アントンK「趣味の履歴簿」

趣味としている音楽・鉄道を中心に気ままに綴る独断と偏見のブログです。

スクロヴァチェフスキ/読響の好演

2014-10-29 18:00:00 | 音楽/芸術

先日も同じプログラムを続けて2回聴いてきた、スクロヴァチェフスキと読響のコンビ。この組み合わせは昔から良く実演には接してきたつもりだが、どれもブルックナーのプログラムばかり。もっともそれを狙って足を運んでいるから当たり前の話だが、今回たまたまコンサート会場で販売していた、このコンビのCDを入手し聴いてみた。

ショスタコーヴィッチの第5がメインのこのCD,うわさ通りの物凄い内容だった。日本では、昔からショスタコというと第5ばかり採り上げられる。まあ確かに良い楽曲には違いないが、実演ではいつもこればかりでは少々うんざりしていたこともある。ロジェストヴェンスキーの怪演を頂点に今まで結構実演には触れてきたが、最近では数年間遠ざかっていた。アントンKにとって、今では第5なら第7だし、愉快な第9や、問題作と言われる第12なんて実演を聴いてみたい。

まあそんな中のこの第5のCDだ。ミスターS氏の細かな解釈は容易に想像できたが、その想像を大きく飛び越えた演奏内容であったので、ここに記しておく。

演奏は、ひと昔前のドイツ流とでも言えるだろうか。テンポは第1楽章の出からじっくりとして重厚、ロストロポーヴィッチの指揮振りを思い出してしまった。全体を通してこの解釈は貫かれているが、デフォルメも多い。しかしそれが、少しも変ではなくこの楽曲とマッチしていると思えるから非常に心地よいのだ。おそらくパート譜にも細かな指示の書き込みがあり、それを徹底させている雰囲気だ。弦楽器群のテヌート、スラーのメリハリ、滑るようなクレッシェンド、木管群の愉快でおどけた表情、そしてティンパニの強調。そして何と言っても、ミスターSの各所における自然な溜め、間、とでもいうべきか。これが決まっている。そしてこの演奏の最大の聞かせどころとも言うべき第4楽章。NHK-FM時代から尊敬すべき金子氏も言っておられたが、コーダに入る手前の解釈は、臨界を越えている。こんなリテヌートはかつて聴いたことがない!終結部のティンパニも含めて、これほど巨大な第5は今まであっただろうか。

とにかく、今年91歳を迎えたスクロヴァチェフスキ。この演奏からは、とても年齢は想像できないのだ。是非とも来年も来日して頂き、我々ファンに超ド級の演奏を聴かせてほしい。今から切に願っている。

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ショスタコーヴィッチ

交響曲第5番 二短調 OP47

ベルリオーズ

愛の情景 OP17より

スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮

読売日本交響楽団

COGQ-70  2013-10-06 みなとみらいホール(ライブ録音)