ハワイ生まれのアメリカ陸軍現役将校アーレン・ワタダ中尉が、イラク派遣を拒否した。彼は「侵略に値する罪もないイラク国民への不法で不道徳な戦争に荷担することを拒否する」と声明を出した。一説によると、約7900人の米軍兵士がイラクへの派兵を拒否しているという。しかし、将校による拒否は初めてとのことだ。
ワタダ中尉の行為に、アメリカ軍当局は立件・起訴の準備を進めているらしい。アメリカ国内でイラク戦争の不法性を指摘し拒否したワタダ中尉に感謝し、彼を支持する運動が広がっているらしい。
ワシントン州のオリンピア港からイラクへ向けてワタダ中尉らの隊が使用する予定のストライカー戦車を積み込むことに反対し、市民たちが2週間にわたってデモや座り込みで積み込みを阻止してきたことが伝えられている。多くの逮捕者を出して、積み出しは終わったが、市議会では抗議の公聴会が開かれた。報道は、キング牧師の「悪への非協力は、善への協力と同様に、我らの道義的義務である」という言葉を引用して、彼らの行動を褒め称えた。
ベトナム戦争の時に、米軍相模原廠からの戦車の搬出を途中の橋で交通法違反を楯に阻止した市民運動のことを想い出す。あの当時のベトナム反戦の熱気がいまアメリカ国内に広がりつつある。
日本はどうなのだろうか。2003年の自衛隊のイラク派遣の時に、事実上の派遣拒否(配置転換)をした隊員は52人だったそうだ。彼らに自衛隊内部でどのような扱いがなされているのだろう。自衛隊内部の自殺者が、00年度73人、01年度59人、02年度78人、03年度75人、05年度94人と増え続けている。隊内における陰湿ないじめが横行しているという。派兵拒否をした隊員がどのような境遇にあるか、心配だ。
ワタダ中尉(日系三世)の声明を良く読んで欲しい。
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声明
アーレン・ワタダ中尉
2006年6月7日
家族、友人、信仰心篤い地域のみなさん、マスコミのみなさん、そしてすべてのアメリカ人同胞のみなさん。本日はおこしいただき、ありがとうございます。
私はアーレン・ワタダと申します。アメリカ合衆国陸軍中尉であり、3年間服務しています。
合衆国陸軍の将校として、重大な不正義に対して声を上げることは自分の義務であると考えます。私の道徳と法的義務は、憲法に対するものであり、無法な命令を下す者に対して負うものではありません。きょう私がみなさんの前に立つのは、兵士たち、アメリカの民衆、そして声を上げることもできない罪なきイラクの人たちのために何かを行い、彼らを守ることは私の任務だと考えるからです。
米国軍隊の将校として、イラク戦争は道義的に過ちであるばかりでなく、合衆国の法をも手荒く侵害する行為であるという結論に達しました。私は抗議のために退役しようと試みましたが、にもかかわらずこの明白に違法な戦争に加わることを強制されています。違法行為に参加するようにという命令は、間違いなくそれ自身が違法です。
私は、名誉と品性を重んじる将校として、この命令を拒否しなければなりません。
イラク戦争は、抑制と均衡というわが国の民主的システムを侵害しています。この戦争は、憲法の規定によってアメリカの国内法と同等とされる国際条約や国際的慣習に違反しています。ほとんど満足な説明もなされていないイラク民衆への大量殺戮と残虐行為は、道徳的に重大な誤りであるにとどまらず、陸上戦に関する軍事法そのものの違反行為でもあります。この戦争に参加すれば、私自身が戦争犯罪の片棒を担ぐことになるでしょう。
平常であれば、軍隊にいる人間も、自分の思うことを話し、自分の利益になるよう行動することは許されます。そうした時代は終わってしまいました。私は上官に対して、われわれの行動の意味するところを大局に立って判断するよう求めました。しかし、まっとうな回答は得られそうにありません。私は将校に就任するとき、アメリカの法と民衆を守ることを宣誓しました。違法な戦争に参加せよとの違法な命令を拒むことにより、私はその宣誓に従います。
ありがとうございます。
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すばらしいアメリカ人がいたことを驚き、感動します。