アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

福島章恭氏のブルックナー演奏

2015-08-19 20:00:00 | 音楽/芸術

ここのところ福島氏によるブルックナーの第8を何度も聴いている。実際CDを手にしたのは今年の1月だから、それなりに時間が経ってしまったが、この盆休みにかけて集中できたので少し触れておきたい。

福島氏については今まで知らなかったが、CDの解説によると音楽評論家であり、また合唱の指揮者でもあるという。これだけ聞くと宇野功芳氏とダブってしまうが、年齢は随分お若く、むしろこのアントンKとの方が近いくらいだ。

さて、肝心な演奏の方はというと、実に見事で素晴らしいのである。少なくとも新星日本響を振った宇野功芳指揮のCD(PCCL-162)の演奏よりこちらの方が上だ。演奏を通して言いたい事がビンビンに伝わってくるのである。福島氏は、幼少の頃からブルックナーに傾倒し、専門家の目で数々の演奏を聴き、そして宇野氏の影響も多分に受けたようであるのだが、音楽で最も重要な独自性が全曲を通して感じられた。これはブルックナーの音楽を壊すと思われがちだが、人間の奏でる音楽であるから、当然そこには血が通っていなければならない。人によって熱くなったり冷めたりは、至極全うであること。楽曲から福島氏の息づかいが読み取れるような感覚をもった。各楽章とも、新しい発見があったが、何と言ってもフィナーレの展開部以降の白熱振りはどうだろう。聴いていて熱くなったのは久しぶりのこと。そしてコーダの深遠で、かつ雄大な表現は、朝比奈の響きそのものであった。朝比奈隆晩年の演奏ではなく、最も脂の乗った時期の、そして最も好みのジャンジャン盤の時代である70年代の演奏を思い出した。

どうしても、アマオケであること、そして一発採りのライブであることから演奏には傷があるし、緊張感に欠く箇所も散見できたが、何回も聴けてしまうCDで、それを言うのはお門違いのことだろう。気持ちのない完璧な演奏より、多少の傷があっても心の通った演奏の方がどんなに心が充実することか。やはり実演に接しなかったことが悔やまれるのである。生演奏だったら、どんなに良かったろうと・・・

CDは2枚組の構成になっているが、第1楽章で2枚目に移る構成はマーラーのLPを聴いているようで好ましくない。ここはブルックナー以外の楽曲は省略して1枚に収めるか、前半、後半で割った方が良かったように思う。今回の第8がプロジェクトの第1弾とのことだから、さらに今後もこの企画は続くということであろうし、大いに期待して次を待ちたいと思う。第5や、第3など想像するだけで今からワクワクしてしまう。

福島章恭氏、今後目が離せない。

 

ブルックナー交響曲第8番 ハ短調(ハース版)

ワーグナー 楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲

バッハ 2つのVnのための協奏曲ニ短調 BWV1043

福島章恭 指揮

愛知祝祭管弦楽団

Vn  古井  麻美子

Vn  清水 里佳子

OAF-1410