ウヰスキーのある風景

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走狗

2012-10-15 | 雑記
夏の間行っていた川に先日、久しぶりに立ち寄ってみた。

そもそも、町中をまっすぐ歩いて帰るより、空がよく見える(電線もないので)道を歩いて帰ろうというのが当初の目的だったのに、何故だか忘れて、このごろは商店街やら大通りを歩いて帰っていた。
これがなんだか疲れる。夏の間は浮浪者の如く、橋の下で寝ていたのだが、体の心から疲れる、という感じではなかった。

ところが、真っ直ぐ帰るのに近い状態になると、ひどく疲れる。帰ってからすぐに寝たとしても、三、四時間で目が覚めることが多いのは気にしてないが、ぐったりしていたものだった。

起き上がって風呂に入れば別になんともなくなるのに、億劫がって寝てしまい、次の日に余計疲れている、ということが多々あった。食べ物のせい、もあろうが、その前後であんまり変わってない。

あとは日差しか。夏は暑くてよく汗をかく。これがなくなったのも大きいだろう。


ただ、貧血気味と言われたので、このことを調べていたら、汗のかきすぎで鉄分が抜けて起こるタイプのものがあるらしく、どうやらかきすぎも原因だったようだ。摂取と排出の収支があわなかったと。
その上茶も飲んで。

以前、「食性に合わないものを食べてるでしょ?」と言われたときに、「茶の飲みすぎもあるかもしれませんねぇ」と、以前、コメントでやり取りしたが、食性に合わないもの=茶というわけで、間抜けなことをいったものだなぁと、今さら気付いたしだいである。

茶と貧血の話はまた後でやることにする。もしくは忘れてそのまんま。



夏の間は石ころだらけの川原も、秋、らしくない気候だが秋らしく、模様替えをしている。




この川原の四季折々の風景を眺め続けて来たわけではないので、こうなるとは思っていなかった。長らく、こういう、命のあるところは本来姿形を変えていく、というのを見なかった証左というわけである。

とはいっても、それが天然自然100%かどうかは判らない。天変地異の前触れかもしれないが、それも天然自然100%・・・と延々続きそうなので止める。



橋脚に腰を下ろして、途中で買ってきたおやつを食べていた。おやつはパンである。また性懲りもなく!



坐っている所から見える土手に、警察がバイクでやってきた。バイクを止め、こちらの方を確認して、橋の下をくぐる坂道へと姿を消した。


「やっぱりこっちくるのかねぇ」と思っていたら、案の定やってきた。こんな歩きにくいところによく入ってきたもんだなぁという感じの呟きと、少々にこやかな笑顔をたたえている。


「昼食のところ申し訳ないが」という。いや、おやつだ、とは思ったが言わなかった。

なんでも、同じ川原の下流のほうの橋(その場所からそれほど離れてはいない)の下で、ナイフを持った男が現れたという。

この辺りを警戒しているもので、荷物を検めさせて欲しいという。


風呂敷の鞄は解くと結ぶのが面倒なので、荷物は腰掛けているセメント部分に取り出して見せた。


すると、キセルを入れてあるカマスに気付き、「この扇子のようなものは?」と問いかけてくる。


解いて見せながら「キセルですよ」というと、何故だか警察官がちょっと楽しそうにし始めた。


何でも、渋谷にあるというタバコの博物館に行ったりして、最近勉強中だそうな。


チェ・シャグのパックを見て、「このタバコ知ってますよ」と。いくらだどこで売っているんだと、そんな乱暴な言い方じゃないが訊ねてくる。


「キセルはどうやって吸うんですかね」ともいうので、タバコ好きの誼として、実演することにした。


荷物もあらかた調べたので(タバコの話の方が多かったが)、警察官は帰っていった。帰り際に「私もキセル買います!」と言い残して。


バイクに乗るところを、タバコを吸いながら見るともなく見ていたら、会釈をしてきたので、こちらも坐ったまま返した。



彼がキセルを買うのかは判らない。また同じところで同じ警察官に会うなんてことは無いほうがよい。

そういえば、キセルの長さとそれぞれの長所短所も教えればよかったか。まあ、あちらさんは仕事中である。そもそもこっちは用がない。



ついでに。


たまに撫でている犬がいる。小さな門には「犬を放しているので用がある方は声をかけてください」と手書きの札が垂れ下がっている。


門の前に立ち、その犬がこちらに気が付くと、表情を変えて近寄ってくる。耳が寝るのである。

小さな門扉は、針金で括ってとめてある程度で、押したり引いたりすると動いてしまう。

犬は飛び出したいのか、間からを鼻面を突き出してこちらを嘗めたかと思うと、身を捩じらせて門扉をきしませる。


そんなやり取りを数度繰り返して、そこを立ち去るのだが、車を通すほうの門もあって、わざとそちらに誘導させる。

最初のやり取りが短いとすぐにそちらにやってくる。案の定やってきた。

じゃあ、頭軽く撫でて、「バイバイ」とやろうとしたら、急に吼えて走り出した。

こちらから右手には、盛り上がった土手へ向かう坂がある。その坂を昇っていく自転車と、一緒に走る犬の姿が。


かの犬は追いかけ、庭の奥に姿を消した。



犬はやっぱり狗なんだな、などと思うのであった。



長くなったので、予定通り茶と貧血の話は無しで。では、また。