元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「パルプ・フィクション」

2008-08-31 07:45:55 | 映画の感想(は行)

 (原題:Pulp Fiction)94年作品。“今や携帯電話を片手に強盗できる時代でどうのこうの”“フランスではチーズ・バーガーのことをチーズ・ロワイヤルっていうんだぜ。ほいでもってビッグ・マックはル・ビッグ・マックだ”“この時計がくぐり抜けてきた壮絶なヒストリーをキミに話そう”“聖書にはなぁ、こーゆーいいことが書いてある。ゆっくり聞いてから死ね”etc.

 ユマ・サーマンが“頭が固いのをスクエアーっていうのよね”と指で四角を作ると、宙に白い星があらわれてパッとはじける。身体中にピアスして登場するロザンナ・アークェット。ブルース・ウィリスの東映ヤクザ映画風日本刀の大立ち回り。ジョン・トラボルタのネチッとした、でも相変わらず上手いツイスト。いかついギャングのボスが得体の知れない店の奥に連れ込まれて味あう“男の苦しみ”。サミュエル・L・ジャクソン扮する殺し屋は足を洗って聖職者にetc.

 映画観てない人には何のことか皆目わからんと思うが、この映画の面白さを書こうとすると、どうしても断片的おちゃらけの羅列になってしまう。トラボルタとジャクソンの殺し屋コンビ、強要された八百長を蹴ったためマフィアに追われるブルース・ウィリスのボクサー。この2つのエピソードを中心に、画面を跳梁跋扈する濃いキャラクター面々をグランドホテル形式で描くクライム・コメディ。

 でも、スゴイのは各エピソードの時系列がバラバラで、それをジグソーパズルみたいにキチッと押し込むのではなく、純粋に見た目が面白ければそれでいいという感じでこれまたバラバラに繋いでいくその無謀さだ。特にラストを思わぬエピソードでシメているあたりは仰天した。大げさに言えば、これは永らく映画の定石とされている“フラッシュ・バック”に対するアンチ・テーゼなのである。

 そして圧倒的なセリフの面白さ! くだらないことをマジに追求していくバカさ加減が、いつしかそのキャラクターの根底に触れるような切迫さを加味していくそのスリル。もう引きつった笑いの連続で腹の皮がよじれそうだった。

 ユマ・サーマンの70年代テイストをうまく取り入れたファッション。ウィリスのGIカット。トラボルタのベトーッとしたちょんまげカット。ジャクソンのアフロ・ヘア。サーマンとトラボルタが踊るクラブ・レストランの50年代風インテリア。60年代サーフィン・サウンドの洪水。とにかくオイシイ仕掛けが満載なのだ。

 さらに映画ファンを喜ばせる過去の有名作品に対するオマージュもてんこ盛りだ。ボスの妻とギャングの関係は「コットン・クラブ」、スペイン系女性タクシー・ドライバーは「ナイト・オン・ザ・プラネット」、サーマンとマリア・ディ・メディロスは「ヘンリー&ジューン」の、ウィリスとトラボルタは「ベイビー・トーク」の共演の再現だが、その登場の仕方もひねっている。

 しかし、欠点もないとは言えない。ハーヴェイ・カイテル扮する“掃除屋”の出現は「ニキータ」のパクリだろうけど底が割れる感じで面白くない。監督クエンティン・タランティーノも出演しているが、あまり映画向きの面構えでもなし。突っ走る展開の合間にところどころ冗長な場面も目につく。好みから言えば前作「レザボアドッグス」の方をプッシュする。
コメント
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