今朝起きてみたら東京は雪国になっていた。深夜から降り出した雪は予報通りまたたくまに降り積もって、一面の白銀の世界が現出したのだ。立春がすぎたばかりで春もまじかと思っていた矢先だった。それでも、昼間、おもったより気温は上がらなかったのだが、朝までの白い世界はまたたくまに溶けていってしまった。首都が雪国になったのは、半日程であったらしい。
寒いのは嫌いだが(なにしろ九州生まれである)、一面の銀世界は好きだ。この世界が無垢に包まれるように感じるからだ。
かって(というか、もう大昔なのだが)このボクのことを好いてくれた少女が居て、彼女は北国の生まれだった。名前しか知らない、その街に真冬にヒッチハイクでたずねていったことがあって、ボクは凍死しそうになったことがある。それでも死ななかったのは、親切な北国のひとに助けられたからだ。見知らぬ旅人のボクに親切にもメシとアシを提供してくれたひとがいたからだ。
少女はボクに捧げた詩を書いた。ある日、いつものように「風月堂」へ行くと掲示ボード(入り口レジ脇の壁に掲示ボードが置いてあり、メッセージなどはそこに画鋲で留めておけばよかった)にボクあての封筒があった。封書の面(おもて)には赤いマジックで、「JUNへ…」と書かれてあった。
それは黒いラシャ紙にホワイトのサインペンで書かれた1編のポエムだった。ポエムの形式で書かれたラブレターだった。
………………
あなたは 死んでしまったのだと思う 雨が降り続いているから たぶん……
あなたは 鳥です わたしは 魚です
そしてふたりは 雪が降れば 会えるんです
ボクは、その詩に返答を書いた。少女に手渡したかったが、凍死しそうになって不在のままにいまだ少女に手渡されることの無かった1編の返歌を。
そして 空から涙が 涙の結晶が降ってきたとき
世界は 純白に包まれて
空と 海は 溶け合うだろう!
鳥は 魚に 魚は 鳥に なるに違いない
世界は 無垢なたましいに 包まれ
世界が 白 一色になったとき??
1967年10月の嵐の一日だった。
この返歌としての詩は、ボクの私家版の詩集(「風月堂の詩(うた)」)に収められている。
寒いのは嫌いだが(なにしろ九州生まれである)、一面の銀世界は好きだ。この世界が無垢に包まれるように感じるからだ。
かって(というか、もう大昔なのだが)このボクのことを好いてくれた少女が居て、彼女は北国の生まれだった。名前しか知らない、その街に真冬にヒッチハイクでたずねていったことがあって、ボクは凍死しそうになったことがある。それでも死ななかったのは、親切な北国のひとに助けられたからだ。見知らぬ旅人のボクに親切にもメシとアシを提供してくれたひとがいたからだ。
少女はボクに捧げた詩を書いた。ある日、いつものように「風月堂」へ行くと掲示ボード(入り口レジ脇の壁に掲示ボードが置いてあり、メッセージなどはそこに画鋲で留めておけばよかった)にボクあての封筒があった。封書の面(おもて)には赤いマジックで、「JUNへ…」と書かれてあった。
それは黒いラシャ紙にホワイトのサインペンで書かれた1編のポエムだった。ポエムの形式で書かれたラブレターだった。
………………
あなたは 死んでしまったのだと思う 雨が降り続いているから たぶん……
あなたは 鳥です わたしは 魚です
そしてふたりは 雪が降れば 会えるんです
ボクは、その詩に返答を書いた。少女に手渡したかったが、凍死しそうになって不在のままにいまだ少女に手渡されることの無かった1編の返歌を。
そして 空から涙が 涙の結晶が降ってきたとき
世界は 純白に包まれて
空と 海は 溶け合うだろう!
鳥は 魚に 魚は 鳥に なるに違いない
世界は 無垢なたましいに 包まれ
世界が 白 一色になったとき??
1967年10月の嵐の一日だった。
この返歌としての詩は、ボクの私家版の詩集(「風月堂の詩(うた)」)に収められている。