アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

レミ・バローのブルックナーについて

2014-10-08 18:00:00 | 音楽/芸術

気になるCDが最近発売されたので、購入し繰り返している。楽曲は、例によってブルックナーだが、交響曲の第3、それも第一稿の初稿版である。ブルックナーのシンフォニーの中でも、第3は最も問題作とされているが、それは、何度も改作されて楽譜がいくつも存在することに起因する。特に今回の初稿版は、「ワーグナー」との表題からもわかるように、ワーグナー自身のモチーフが散りばめられており、小節数も他の版より圧倒的に長く、また演奏自体も難しいと言われている。

今回のCDは、この初稿版での演奏だが、CDのクレジットには、「演奏時間86分の長大な解釈・・・」とあった。中の解説文を読んでみると、指揮者のレミ・バローという人、かつてチェリビダッケの指導を受けて、かなり影響を受けている内容ということ。まさに、チェリの再来か?とも言わんばかりだったので、ワクワクしながら聴いてみた。

まだ数回しか聴けてはいないが、その中身は、やはり似て非なるもの・・・

ライブの録音場所は、ブルックナーゆかりのザンクトフローリアン修道院。76年朝比奈が大阪フィルとともに第7を演奏し絶賛を浴びた聖地だ。もちろん行ったことがないので想像でしかわからないが、残響が7秒とも、9秒とも言われ、かなり長めの響きが形成される。ここでの演奏は、当然ゆっくり目の演奏になるわけだ。このレミ・バローの演奏も、第1楽章の出からして悠然と進めていく。そして全体を通してこのテンポ感は不動のようだ。しかし、このテンポのおかげで、オケの各声部が良く聴き取れる一方、録音条件なのか、全体のトーンがボケていて、甘く聴こえてしまい、しっくりこないのが正直なところ。このCD、演奏内容はともかく、録音の状態でかなり損をしているように感じてしまった。

確かに、この第3交響曲の初稿版には、今や何種類かのCDが存在しており、昔を思えば随分と贅沢な時代になったと感じるが、その中では、今回のレミ・バローを選ぶ理由は見当たらない。初稿版と言えば、インバルを上げたいし、すっきりとしたケント・ナガノや、何と言ってもティントナーを忘れてはいけない。まだ指揮者としても若いレミ・バロー。将来のブルックナー指揮者として、世界から注目を浴びる存在までの成熟を願っている。

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 ブルックナー 交響曲第3番 ニ短調 (第一稿)

レミ・バロー指揮

セント・フローリアン・アルテモンテ交響楽団

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