元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「テラコッタ・ウォリア」

2014-12-28 06:57:32 | 映画の感想(た行)
 (原題:秦俑)89年中国=香港合作。この映画はとにかくスタッフ&キャストの豪華さに圧倒される。製作総指揮がツイ・ハーク、監督がチン・シュウタン、撮影がウー・ティエンメイ、主演がチャン・イーモウとコン・リー、さらに主題歌をサリー・イップが歌っているというのだから、中国と香港の優秀な映画人をすべて動員したような空前の顔ぶれである。当時は各地のファンタスティック映画祭で話題になり、香港では空前の観客を集めたという大作だ。

 古代中国で死者を埋葬する際に副葬された俑のうち、兵士をかたどった兵馬俑として葬られた男が、二千年の時を越えて現代に転生したかつての恋人に会うために動き出すという物語。中国のスタッフが多いとはいえ、これはもう完全な香港映画のノリである。



 前半の秦の始皇帝の時代を描く部分はもろ「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」。チャン・イーモウ監督作品ではあまり目立たなかったコン・リーの古風な美しさが十分に発揮され、特に主人公に不老不死の薬を口移しで飲ませ、自分は炎の中に消えていく、という官能的なクライマックスは、「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」のジョイ・ウォンもかくやと思わせるヒロインぶりで、堪能させられた。

 ところが、舞台が近代になる後半部分はなぜか居心地の悪い印象を受ける。前半と違って予算不足のためか、蘇った主人公が完全に浮いている。どうやら「レイダース」の線を狙っているらしいことがわかるが、演出がタルいため、あまり盛り上がらない。チャン・イーモウはこういう映画の主役には向いていないとつくづく思った。ルックスも冴えないし(失礼?)何よりアクションのキレが悪い。ここはやはり香港映画のアクション・スターをメインにすべきであった。豪華なスタッフが映画の出来には直接結びつかない例の典型だろう。

 それにしても日本に不老長寿の薬があるとは、いったいどういう理由でそういう伝説が出来たのだろうか(ラストシーンもそういう設定になっている)。映画の中身よりそっちの方に興味を持った。
コメント
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