元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ザ・フラッシュ」

2023-07-24 06:04:11 | 映画の感想(さ行)
 (原題:THE FLASH )八方破れの建て付けであり、映画の質としてはあまり上等とは言えない。しかし、随所に堪えられないチャームポイントが散りばめられており、決して嫌いにはなれないシャシンだ。特に、無駄に映画ファン歴が長い私のようなオッサンにとっては、観て得をしたような気にもなる。長すぎると思われる2時間を超える尺も、大した欠点ではないと思う。

 ザ・フラッシュことバリー・アレンは、ジャスティス・リーグの一員としてバットマンやワンダーウーマンと共に世界平和のために働いていたが、ある時彼はそのスピードが光速を超えてタイムリープを可能にさせることに気付く。そこで幼いころに何者かに殺害された母と無実の罪を着せられて服役している父を救うため、過去にさかのぼってバリーと両親が健在である世界にたどり着く。ところが、その世界ではかつてスーパーマンが倒したはずのゾッド将軍が地球侵略に乗り出しており、しかもスーパーマンたちは不在でバットマンは引退済。バリーはその世界における“若い頃の自分”や、新ヒロインのスーパーガールらとこの絶対的な危機に立ち向かう。



 まず、タイムトラベル物における“タブー”とも言える“別時代との自分との接触”が大っぴらに行われていることに違和感を抱く。さらに、超能力を会得する前の状態である“もう一人の自分”に、無理矢理にスーパーパワーを付与させようとジタバタするのも愉快になれない。そもそも、タイムリープとメタバースを都合よく混同するのは反則だろう。ゾッド将軍との大々的バトル場面も、意外なほど盛り上がらない。

 だが、楽隠居しているはずのバットマンにマイケル・キートンが扮していることが分かったあたりから、映画的興趣は昂進してくる。序盤の、ベン・アフレック演じるバットマンも悪くはないが、やはりキートン御大は貫禄が違う。さらに、黒髪ショートの超クールなスーパーガールも魅力的だ。扮する長編映画初出演のサッシャ・ガジェは、本年度の新人賞の有力候補である。

 映画のクライマックスになる、複数の時空がランダムに展開するシークエンスは、何と“あの人たち”が大挙して登場。懐かしい面々や、思いがけないメンバーが次々と現れては消える。この部分だけで入場料のモトは取れるだろう。

 アンディ・ムスキエティの演出は取り立てて才気走ったところは無いが、効果的なギャグの挿入(特に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に関するネタは大いにウケた)に関しては非凡なものも感じた。主演のエズラ・ミラーは絶好調だが、プライベートでの素行の悪さは気になるところ。次作があるのかどうかわからないが、ラストの“思いがけないあの人”の御登場で、今後のシリーズの継続にも期待を持たせる。

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