BIKEBIND自転車日記ブログ2

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何人にも、何ものにも

2011-03-29 03:08:00 | ノンジャンル
春の甲子園があった。

そこに被災したばかりの東北高校の若者達の姿があった。

彼らはもちろんあの地震と津波のただ中にいた。話では欠場も考えられたという。当然だろう。実際、抽選会には彼らの姿はなかった。

しかし3月28日のグランドにナインの姿はあった。そして7対0で初戦で散っていった。理由は簡単、練習不足だ。選抜形式とはいえ、春の甲子園は強豪が揃う大会だ。そこに半月以上練習をせず、地元のために動き続けた彼らには肉体的にも精神的にも疲労があり、正直あまり勝機はなかったと思う。そしてそれは現実となった。

震災直後から自らも被災者であるにもかかわらず、地元のためにボランティア活動を行ったという。甲子園に行く直前まで。確かに若者の、しかも野球部のような体力のある人たちの力は貴重であり、欠かすことが出来ないのは仕方がないことだ。

それでも高校球児にとって甲子園はかけがえのない夢。そこにたどり着くまでの努力は如何ばかりか、凡人である私には計り知れない。それをさておけとは、とてもとても残酷な言葉だ。

だが状況が状況だけに、彼らはボランティアに身を投じた。ひょっとしたら不満もあったかも知れない。大人がすべきだと思っていたかも知れない。監督に言われたからかもしれない。それでも彼らはちゃんとその地域の一員として、男手としてきちんと役割を果たした。彼らはスポーツ選手でもあるが、コミュニティの一員であり、家族の一員であり、高校生でもある。その大切な根を無視せず、やり遂げ、そして甲子園に赴いた彼らには、もうひたすら頭を垂れるしかない。

そんな彼らに顔向け出来ないような大人がいる。プロ野球の開幕はお上が決めることではないとか、東京ドームの電源は昼だろうと夜だろうと消させないとか……。私は同じ大人として、日本人として恥ずかしくてたまらない。

東北ナインたちの5倍か6倍になろうかという人生を歩んだ人間達が、しかも球児ならあこがれるであろうプロフェッショナルの野球に携わる、いや実質取り仕切っている大人達がこんなに了見が狭く、浅ましい発言をするなんて。それを止めようと必死に動いたのが選手達で、他球団オーナー達は顔色をうかがい諫めもしない。一国の大臣に言われて初めて考え直すなんて……。小学生以下だ。

私が謝っても仕方がないが、謝らずにいられない。

確かにすべてを自粛すれば良いというものではない。それでも時期というものがある。もっと時間が必要だ。いつも通りに働くことが手助けになるのは、通常の仕事の人間だ。そもそもスポーツというものは、衣食足りた後のオマケみたいなもの。飢餓に生死に悩む人たちには、そんな余裕はない。特にプロというものはファン達の支えがあって成り立つはず。宮城にも岩手にも福島にもプロ野球ファンはいるだろう。それなのに……。

不安をあおる訳ではないが現実問題として、今回の震災はおそらく日本が経験したことのないほどの大事に発展していくだろう。価値観も、人も、街も、政策もすべて変わると予想される。いや変わらざるを得ない。これで変わらなかったら、ただの馬鹿だ。それは日本だけでなく世界にも言える。そんなときにこんな戯言をほざく輩は、もう手のつけようがない。ため息しか出ない。

ここは自転車のブログなので、彼らの目にとまることはないだろう。しかし記さずにはいられない。

あなたたちは何人にも、何ものにも負けていない。地元の人たちは、一時でもつらさを忘れられたはず。一部芸能人達の無責任な頑張れという言葉より、何百倍も価値がある試合だった。大切なものを切り捨てずに動き続けた、あなたたちこそが勝利者であるということを。


素晴らしい若者達の姿を、私は決して忘れない。


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