コレクション展10日目 

2017-12-12 | 日記

           

掲載した本『 JOSEPH CORNELL 』は1978年に当時、日本橋にあった雅陶堂ギャラリーから発行されたもので、写真はその本の扉の部分である。表紙は深い森の色である。これはジョゼフ・コーネルの展覧会カタログで、そしてこの序文を瀧口修造が「時のあいだを」という題で書いている。その詩のような文を紹介しようと思う。短いので全文をここに書き写してみる。

ほとんどふたつの時間、いわば時と時とのあいだを歩くのに、あなたはまる一生かかった。… 人には見えず、時空を旅する鳥たちの時間、過ぎ去った遥かな国の物語も、星辰の運行とともに現存する時間 … もうひとつの時とは、生れて住みついた土地と生活の時間、霧と煙り、水と血液、パンとミルクの時間、おそらく手や顔の皺の時間でもあろう。あなたが狷介な孤独者のように見られたとすれば、なんと愛の充溢のためだ。秘密はあなたが遺した窓のあるハコとイメージのかずかず、実は未だ名付けようのない物たちのなかにある。まるで天からやって来た職人の指紋の魔法か。しかし秘密はまだ乳いろの光につつまれている。こんなに身近な親しさで。かつてマラルメが詩のなかに ptyx という謎の一語でしか表さなかった、捉え難い虚空の貝殻とも断じえないものを、何ひとつ傷つけず、あなたは時の波打際で手に拾い、視えるようにしてくれた。風のいのちのシャボン玉とて例外ではない ……。