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ヒトは鯨の友達だった?

2008-03-01 | 日記風
エレイン・モーガン女史の「人は水辺で進化した 人類進化の新理論」を読んだ。これはアリスター・ハーディ博士のアクア説を新しい発想も入れて支持したものだ。最近長い間人類進化についての本を読んでいなかったので、アクア説という新しい進化理論を知らなかったので、驚きとともに楽しくこの本を読むことが出来た。

 エレイン・モーガンのこの本は、前著「女の由来-もう一つの人類進化論」に続くもので、前著は人類進化における女性の位置という視点も加えてアクア説を紹介したもので、それはベストセラーになったという。私はアクア説そのものを知らなかったので、この本も読んだことはなかった。

 人類進化のアクア説とは、類人猿から人類が進化で別れるときに何が起こったのかといういわゆる「失われた環」についての推論である。人類進化のこれまでの主要な説は、「サバンナ説」であった。森林から何らかの理由で降りざるを得なかったヒトの祖先がサバンナという草原に生活することによって二足歩行や武器の使用を発達させて人類へと進化したというのがサバンナ説である。

 一方、アクア説とは人類は森林から草原を経ないで直接浅い水辺に降りて、海の生き物を食べていたというもの。水の中に入って貝や魚を捕っているときに、水の中では餌を食べるのに立ち止まって二本足で立つことを容易に覚えたというのである。その証拠がヒトの無毛性。陸上の哺乳類で体毛を無くした動物はヒト以外にいない。しかし、海に住んでいる哺乳類は鯨・いるか類、ジュゴンなどの海牛類などがみんな体毛を無くしている。また、体毛の並び方はヒトは類人猿類とはまったく違う体毛の並び方をしている。その並びは泳いでいるときの水の流れに見事に一致しているという。また、顔を水につけたときにヒトは血中酸素の消費量が著しく減少する「潜水反射」という現象を持つが、同じような現象を持つものは陸上動物には居ない。やはり海産の哺乳類に同じ反応を持つものが多い。

 極めつけの証拠はヒトの性交姿勢。腹と腹を合わせて対向姿勢で性交するのは陸上の動物にはヒト以外にはあまり居ない。しかし、鯨も海豚もジュゴンも対向姿勢で交尾する。水の中に棲む動物にとってはこれがもっとも効果的な交尾姿勢らしい。

 そんなこんなを考え合わせると、人類は類人猿から別れる際に一度浅い海に住むように適応して二足歩行などを獲得してヒトへの道を歩き始めたらしいというのが、アクア説である。ヒトはその後何らかの理由で陸上に戻ったのだ。アクア説では、これらの進化の事件が起こったのは北東アフリカの一部で、そこでは海進時に陸が海になり、ヒトが生まれた後に今度は海が無くなって陸地化したことが地質学の研究から分かっている。そこで人類は始まっただろうという。しかし、その時期(350万年から1200万年前)のヒトの化石はまだどこからも見つかっていない。最初の人類と考えられているオウストラロピテクスの化石は350万年前からだ。

 人類の歴史を一冊の本から思い起こす楽しい時間を過ごさせてもらった。