元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ダニエルばあちゃん」

2008-09-08 06:59:43 | 映画の感想(た行)
 (原題:Tatie Danielle)90年作品。フランスの片田舎に年老いたメイドと2人で住んでいたダニエルばあちゃん(ツィラ・シェルトン)だが、メイドが急死したため、パリの甥の家にやっかいになるハメになる。しかし、彼女は性格がすこぶる悪く、意地悪が3度のメシよりも好きという、とんでもないバアサンで、平和だった甥一家は崩壊の危機にさらされる。

 「人生は長く静かな河」などのフランスのエティエンヌ・シャテリエ監督によるコメディ。何よりも印象的なのはヒロインの筋金入りの意地悪ばあさんぶりでその憎たらしさはラストまでぜんぜん変わることがない。アメリカ映画「ドライビング・MISS・デイジー」に出てきた頑固バアサンも顔負けの強烈キャラクターである。まず絶対に知り合いになりたくないタイプの年寄りだ。

 そんな彼女に対抗できるのは甥一家がバカンスの間だけ雇った若いお手伝いさんだけ。彼女はばあちゃんに匹敵するエグイ性格で、最初は反発し合うものの、やがて似たもの同士で意気投合してしまう。それでもお手伝いさんが一晩だけ外泊すると言うと、ばあちゃんはスネてしまい、自分の家に放火して、責任を甥一家になすりつけるという荒技を披露し、まったくこのねじまがった性格は死ななきゃ直らないのかと(おっと、過激な表現だあ!)あきれはてる。

 でも映画自体は面白い。登場人物がユニークでどれも過不足なく描けていて、冗談のキツさにもかかわらず楽しく観られるのは、作者のキャラクターのとらえ方が的確だからだろう。

 一番面白かったのは、バアサンが公園のベンチでお菓子を食べていると、となりのベンチに座った老婦人がにっこりと笑いかける、ところがバアサンはニコリともせずにアッカンベーをするという、観ていて思わず老人虐待に走りそうなシーンである。ここで気づいたのだが、この作者の視点は、年寄りは根本的に年寄りが嫌い、ということなのではないだろうか。自分の老いた姿を二重写しにするようで、いたたまれない気持ちになるのではなかろうか。年老いたメイドをイジメ抜くバアサンの行動もその意味では納得がいく。

 なお、昔本作を観たときは劇場はなぜか平日にもかかわらず観客が入っていて、そのほとんどがお年寄りだったのには少しビビッてしまった(爆)。

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