元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「フリージャック」

2017-02-19 07:06:21 | 映画の感想(は行)
 (原題:FREE JACK )91年作品。封切時には配給元の東宝東和が「ターミネーター2」に続くSF大作として売ろうとしたが、あまりにも小粒だったのでさほど話題にならなかった映画だ(製作プロダクションもそれほど大手ではない)。しかしながら無視できない程度の存在感はあり、作品規模にふさわしい公開形態であったならば、そこそこウケたかもしれない。

 売り出し中のカーレーサーであるアレックスは、レース中に別の車と接触して大事故を起こしてしまう。ドライバーは死亡したものと思われたが、実は事故の瞬間、18年後にタイムスリップさせられていた。その世界では環境破壊が進み、一部の金持ちが特殊な装置で別の若く健康な身体に自分の意識を移植して寿命を延ばしていた。アレックスもまたその“移植先の肉体(フリージャック)”として、ヴァセンデック率いる一味に過去から引っ張られてきたのだった。



 だが折しも勃発したレジスタンス組織との抗争の隙を突き、脱出することに成功。かつての恋人ジュリーのもとへたどり着くが、彼らはフリージャックを扱う大企業のCEOであるマッカンドレスから追われることになる。

 設定は悪くなく、ストーリーもまとまっている。危機一髪の状態から逆転する終盤の処理には文句はないし、未来世界の描写もソツがない。しかし、いかんせん監督ジョフ・マーフィ(「ヤングガン2」など)の腕が凡庸だ。作劇にメリハリがなく、ここ一番の盛り上がりに欠ける。

 加えて主演のエミリオ・エステヴェスは線が細い。敵の首魁に扮しているのがアンソニー・ホプキンスで、ヴァセンデックを演じているのがミック・ジャガーというのだから、目立てないのも当然か。そもそもジュリー役のレネ・ルッソよりも背が低いし、彼女やアマンダ・プラマーといった女傑的な面子とタメを張れるほどの偉丈夫でなければ、ドラマが締まらないだろう。

 なお、ヴァセンデックの役は最初デイヴッド・ボウイにオファーされたが、彼が断ったためにM・ジャガーにお鉢が回ってきたのだという。個人的には、せっかく出ているのだから一曲歌っても良いような気もするが、そこまでのサービス精神は製作側は持ち合わせていなかったようだ(笑)。なお、音楽を担当しているのはトレヴァー・ジョーンズで、しっかりと職人芸を披露している。
コメント
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