元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「フィールド・オブ・ドリームス」

2014-06-29 06:38:02 | 映画の感想(は行)
 (原題:Field of Dreams )89年作品。素晴らしい出来映えで、この時期のアメリカ映画を代表する傑作だ。アイオワの片田舎、主人公レイ・キンセラ(ケヴィン・コスナー)はトウモロコシを育てる農夫だ。妻と10歳ぐらいの娘と3人で暮らしている。一見幸せな日々を送っている彼だが、17歳のとき衝突して家を飛び出し、とうとう死に目にも会えなかった父のことが今だに忘れられない。

 父は野球好きで大リーガーを目指したがかなえられず、その夢を息子のレイに託したのだが、レイはその重圧に耐えられず、家出したのだ。ある日、彼はトウモロコシ畑で“それを作れば彼がやってくる”という“神のお告げ”を聞く。

 “それ”とは野球場であると気が付いたとき、彼は1919年に八百長事件で球界を追放されたシカゴ・ホワイトソックスの名選手シューレス・ジョーらをよみがえらせるために途方もないことを次々に実行に移すのであった。



 トウモロコシ畑をつぶして作られた野球場に夜中、シューレス・ジョー(の幽霊)がユニフォーム姿で立っているシーンを見るだけでも胸が熱くなってくる。次々と現れる往年の名選手(の幽霊)たち。レイはこころざし半ばにして無念の涙をのんだ故人(あるいは生存している人もいる)の夢をかなえるため、アメリカ中を走り回って当事者をこのアイオワの野球場に連れてくる。

 その中には60年代に先鋭的な活動をしていて、今は挫折して世捨て人になっている黒人作家(ジェームズ・アール・ジョーンズ)や、若いときに1イニングだけ大リーグでプレイし、医者として余生を送った元野球選手(バート・ランカスター)もいる。

 とんでもない夢物語。でも感動してしまう。あることを望んで苦しんでいる人、あきらめている人、言いたいことも言えずに必死で我慢している人、そんな人(故人も)たちに彼らの夢をかなえてやるためエネルギーを出し切った勇気ある男の話だ。そんな彼を理解する妻(エイミー・マディガン)が素敵だ。そして“やればできるよ”という天からの声を聞く力を持つ娘の笑顔が嬉しい。

 ある朝、登校前に娘が見ているテレビの中ではジェームス・ステュアート主演の「ハーベイ」(1950年作品)が放映されていた。誰の目にも見えない幸福のウサギと仲良くなる男の物語だ。野球選手の幽霊たちも夢に生きるレイたちには見えるが、土地を売れと強引に迫る妻の兄ような俗物には決して見ることができないのだ。



 選手たちはトウモロコシ畑の中からあらわれる。そしてレイに尋ねる。“ここは天国かい?”。どこまでも青い空、風に搖れるトウモロコシの葉、アメリカ人が描くアメリカ人の原点ともいえる光景が映し出される。まさに天国的な美しさだ。

 そして終盤には、レイと父親との関係性がキャッチポールを通してクローズアップされる。このシークエンスは、もう手が付けられないほど感銘度が高い。

 誰だって子どものころ、キャッチボールをして遊んだはずだ。そして初めてのキャッチボールの相手は父親だ。“アメリカでは野球は受け継がれていくものなのだ。父が子に教え、その子が父となってまた子に教えていく。野球はアメリカの男たちの共通の遺産だ。そこには少年時代の思い出がたくさん詰まっている”(監督のフィル・アルデン・ロビンソンのインタビューより。キネマ旬報から引用)。

 映画の最後の最後に「For Our Parents」(この映画をわれわれの両親に捧げる)というメッセージが出るが、それも泣かせる。K・コスナーをはじめキャストは皆好調。ジェームズ・ホーナーの音楽も美しさの限りだ。
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