秋の名残り

2012-12-08 | 日記

                   

川原の石組みの間に密集する苔。ランナーのようだ。秋のある日の午後、近くの一級河川まで散歩に出た。ウォーターフロントの組まれた石の、その隙間を苔のグリーンが鮮やかに埋めている。清流は空を映して青く流れる。遠く近く山並の紅葉は一段と空に映えていた。爽やかな秋の日は流れも早く、影ばかりを残して暮れて行った。気が付けば、季節はいつの間にか移って行った。今日もミゾレのような雨が降った。時折、雷鳴も轟いた。夜、外に出てみると空には冬の星座がきらめいていた。雲の動きが抜群に速い。寒風にわが身をさらせば、人生の速度も以下同文である。

       

   やさしい鳥が窓に衝突する。 それは愛人の窓である。

   暗黒の真珠貝は法典である。 墜落した小鳥は愛人の手に還る。

   蝸牛を忘れた処女は完全な太陽を残して死ぬ。 舞踏靴は星のようにめぐる。

   ( 『 瀧口修造の詩的実験1927-1937 』 より 「 ポール エリュアールに 」 から抜粋 )

 

いつか去るであろう自分の人生が、この地上から去ったからと言って、なにも嘆くことはない。残された愛用した “ 舞踏靴 ” が星々のように永遠をめぐるのである。