コレクション展8日目

2017-12-10 | 日記

             

日曜日の展覧会々場はやっぱり静かな時間だった。なので、先日、友人・武士俣隆一君から送られて来た自著『 繭からの出発 ジョゼフ・コーネルの断片とともに 』( 菜の花舎2017年12月刊 35部限定 ) を読んでいた。白い表紙のソフトカバーに包まれた芳醇な言葉の数々に、午後の誰も来ないギャラリーで一人酩酊するのだった。実際、新鮮なポエジーのある文章なのである。彼のコーネルを見る眼差しが「コーネルとともにある」のである。彼は、いわゆる今の “ 美術評論家 ” たちがとっくに忘れてしまった一つの大切な視点を持っている。それは彼の文章から引用したほうが早いから、下記にその序文から引用してみる。

本書はモノグラフィーとしてまとめることを意図したものであるが、しかしいわゆる『ゴッホ評伝』と言ったような、一人物の誕生から晩年に至るまでの作品を時系列に並べて解説を加えたようなものではない。だからといって、個人の感想を自然発生的につづったものでもない。私が描きたかったのはいわば “ エッセンス ” である。

そして本論をこう結ぶのである。

素材のあたたかみにふれ、自然そのものから学ぶことで精神が満たされていき、言語がそこから果実のように静かにふくらんでいくようなコーネルの進みかたは、われわれが長い間、忘れていたものである。そこにたしかにあるものは、生の治癒力と呼びたくなるようなものではないだろうか。

そして、僕はこの白いソフトカバーの本を、いつか白い革装のルリュールをしてもらいたくなったのである。