元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「妖獣都市」

2017-11-24 06:40:58 | 映画の感想(や行)
 87年作品。「バンパイアハンターD」(2000年)などで知られるアニメーション監督、川尻善昭の実質的なデビュー作。表現方法は少々どぎついが(笑)、なかなか見せるシャシンではある。菊地秀行の同名小説(私は未読)の映画化だ。

 電機メーカーに勤める平凡な若手サラリーマンの滝蓮三郎には、別の顔があった。それは現実世界と魔界とのバランサーとして働く、闇ガードと呼ばれるエージェントだ。2つの世界の戦いは有史以来続いてきたが、ここにきて秘かに不可侵条約が結ばれる。



 その調印式のため、イタリアの伝道士ジュゼッペ・マイヤーが日本に招かれ、その護衛を蓮三郎と魔界側の闇ガードである麻紀絵が受け持つことになる。だが、この調印を阻止するため、魔界の過激分子は次々と刺客の妖獣を送り込み、蓮三郎と麻紀絵は激しいバトルを展開するハメになる。だが、一見好色で軽佻浮薄なジュゼッペ爺の真意は別のところにあった。

 残念ながら、蓮三郎にはあまり“愛嬌”がない。ニヒルなプレイボーイを気取ってはいるが、25歳という設定のせいか、突っ張ってばかりで余裕が感じられないのだ。これが一回り上の年齢ならば、多少のオヤジ臭さを加味しつつも(爆)スマートに振る舞えただろう。

 しかし、相手役の麻紀絵の造型は良く出来ており、セクシーでグラマラスながら、弱さと可愛らしさをも兼ね備えている。スケベなジュゼッペの言動も愉快だし、何より魔界の首魁および妖獣達の扱いには非凡なものを感じる。つまりは、幾分頼りない主人公を周りのキャラクターがしっかりカバーしており、鑑賞に堪えうるレベルに押し上げているのだと思う。

 川尻監督の仕事ぶりは実に達者で、メリハリの利いたスピード感はグロい描写も不快にならない。そして艶笑ギャグもしっかり入っていて、飽きさせない。アクションシーンもソツなくこなしている。終盤のストーリーの扱いはいたずらにカタストロフに陥らず、“前向き”な姿勢を見せているのも悪くない。東海林修の音楽と当山ひとみによる主題歌、そして屋良有作や藤田淑子、永井一郎、横尾まりら声優陣も頑張っている。
コメント
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