元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

アナログ・サウンドは味がある。

2008-08-17 07:26:59 | プア・オーディオへの招待
 盆休み期間中、久々に実家のオーディオ装置でじっくりとレコードを聴く機会を得た。実を言うとこのシステムで聴く限り、CDよりもアナログレコードの方が音が良い。まあ、アナログプレーヤー関連にCDプレーヤーの倍以上の予算を投入しているので“良くて当たり前”なのだが(苦笑)、レコードが音楽ソースの主流の座をCDに明け渡してから約20年経つのに、使いようによっては現在でも立派な音を奏でてくれるのは、いかにこのメディアがある意味“完成されていたもの”であるかを示すものだと思う。



 私の使っているレコードプレーヤーはYAMAHAのGT-2000という機種だ。購入したのは80年代後半で、折しもCDが市民権を獲得しつつある中、私も“アナログプレーヤーの導入は、これが最後!”と見込んだ上で買ったものである。当時の定価は13万8千円とそんなに高価ではないが、YAMAHAがオーディオファンの要望を盛り込んで練り上げた自信作だけあって、コストパフォーマンスは非常に高い。まずこの値段で28kgという重量は今からでは考えられないだろう。音も地に足の付いたどっしりとしたもので、ソリッドな音像の捉え方には定評があった。

 また、本機にはマニア心をくすぐる数多くのオプションが用意されており、砲金製ターンテーブルやアンカーブロックなどを擁したフル装備になると物量投入型の大艦巨砲主義的なメカに成長するが、我が家にはそれを導入できるようなスペースがなく、入手することが出来たオプションはわずかなものである。その中でまず紹介したいのがDCパワーサプライのYOP-1だ(下の写真参照)。

 ノーマル仕様ではプレーヤー本体の停止スイッチを押してもターンテーブルは慣性で回り続け、手で止めることもしょっちゅうなのだが(笑)、YOP-1を併用すると停止時にモーターが手早く止まってくれた。それだけでも有用だが、さらに音の密度が増すという思わぬ効果もある。YOP-1は交流電源を直流に変えてモーターを制御するアタッチメントだが、以前よりレコードプレーヤーの電源は家庭用ACよりもバッテリーなどのDCの方が良いという説があり、その影響が出ているのではないかと感じている。

 吸着式ディスク・スタビライザーのYDS-1も手に入れたことがある。レコードとターンテーブルとの間に生じる僅かな隙間を、空気を抜き取ることによって排除しようという機器だ。これによってレコードとターンテーブルは一体化する。YDS-1(素材はアルミではなく砲金製)自体が相当な重量を持っていることもあり、音はさらに力強くスクエアーになった。ただし残念ながら後年ゴムの部分がボロボロになり、今では押入の奥に仕舞われている。もしも復旧できるのならば今でも使いたいアクセサリーである。



 アナログプレーヤーのメカニカルな印象を特徴付けるものにトーンアームがある。切っ先にカートリッジを装着した、文字通り“腕”のような金属製の(一部木製やカーボンファイバー製もあるが)棒である。GT-2000には別売りでストレート型のトーンアームも付けられたし、某評論家が考案した“リアル・ストレートアーム”(?)のようなものも商品化された。しかし、純正アームのクォリティにちょっと不満を持っていて、なおかつストレートアームはカートリッジ交換の際の使い勝手が悪いと思っていた私が買ったのは、SAECがGT-2000用に限定発売したWE-407/GTという機種だ。今はSAECはケーブルや電源パーツのメーカーだが、この頃は国内有数のトーンアームの作り手として知られていた。WE-407/GTの導入結果は圧倒的で、解像度が完全にワンランク上がった。アームでこうも音が変わるのかとびっくりしたものである。

 なお、カートリッジはOrtofon社製のMC型だが、そろそろ交換の時期が近づいている。とはいえ、月に数回しか聴かないのに大枚を叩いて更改する必要性があるのかどうか、実に悩ましい限りだ(笑)。

 GT-2000はロングセラーになった後、惜しまれつつ製造が終息したが、一時期限定で再生産されたことがある。ただしその時の定価は約20万円になっていた。現時点で復刻させると30万円以上にはなる・・・・と某ショップのスタッフが言ってたが、今アナログディスクを中級品CDプレーヤーより良い音で鳴らそうとすると、その価格帯が“出発点”になるらしい。レコードプレーヤーの使用者が少ないので製品の価格は往時よりも高くなるのは仕方がないが、それよりも現在でもアナログプレーヤーが製造・販売されているばかりかレコードの新譜のリリースがあること自体が驚きだ。CDが出回り始めた80年代には“早晩、アナログディスクは姿を消す”と言われていたものだが、容易に過去の遺物になってしまわないだけの、趣味性の高さが存在するということだろう。アナログの魅力については、思い出したときにでもこのブログに書いてみたいと思う。
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