさ、面白さを如実にあらわしていて興味深いものがある。
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アンプを新調した。

2006-06-17 07:13:33 | プア・オーディオへの招待

 アンプを新しいものに買い替えた。機種はMARANTZPM8001である。今年2月に導入したスピーカーのKEFブランドみたいな一部のディーラーでしか扱わない商品とは違い、MARANTZはちょっと大きな電器店ならどこでも陳列・販売しているから、同社の製品を見かけたことがある読者諸氏諸嬢も少なくないと思う。

 本当は同じ価格帯のDENONのPMA-1500AEの方がKEFのスピーカーとは相性が良いと言われている。しかし、サイズと重量の点で断念。あの製品はPM8001より奥行きが5cmも大きく、ラック代わりに使用している棚には入らないし、ウェイトも4kg重いから棚の強度面でも不安があったからだ。しかも操作性や使っている部品類のグレードではMARANTZの方が上。プリ=メインを分離できることから将来セパレート型に移行する際にも有用かとも思い、PM8001に決めた次第。

 なお、ディーラーでの試聴の際、同価格帯のトライオードのFuture2005と比べてみた。あの製品は電源スイッチの他はボリュームと入力切り替えしかパネルになく、薄型で垢抜けたデザイン、そして大型トライダル型トランスにアルミ削り出しの足という、実にオーディオファンの所有欲をくすぐるシロモノだった。しかし、音の方は朗々と鳴るものの高域が大雑把で、ロック系だけならOKだがクラシック系ソースではMARANTZに完敗。単純な構成ゆえ「改造」すれば使えるかもしれないが、当方それほどのマニアではない(笑)。

 PM8001を自宅で鳴らした感想だが、情報量こそ上がったものの、それほどびっくりするような変化はない。それどころか、前の機種より質が良いためか、CDプレーヤーの安物ぶりを前面に出すようなサウンド展開(ハイ上がり)にもなってきて、ちょっと不満(以前は安物同士でまとまっていたのかも ^^;)。これでプレーヤーの買換時期も早くなりそうだ(爆)。

 写真でも分かるように、色はシルバーである。ゴールドのヴァージョンもあるが、ハッキリ言ってゴールドは時代遅れだ。オーディオ機器はやっぱりシルバー(そして黒)に限る。ゴールドはアキュフェーズの製品だけで沢山だ(笑)。でも残念なことに、中国製ゆえに仕上げが悪い。よく見るとパネルに細かいスクラッチが散見される。同じく中国製の、先日格安で手に入れたチューナーも仕上げにムラがあるし、使用中の“英国ブランドだけど中国製のスピーカー”だって塗装が甘い。聴き比べたトライオードの製品も部品は極上であったにもかかわらず操作感にガタがあったのも中国製だからだろう。すべてが日本製(or欧米製)だった頃とは状況が違うようだ(涙)。

 で、今年中に買い替えるプレーヤーの候補だが、通常はPM8001とペアになるSA8001になるところだろう。でもあいにく私はMARANTZのプレーヤーをあまり信用していない(以前使っていた同社の製品が故障だらけだったので ^^;)。よってたぶん他社製品になるとは思うが、その前に電源ケーブルやRCAコードの交換、そしてスピーカーコードをバイワイヤリング接続にしてみるとか、いろいろとやることがありそうだ。

 ホント、オーディオってのは面倒くさい(そして楽しい)ものである。
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「ヒストリー・オブ・バイオレンス」

2006-06-16 06:55:24 | 映画の感想(は行)

 (原題:A History of Violence)インディアナ州の田舎町を舞台に、二人組の強盗を片付けたことから一躍町の英雄になった男が、その事件により自身の過去に対する疑惑にさいなまれる過程を描くデイヴィッド・クローネンバーグ監督の新作。

 アメリカの暴力社会を皮肉な目で捉えた作者の視点が印象的な映画だ。クローネンバーグはカナダ人である。マイケル・ムーアが「ボウリング・フォー・コロンバイン」で紹介したように、カナダは銃の普及率はアメリカ以上ながら、犯罪発生率は低い。その理由はいろいろと考えられるのだが、とにかく本作においてはカナダ人としての“外部からの視線”がアメリカの銃社会の異常さを際立たせているのは確かだ。

 主人公は正当防衛で強盗を始末したといっても、殺人であることは間違いない。それが住民はもとよりマスコミからも持て囃されるという不条理。気弱だった彼の(義理の)息子は、この事件をきっかけにイジメっ子をシバくほどに“マッチョ”になっていくが、それを誰も声高に批判しない。

 やがて一家はさらなる暴力の嵐に巻き込まれるが、終盤の西部劇のような展開も、それにより一家瓦解の危機は訪れない。それどころかまるで“場合によっては暴力も必要だ!”と開き直っているようではないか。

 これはつまり、クローネンバーグがこれまで描いてきた“非人間的なるもの”の異様な生態の一つを表現しているのだと思う。暴力によってでしかコミュニケート出来ない連中。衝撃的な冒頭シーンに代表されるような、暴力が日常の隣にある歪な状況。それらを露悪的に描出して一人悦に入るあたり異能クローネンバーグの面目躍如である(爆)。

 外道モード全開のヴィゴ・モーテンセンをはじめ、エド・ハリス、ウィリアム・ハートなど役者も揃っている。面白かったのが主人公の妻役のマリア・ベロで、一見普通だが実は好色で少し変態というキャラクターは大いにウケた(笑)。
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復帰します。

2006-06-16 06:53:34 | その他
 相変わらず仕事は忙しいのですが、いつまでも休んでいるわけにもいきませんので、ひとまずプログ更新を再開いたします。

 毎日文章をアップできるかどうか分かりませんが、とりあえずヨロシク ->ALL。
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