風雅遁走!(ふうがとんそう)

引っ越し版!フーガは遁走曲と訳される。いったい何処へ逃げると言うのか? また、風雅は詩歌の道のことであるという。

黄昏オン・ザ・ロード(4)/流れ星と三日月の街

2005-11-29 23:46:02 | 東京暮色/秋~初冬
onjuku_moon撮影が終わって寺へ戻ると、厨房に灯りが点っていた。住職一家が帰ってきたばかりのようだ。
あいさつもそこそこに住職はテキパキと部屋を指定してくれ、布団をあそこから何組もってきなさいと指示してくれる。ボクが電話で話しておいたにしても、自分の荷物の片づけもそこそこに、こちらの心配をしてくれるのだ。
その上食事の心配もしてくれるので、いや足(車)があるので食べに行きますと言うと、そうだね、温泉にも入りたいだろうからと言って適格な地図を描いてくれる。描き慣れた正確で分かりやすい地図であった。

で、今回は御宿(おんじゅく)に出てみることにした。「クアハウス御宿」というところを教えてもらったのだ。
疲れたボクは運転をカメラ担当のホッシーに代わってもらった。それに、風呂上がりにはやっぱりキュッとビールを飲みたいではないか!
ホッシーは快く運転をひき受けてくれた。それで、ホッシーは幸運の流れ星を運転中に見ることができたのだ。「ね、願いことはした?」「いや、見るだけで精一杯で……」「いや、でもラッキーだね。これで、キミは「流れ星のホッシー」だ! なんか、大昔の日活アクション映画みたいだけど(笑)。韻をふんでるからねぇ。ラッキーだよ。流れ星のホッシー!」

ボクは、さらにたたみかけた。「御宿かぁ! オン・ザ・ロードならぬ、オンジュク・ロードだね! それに、御宿・オン・ザ・ロードなんて、なんかケラワックというよりつげ義春のマンガ作品みたいだ!」
この、もはや点火され火花がついたジョーク路線はさらに風呂上がりまで、続くのだ。

加熱はしてあるが、源泉掛け流しの温泉はやはり真っ黒なヨード分がたっぷり溶け込んだ湯だった。男三人で貸しきりのようだったが、まるで痩せこけた少年二人と少年のような中年おとこがひとり、広いとはお世辞にもいえない浴場で、それでも寝湯、うたせ湯、泡風呂、箱蒸しと種類だけはそれなりにある湯をグルグルとめぐっている。

裸のつきあいでというよりすっかり地をむきだしで普段の顔に戻った三人は、女湯から出てきたただひとりの女性であるナカノに笑われてしまう。
「あ! 普通のカオだ!」

外へ出ると、ずらりと三日月が列をなしてボクの目に飛び込んできた!
「ありゃ、この街の街灯って三日月のかたちをしてるよ!」「あ、本当だ!」
みな、そこではじめて気付いたようだった。
そこでボクは思い出した。この街の砂浜が「月の沙漠」などというロマンチックな観光客用のキャッチフレーズがつけられていたことを。
あとで、調べてみたらこの温泉の目の前すぐのところだったのだが、ボクと日本映画学校のクルーはウキウキと風呂上がりの高揚した勢いをかって今夜の夕食を食べられるところを探しにいったのだ。

流れ星と三日月の街へ! 「月の沙漠」のある街へ!

(写真4)すこし滲んでしまいましたが、御宿の街の三日月街灯です。


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