元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「牝猫たち」

2017-02-04 06:40:15 | 映画の感想(ま行)

 面白くない。アップ・トゥ・デートな題材を要領よく集めたつもりだろうが、どれもが消化不良に終わっている。現役の監督たちが新作ロマンポルノを手掛ける“日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクト”の第三弾。監督は白石和彌だが、「日本で一番悪い奴ら」(2016年)で見せたパワフルなタッチは影を潜め、何やら煮え切らない仕事ぶりだ。

 池袋にあるデリヘル店“極楽若奥様”で働く3人の女、雅子と結依と里枝は仲が良いが、実は互いのことをあまり知らない。住所不定の雅子をよく指名する高田は資産を持っているため食うには困らないが、長い間引きこもっていて、ネット上で見つけた“イタい奴”を潰すことを趣味にしている。結依はシングルマザーで小学生の息子が1人いるが、虐待していて仕事中も他人に預けっぱなしだ。お笑い芸人の谷口と仲良くなるが、クスリをキメたままの危険な性交渉にのめり込む。里枝には夫がいるが、浮気されている。彼女の常連客である金田老人は妻に先立たれ、孤独を紛らすために里枝と過ごす時間を唯一の楽しみにしていた。しかし金田は彼女の夫の存在を察知し、捨て鉢な行動に出る。

 ネットカフェ難民に幼児虐待、薬物問題にネット依存症、独居老人にワーキングプアと、現代の社会的病理をずらりと並べて悦に入る作者の得意顔が目に浮かぶようだが、残念ながらこれらの問題は断片的な小ネタとして扱えるほど“軽い”ものではない。じっくりと腰を落ち着けて撮っても、成果が上がるとは限らないほどヘヴィな素材だ。それらを十把一絡げにサッと流してみても、求心力は発揮できない。たとえ個々の描写に印象的なモチーフがいくつか存在したとしても、全てが単発的でドラマに絡んでいかない。

 テーマの配置に一貫性がないため、ストーリーも視点が定まらずチグハグなまま終わる。コメディでいきたいのかシリアス路線でいくのか、あるいはオフビートな作りで観る者を手玉に取るのか、とにかくトータルな“作戦”を練らないまま製作に着手してしまったような、居心地の悪さが終始付きまとう。成人映画では重要であるはずのカラミの場面だが、これも不発だ。少しもエロティックではなく、美しくもない。

 井端珠里に真上さつき、美知枝といった女優陣は演技が硬く、魅力に乏しい。しかも、揃いも揃ってグラマラスなボディとは正反対の体付き。監督の嗜好なのかもしれないが(爆)、個人的には受け付けられない。無意味に揺れるカメラワークにも閉口する。ただ、白川和子がチラッと出ていたのは少し嬉しかった。彼女が成人映画の“現役”であった頃をリアルタイムで知る世代に私は属してはいないが、過去のスターに敬意を払うという姿勢だけは評価してもいいだろう。
コメント
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