元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ご存知!ふんどし頭巾」

2023-10-27 06:09:21 | 映画の感想(か行)
 97年作品。先日、財津一郎の訃報を聞いて思い出したのがこの映画。彼はお笑い番組やCMでお馴染みの顔だったが、映画俳優としても実績を積んでいた。とはいえ、私は時代的な関係で実際にスクリーン上でお目に掛かった機会は少ない。その中でも本作は(主演ではないのだが)かなり大きなインパクトを感じた一本だ。映画の出来自体も決して悪くはない。

 大手繊維メーカーに勤める帆立沢小鉄は、あまりにお人好しの性格のため、職場でも家庭でも軽く見られている。実は彼の亡き父は怪獣のぬいぐるみ役者で、不安定な生活を送っていた。小鉄は父のヤクザな人生を嫌い、平穏無事な生き方に甘んじていたのだ。ある日、小鉄はパンツマンと名乗る正義の味方と遭遇する。



 チンピラに絡まれた女性を助けるその勇姿に感動した小鉄だが、後日事故で世を去ったパンツマンの思いを受け継ぎ、父の遺品であるふんどしを被って、ふんどし頭巾を名乗り密かに人助けに勤しむことになる。一方、小鉄の勤務先は汚職事件が頻発し、彼も巻き込まれそうになる。小鉄はクビを覚悟でふんどし頭巾に変身し、不正に敢然と立ち向かう。

 企画と原作は秋元康の手によるものなので観る前は若干の危惧はあったのだが(苦笑)、遠藤察男による脚本が及第点に達しており、ドラマ運びに無理がない。主人公がどうして冴えない生活を送っていたのか、それがなぜヒーローとして覚醒したのか、その段取りが上手く紹介されている。敵役がどこかの犯罪組織なんかではなく、勤務先に関係した小悪党どもだというのも身の丈に合った設定だ。

 小松隆志の演出はスムーズで、挿入されているギャグの数々も鮮やかに決まる。財津一郎は悪玉の一人である高級官僚に扮しているのだが、これがもう最高だ。ひたすら強欲でスケベでありながら愛嬌があって憎めない。財津の持ちネタも大々的にフィーチャーされ、お約束ながら笑いを呼び込む。主演の内藤剛志の小市民ぶりも的確だし、坂井真紀に菅野美穂、蛭子能収、石井苗子、岸部一徳、大杉漣、吹越満、寺田農など脇の面子も粒揃い。大立ち回りの末に主人公が選んだ生き方は感慨深く、鑑賞後の印象は良好だ。

 なお、この映画は当時松竹が展開していたプロジェクトであるシネマジャパネスクの一環として作られている。仕掛け人は名物プロデューサーだった奥山和由で、意欲的な作品を少なからず世に出したのだが、興行成績が低調であったことから98年に奥山は失脚。この試みも終焉を迎えた。もしもあのまま継続していたら、もっと数多くの面白い日本映画に出会えたのかもしれない。

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