元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「スターリングラード」

2008-08-19 06:28:44 | 映画の感想(さ行)
 (原題:Stalingrad)93年作品。ジャン・ジャック・アノー監督によるアメリカを中心とした合作による同名の作品(2001年)があるが、これはドイツ映画界の手によるシャシンだ。第二次大戦で、ヨーロッパ戦線におけるドイツの劣勢の発端になったスターリングラードの攻防戦を描く。この映画の監督はヨゼフ・フィルスマイヤー。公開作に「秋のミルク」(89年)があるが、可もなく不可もない出来で、テーマを追求するより無難に題材をまとめるタイプだ。したがって内容も全くの予定調和。

 ロシア人を虐殺するシーンや、ラストで登場人物が次々と死んでいく場面は、確かに悲惨で戦争のむごさを感じさせるが、過去のドイツ映画にはこれ以上の描写がいくらでもあったのだ。予算不足からか、わびしい雰囲気を感じさせもするが、戦闘シーンの迫力のなさは致命的で、少しもこちらに迫ってくるものがない。

 何やら、以前のドイツ映画のエッセンスをテレビドラマ風に要領よく並べただけのような印象である。名前に“スターリン”という文字が付いていたばっかりに、何の軍事拠点でもない街に大軍を投入したヒトラーの狂気と、それに従わざるを得なかった若い兵士たちの確執をじっくり描いて見応えのある作品にしてほしかったが・・・・。

 それでもドイツでは封切り当時としてはかなりのヒットになったという。それがまたその頃のドイツ映画界の低迷(80年代のニュー・ジャーマン・シネマ後の様相)を示していて、わびしい気分になった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする