元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ANTIPORNO」

2017-02-26 06:30:15 | 映画の感想(英数)

 確実に観る者を選ぶ映画ではあるが、個人的には楽しめた。現役の監督たちが新作ロマンポルノを手掛ける“日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクト”の第四弾。監督は園子温で、まさに彼の変態ぶり(笑)が全面展開している怪作だ。

 女流作家の京子は、最初に登場人物の肖像画を描き、その絵に囲まれて個室で執筆を行うという奇抜な手法が人気を呼び、一躍有名になった。ところが分刻みのスケジュールにいらだつ京子は、マネージャーの典子を虐待してストレスを解消していた。その遣り口は徹底的にサディスティックで、典子に首輪をつけて部屋を引きずり回したり、取材に来たカメラマンなどに暴行させたりと、やりたい放題である。しかし、そこにいきなり“カット!”の声が。振り返ると映画の撮影スタッフが控えている。どうやらこれは映画の製作現場だったらしい。だが、今度はその映画の中の主人公の内面世界に物語が入り込んでいく。

 ストーリーはあって無いようなもので、全編これ登場人物達の絶叫気味のモノローグと、キレた映像処理と、極彩色の画面で覆い尽くされている。作者が好き勝手に撮ったシロモノと言うしかないが、これを並の監督がやると開巻間もなく息切れするか、あるいはその“好き勝手の度合い”が見切られて脱力するしかないだろう。だがそこは園子温御大。しっかりとイレギュラーなヴォルテージを保ったまま最後まで突っ走っている。

 まあ、本作に無理矢理主題らしきものを見出すとすると、歪んだフェミニズムということになるのだろうか。いくら作家として名が売れようとも、しょせん当人は若い女に過ぎない。突き詰めて言えば、世間の見る目は“売女あるいは処女”というレベルなのだ。

 そういうジェンダーの枠組みの中で必死に“出口”を探そうとするヒロインの葛藤を描出する・・・・といった感じか。ただ、園監督の作風に慣れている身からすれば、フェミニズムをダシにして一暴れしただけという、下世話な解釈も成り立ってしまう(笑)。

 主演の冨手麻妙は健闘している。まさに大熱演。パッと見た感じはアイドル風だが(かつてAKB48の研究生だったらしい)、エロティックな体付きを含めて、存在感はかなりのものだ。典子に扮した筒井真理子も凄い。年齢を感じさせないプロポーションには驚かされるが、極悪なオーラを振りまいてスクリーン上を闊歩するカリスマ性には感服するしかない。

 決して誰にでも勧められる映画ではないが、一連の“日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクト”の中ではそれなりに納得できる内容だった。伊藤麻樹による撮影も見事だ。
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