元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「マッドマックス:フュリオサ」

2024-06-29 06:26:05 | 映画の感想(ま行)

 (原題:FURIOSA: A MAD MAX SAGA )世評が極めて高かった前作の「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(2015年)を、個人的にはまったく評価していない。どこをどう見てもホメるポイントが存在せず、落第点しか付けられないシャシンである。しかし、その中でシャーリーズ・セロン扮する女戦士フュリオサの出自だけは気になった。どうしてああいう出で立ちなのか、詳しく知りたいと思ったものだ。今回、彼女の若き日の物語が“番外編”みたいに映画化されるということで興味を持って鑑賞し、結果、かなり楽しめた。

 世界の崩壊から45年が経ち、生き残った人類は価値観を共有した者たちごとに各地で集団生活を送っていた。森林地帯に住んでいた少女フュリオサは、ある日突然暴君ディメンタス将軍が率いるバイカー軍団に拉致される。救出に向かった母親も殺され、失意のうちにディメンタスが支配する“帝国”で暮らすことになった彼女は、それから数年後、今度は鉄壁の要塞を牛耳る怪人イモータン・ジョーの元に身を寄せるハメになる。

 話は少々入り組んでいて、単純明快な活劇編を期待していると肩透かしを食らうかもしれない。そもそも、悪の首魁がディメンタスとイモータン・ジョーの2つに設定されていて、それぞれの手下共も一枚岩ではないという状況は、こういうエクステリアの作品に相応しくないと思う観客もいるだろう。

 しかしよく考えてみれば、前作までのマックス(マクシミリアン)・ロカタンスキーのようなヒーロー然とした者が全てを解決していくような筋書きの方が、よっぽど無理がある。斯様なディストピアの中では、フュリオサのように各勢力に対して付かず離れずのスタンスで身を処する方が、けっこう“現実的”だと思ったりする(笑)。

 ジョージ・ミラーの演出は前作の不調ぶりがウソのような闊達なパフォーマンスを見せ、特にアクション場面は本当に素晴らしく、ここだけで入場料のモトは取れるだろう。そして、主演のアニャ・テイラー=ジョイの魅力も大いに作品を支えている。若くて華奢な彼女が歯を食いしばって困難に立ち向かう様子を見せるだけで、映画のヴォルテージは上がる。マックスの不在をカバーして余りある仕事ぶりだ。

 クリス・ヘムズワースは楽しそうに悪役を演じ、トム・バークにチャーリー・フレイザー、ラッキー・ヒューム、ジョン・ハワード、そして少女時代のフュリオサに扮するアリーラ・ブラウンなど、役者は揃っている。サイモン・ダガンのカメラによる荒涼とした風景も印象的で、トム・ホルケンボルフの先鋭的な音楽は場を盛り上げる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする