元・副会長のCinema Days

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「マイ・ハート・パピー」

2024-01-13 06:05:52 | 映画の感想(ま行)
 (英題:MY HEART PUPPY)前半は体裁として多くの韓国製テレビドラマと同等のレベルかと思わせる。つまりは微温的でキレもコクもなく、ただ漫然と上映時間が過ぎていくという感じで、新年早々ハズレくじを引いたのではないかと気落ちしたものだ。しかし、中盤からは意外な盛り上がりを見せ、結果満足して劇場を後にすることが出来たのだから世話はない。やはり最近の韓国映画は、ライトな題材を採用しても何かしら見どころを用意してくれるものだ。

 ソウルに住む勤め人のミンスは、交際相手のソンギョンにプロポーズするため仕事を終え愛犬のルーニーの世話をした後、彼女の待つレストランに向かう。ところが何とソンギョンは犬アレルギーで、ミンスと会う時は彼に内緒で大量の抑制剤を服用していたのだった。これでは結婚生活は難しいと判断したミンスは、経営するカフェが潰れて窮乏状態の従兄弟のジングクと一緒にルーニーの里親を探す旅に出る。



 SNSでルーニーの引取先として名乗りを上げた者たちを訪ね歩くミンスとジングクが散々な目に遭うというのは、まあ予想通り。多くの保護犬を預かっている金持ちに会うため済州島まで向かう2人が、なぜか途中で行き場のない子犬たちを次々と預かるハメになるくだりは、いくらでも面白くなりそうなのだが段取りが平板で笑いが弾けない。

 ところが、くだんの金持ちとようやく会えたあたりから映画は大きく動き出す。人間とペットとの関係性をかなり真摯に問う内容へとシフトチェンジし、それまでの展開が伏線として有効に機能し始めるのだ。特に、映画序盤から何度もしつこく挿入されるミンスと亡き母との思い出話が重要なサブ・プロットであったことに少し驚いた。そして終盤での、主人公たちが下す決断には感動さえ覚えてしまう。

 脚本も担当した監督のキム・ジュファンの仕事ぶりは、平凡な建て付けの中に大きなメッセージを織り込むという侮れないもの。中盤までのプロセスをリファインすれば、かなり優れた作品になったと思わせる。主演のユ・ヨンソクとチャ・テヒョンは絶好調で、両者のトボケた持ち味でウケないギャグもまあ許してやろうという気になる(笑)。

 チョン・インソンにパク・ジンジュ、キム・ユジョン、イ・ホジョンら女優陣のパフォーマンスも良好だ。そしてゴールデンレトリバーのルーニーをはじめ、出てくる犬が全部可愛い。犬好きには堪えられない映画だろう。済州島の風景は美しく、観光気分も味わえる。

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