ミンダナオの小さな町マリタには、市場が一ヶ所、食堂が数カ所、小さな大学が一つ、他には見るべきものもあまりない。それでも人の数は多い。通りには人が群がっている。ところどころ日本風なもしくは中国風の装飾を持った古い木造の家がある。先の戦争が終わってもう60年が過ぎるというのに、これらの建物は敗戦前のころの日本人が作った家だという。それら古ぼけた家も周りの粗末な家の中にあればそれほどの遜色はない。
ダバオ湾に面した砂浜が南北に続いており、砂浜に面した海岸には、ニッパ椰子の葉で屋根を葺いた粗末な家が並んでいる。海岸にあるのはほとんどが漁師の家だ。船は板を貼り合わせて作った細長いもので、小さいものでは人が座ると左右に余裕はない。前後に二人のってそれぞれが櫂を使って船をこぐ。特徴的なのはカタマラン方式で船の左右に安定させるための長い棒を伸ばしていることである。大きい船はエンジンを持っているが、普通の漁師は手こぎの船で沖に出て釣り糸を垂らして一日魚を釣っている。子供も女も漁を手伝う。
海岸にはダバオ湾の向こう、太平洋から直接押し寄せる波が打ち寄せており、12月は波が高い。寄せては返す大波がザザーッ ドドーン と大きな音をひっきりなしに立てている。そのために、海の水は砂を巻き上げて濁り、透明度が低い。熱帯の海という言葉から受ける印象とは異なっている。また、海岸の砂は砂岩や花崗岩からなり、椰子の葉陰と白い砂という熱帯の海の印象ではない。それというのも、この海岸ではサンゴ礁の発達が悪い。海岸に沿ってわずかにサンゴのリーフがあるが、それも塊状のサンゴがほとんど、美しいミドリイシ類の鹿角状のサンゴはまったく見られない。それでも海岸には背の高い椰子の木が連なっており、南国の風景ではある。(続)
ダバオ湾に面した砂浜が南北に続いており、砂浜に面した海岸には、ニッパ椰子の葉で屋根を葺いた粗末な家が並んでいる。海岸にあるのはほとんどが漁師の家だ。船は板を貼り合わせて作った細長いもので、小さいものでは人が座ると左右に余裕はない。前後に二人のってそれぞれが櫂を使って船をこぐ。特徴的なのはカタマラン方式で船の左右に安定させるための長い棒を伸ばしていることである。大きい船はエンジンを持っているが、普通の漁師は手こぎの船で沖に出て釣り糸を垂らして一日魚を釣っている。子供も女も漁を手伝う。
海岸にはダバオ湾の向こう、太平洋から直接押し寄せる波が打ち寄せており、12月は波が高い。寄せては返す大波がザザーッ ドドーン と大きな音をひっきりなしに立てている。そのために、海の水は砂を巻き上げて濁り、透明度が低い。熱帯の海という言葉から受ける印象とは異なっている。また、海岸の砂は砂岩や花崗岩からなり、椰子の葉陰と白い砂という熱帯の海の印象ではない。それというのも、この海岸ではサンゴ礁の発達が悪い。海岸に沿ってわずかにサンゴのリーフがあるが、それも塊状のサンゴがほとんど、美しいミドリイシ類の鹿角状のサンゴはまったく見られない。それでも海岸には背の高い椰子の木が連なっており、南国の風景ではある。(続)