元・副会長のCinema Days

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「嵐の中で輝いて」

2017-02-17 06:36:50 | 映画の感想(あ行)
 (原題:SHINING THROUGH )91年作品。復古調のエクステリアでゴージャスな雰囲気を出そうとしたサスペンス編だが、演出と脚本が手緩いので盛り上がらない。大時代な雰囲気だけで作品を成立させようという方法論は、製作された時点においても通用しなかった。

 ドキュメント番組「戦時下の女性たち」の収録のため放送局に赴いた老婦人リンダは、司会者の質問に答えながら若い頃を振り返っていた。1940年、ヨーロッパではすでにナチスが台頭。だがアメリカはまだ孤立主義を貫いていた。リンダは弁護士事務所の秘書として働いていたが、学歴のない彼女が採用されたのは、父親がベルリン生まれのユダヤ人であるためドイツ語に堪能だったせいである。



 実は、彼女の上司エドワードは弁護士という肩書きは表向きで、正体はアメリカ軍の情報部の幹部だった。ドイツ軍の暗号を解読するためにリンダを助手として雇ったのである。翌年、アメリカは第二次大戦に参戦。リンダは自らスパイに志願してエドワードと共にベルリンに潜入し、ナチス高官に接近して軍事機密を手にしようとする。スーザン・アイザックスによる同名小説の映画化だ。

 とにかく、筋書きがいい加減である。ヒロインが窮地に陥ると、決まってエドワードが都合よく助けに来るというパターンの繰り返しだ。これではサスペンスも何もあったものではない。

 主演はメラニー・グリフィスだが、とても女スパイには見えない。もちろん本職のエージェントではなく、個人的な事情によって諜報活動に臨んだという設定なので、通常のエスピオナージ映画とは勝手が違うということは分かる。しかし、それにしてもハードなミッションに対峙する“覚悟”が感じられない。グリフィスの代表作は「ワーキング・ガール」(88年)だが、あの映画のように可愛くて強かな女を演じてこそ持ち味が出る。本作みたいな役柄は向いていない。

 エドワード役のマイケル・ダグラスは、いつもの通り。脇にリーアム・ニーソンやジョン・ギールグッドという渋い顔ぶれを揃えているわりには、ドラマとして有効に機能しているようには見えない。監督デイヴィッド・セルツァーの仕事ぶりは冗長。マイケル・ケイメンの音楽は及第点。特筆すべきは撮影監督としてヤン・デ・ボンが起用されていることで、深みのある映像は、確かに印象的ではあった。
コメント
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