元・副会長のCinema Days

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「ネイビーシールズ ナチスの金塊を奪還せよ!」

2018-02-03 06:32:31 | 映画の感想(な行)

 (原題:RENEGADES )いやはや、現時点でこのような脳天気すぎる戦争物に遭遇するとは思わなかった。冷戦構造が続いていた80年代までならば、本作みたいなシャシンも居場所があったのだろうが、今提示されるとタメ息しか出ない。それでも内容が良ければ評価も出来るのだが、見事に中身はスッカラカンだ。まあ、時間潰しのために何も考えないまま観てしまった私も、相当迂闊だったのだが(苦笑)。

 1995年、米海軍はユーゴスラビア紛争に介入していたNATOの一員としてサラエボに駐屯していた。セルビア軍相手に大胆な戦略を展開するマット率いる5人のネイビーシールズは、湖の底に第二次大戦中にナチス・ドイツが貯め込んでいた3億ドルもの金塊が眠っているという情報を手に入れる。それだけの金があれば、避難民救済やボスニア再興に大いに貢献できる。メンバーの一人と恋仲になったウェイトレスが難民支援をおこなっていたこともあり、5人は金塊の奪取を計画。敵陣内の湖に潜入し、部隊がが現場を離れるまでの8時間以内に金塊を運び出そうとする。

 いくら時代設定が90年代とはいえ、セルビアを一方的な悪玉にするという単純すぎるお膳立てには閉口するしかない。確かにミロシェヴィッチは横柄な独裁者だったが、ナチスみたいに罪状が“確定”したわけでもない。敵方があまり頭が良さそうに描かれていない点は、かつてのスタローン御大主演の「ランボー」シリーズよりも酷く、まるで大昔の西部劇に出てくるインディアンと一緒の扱いだ。

 活劇映画としてのヴォルテージも、やたら低調である。冒頭の20分までは派手な場面が連続して退屈はさせないものの、あとはこれを上回るシーンは無い。中盤以降は暗い湖の底で全員がゴソゴソやっている様子が延々と映し出されるだけで、面白くもなんともない。

 5人のキャラクターは全然“立って”おらず、有り体に言えばどうでもいいような連中ばかりだ。演じるサリヴァン・ステイプルトンやチャーリー・ビューリー、ジョシュア・ヘンリーといった面々も、存在感は無い。上官に扮しているのがJ・K・シモンズで、こっちはさすがに貫禄はあったが、大きくドラマに絡んでくるところは無いので拍子抜けだ。

 「イントゥ・ザ・ストーム」(2014年)では及第点に達する仕事ぶりを見せたスティーヴン・クォーレの演出は今回は精彩を欠くが、これは原案と脚本を担当するリュック・ベッソンに責任があるのかもしれない。特に「グレート・ブルー」(88年)を思い出させる水中シーンを、何の工夫も無く並べているあたり、アイデア不足が窺われる。エリック・セラの音楽も、心なしか空しく響く。
コメント
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