元・副会長のCinema Days

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「ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画」

2021-01-25 06:21:03 | 映画の感想(ま行)

 (原題:MISSION MANGAL)国威発揚映画だという指摘も一応うなずけるが、それでも鑑賞後の満足度はとても高い。インド製娯楽映画らしいポップでカラフルなエクステリアと、テンポの良い演出。加えてキャストはスクリーン映えする者ばかり。実録ものなので、結末は分かっている。しかしこれだけ力一杯作ってもらえれば、評価しないわけにはいかない。

 2010年、インドの宇宙開発事業の命運をかけた月探査ロケットの打ち上げは、あえなく失敗する。責任者のラケーシュとタラは火星探査プロジェクトに異動させらせるが、この部署は名ばかりの閑職で、明らかな左遷であった。使える予算はわずかで、集められたスタッフは駆け出しの若い女子職員たちと冴えないオタク野郎、そして定年間近の窓際のオッサンだけ。

 それでもタラは料理をヒントに、手持ちの資産を有効利用して探査機を火星に送るアイデアを提示する。渋るインド宇宙研究機関(ISRO)の行政官を説得し、何とか開発の許可を取り付けたものの、次々と難関が立ちはだかる。アジアで初めて火星探査機の打上げを成功させたインド宇宙開発チームの奮闘を描く。

 アメリカ映画「ドリーム」(2016年)に通じるところがあるが、このインド映画は思いっきりエンタテインメント方向に振られている。登場人物たちは困難にぶち当たると、アイデアとチームワークでひとつひとつそれらを乗り越えてゆく。その展開は平易で屈託が無く、それだけ幅広い観客に対する訴求力が高い。

 各メンバーのキャラクターは十分掘り下げられており、まるで「七人の侍」のようにそれぞれに見せ場が用意されている。また、題材が理系であるためか(笑)、プロットがほぼ理詰めで積み上げられるのは観ていて心地良い。まあ、中には“そんなバカな”と思うネタもあるのだが、そこは愛嬌と勢いで乗り切ってしまう。

 クライマックスの打ち上げ場面と、それに続くオペレーション。果たして探査機は火星の軌道に乗ったのかどうかというサスペンスも、存分に盛り上げられる。そしてラストシーンは、とても感動的だ。映画館を出た後、思わず夜空を見上げるほどに。

 ジャガン・シャクティの演出は好調で、インド映画得意の音楽シーンも含めて、畳み掛けるタッチで迫る。ラケーシュ役のアクシャイ・クマールは海千山千のリーダーを快演している。タラに扮するビディヤ・バランをはじめ、タープスィー・パンヌー、シャルマン・ジョーシー、ニティヤー・メネン、キールティ・クルハーリと、女優陣は場違いなほど美人揃いだ。

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