元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「壬生義士伝」

2014-05-14 06:30:15 | 映画の感想(ま行)
 2002年作品。浅田次郎のベストセラーの映画化で、監督は滝田洋二郎。新撰組の顛末を東北出身の構成員・吉村寛一郎を中心に描く。

 泣かせるシーンもないではないが、映画全体としてはまとまりに欠け、いわば不完全燃焼である。冒頭、明治時代の東京で佐藤浩市扮する老境の斉藤一が偶然出会う医師が吉村寛一郎ゆかりの人物だったことから、斉藤の回想形式でドラマは始まる。

 当然観客は吉村と斉藤という正反対の性格を持つ剣士の葛藤を核に物語は展開すると思うのだが、二人の絡みは早々に終わり、途中から三宅裕司演じる南部藩の幹部と吉村との関係をその少年時代から延々と描くようになるのだから、あのオープニングはいったい何だったのかと思えてしまう。



 さらに映画は吉村の家族をメインに置くようになり、ラスト近くの官軍との戦いの後、主人公の故郷に対する想い入れを必要以上に切々と綴ったりするのだから、ますます映画の中心軸が“挙動不審”になってゆく。吉村の息子や医師の妻を扱うエピソードも取って付けたようだ。最後はもちろん最初の斉藤の場面に戻るのだが、その時点ではすでにチグハグな印象しか残らない。

 監督の滝田洋二郎は(何度も何度も言っているが ^^;)本来は“おちゃらけ映画”と“サイコ・サスペンス”しか撮れない人なので、こういう素材は畑違いだと思われる。

 なお、主演の中井貴一は良かった。朴訥さと吝嗇ぶりの裏にある侍の心意気をうまく表現している。それだけに、あの(公開当時に各評論家がさんざん指摘していた)冗長な独白場面は惜しまれる。
コメント
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