元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「チェイス!」

2014-12-22 06:45:33 | 映画の感想(た行)

 (原題:DHOOM:3 )見かけは派手だが、大して面白くもない。理由は、全編アメリカでのロケにより外観が“インド性娯楽映画らしい野趣”が希薄になっているにも関わらず、作劇のスタイルは従来通りである点だ。そして、国内公開版とは違う短縮版であることも、不満が残る原因だろう。

 シカゴでインド式サーカス団を率いて人気を博しているサーヒルは、銀行強盗という裏の顔を持っていた。先代の団長であった彼の父親は、かつて銀行から融資を受けられずに命を絶っている。サーヒルの所業は、その復讐であった。現場に残された手掛かりにより犯人をインド系と断定したシカゴ市警は、ムンバイから敏腕刑事ジャイとその相棒アリを招き、捜査にあたらせる。対してサーヒルは大胆にも自分からジャイの前に現れ、逆にトリックを仕掛けるのであった。

 たかがヒンディー語で書かれた犯行声明ぐらいで犯人をインド人と決めつけ、警察がわざわざ本国から捜査員を招へいするなんてことは有り得ない。サーヒルの手口を具体的に描いていないことも不満だし、そもそも主人公のターゲットが(父親の死を招いた)特定の銀行だけという、私怨に基づいた動機なのであまり感情移入出来ないのが痛い。

 邦題が示すように、バイクによるチェイス・シーンは賑々しく盛り上げている。ただ、不必要に長い。公道での追っかけだけならばともかく、ロープを伝ってビルからビルに移動したり、バイクが水上を滑走するためにトランスフォームしたり、果ては水中にも活躍の場(?)を広げるに至っては、活劇を堪能する以前に呆れてしまう。しかも、終盤には不用意に場面が飛んでしまう不手際もあり、観る側としてはテンションが下がってしまう。

 ならばインド映画得意のミュージカルシーンはどうかというと、良く出来ているとは思う。サウンドやアレンジもスタイリッシュにまとめている。しかし、大半がサーカス団の出し物として展開されており、映画的な広がりには欠ける。

 いろいろと欠点を述べたが、もしも本作が従来通りインドで撮影されていたならばそれほどの違和感は覚えなかっただろう。ヘタに舞台をアメリカ等の国外に求めると、インド製娯楽映画特有の“神通力”(?)が発揮出来ないことがあることを作り手は知るべきだった。

 主演のアーミル・カーンは熱演で、大幅な肉体改造によって見栄えも良くなっている。ヒロイン役のカトリーナ・カイフは美人でダンスの切れ味も良いが、単なる“お飾り”の感があり、あまりドラマに絡んでこないのは不満だ。ヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤの演出はまあ水準という感じで、特筆されるものはない。本国版のロング・バージョンならばともかく、わざわざ劇場まで足を運んで観る価値は大きいとは思えない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする