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みちあき神父のふぉと日記

カトリック教会の司祭です。日記のテーマは「がんばらない―Take it easy―」。ここで、ひと息ついてくださいね。

白柳枢機卿さまの思い出

2010-01-13 16:10:00 | Everyday is special
突然ですが、フィリピンからこんにちは。
また、修道会の仕事のためにこちらに来ています。
昨年から、黙想会の10日間を除いて息つく暇もなく過ごしていましたし、これからもやらなきゃならないことはたくさんあるのですが、こちらののんびりとした雰囲気の中で少しは安息をと願っています。

ところで、昨年の12月30日、カトリック東京教区の前教区長でいらっしゃった白柳誠一枢機卿さまがご帰天されました(カトリック中央協議会のお知らせはこちら)。葬儀には参加できませんでしたが、ちょうど黙想会の最中でしたので、シスターの皆さんといっしょにミサの中で祈りをささげました。

枢機卿というのは、ローマ教皇を直接に支える顧問のような位階で、教皇を選出する選挙権を持っています。
白柳枢機卿さまも、2005年、教皇ヨハネ・パウロ2世の帰天後の「コンクラーヴェ」と言われる会議に臨まれ、その時に現在の教皇ベネディクト16世が選出されました。

そんな雲の上のような方ですが、じっさいにお会いした時の印象は、きわめて穏やかで丁寧で、しかも気さくで、優しい方です。

ぼくは、叔父の西本至神父に連れられて、何回か東京教区の司教館にお住まいだった枢機卿さまを訪ねたことがあります。そして、彼の部屋に招かれていろいろとお土産をいただいたことなどを思い出します。

ぼくが神学生になって、東京での2年間の哲学課程を終えてカリフォルニアの修練に出かける時に、枢機卿さまのところに一人で挨拶に行ったことがあります。
「がんばって来なさいね」と、その晩、司祭の家に住んでおられたもう一人の神父さんと3人で外に出かけて小さな壮行会をしてくださり、美味しい焼き肉をたらふくご馳走になりました。
その後も、ぼくのような教会の中の小さな者でも、手紙を書くとしっかりとお返事を下さったり、何かの機会でお会いすることがあると必ず覚えていてくださって声をかけて下さったり、いつも励ましてくださいました。

そんな優しい枢機卿さまですが、教会の社会に対する責任も、しっかりと果たされていました。

まだ、神学生になる前ですから1980年代後半のことですが、ぼくがフィリピンの叔父を訪ねていた時に、ちょうど枢機卿さまが来比され、日本16聖人の一人で、最初のフィリピン人の聖人となった聖ロレンソ・ルイスの出身のマニラのビノンド教会でのミサに参列したことがあります。その中の説教で、枢機卿さまが日本の戦争責任についての話を英語で丁寧にされ、フィリピンの人々にゆるしを願っていた姿を覚えています。

また、昨年のペトロ岐部と187殉教者の列福式では、白柳枢機卿さまが主司式され、素晴らしい説教をされました。その中で、キリシタン殉教の現代的意味を、たいへん力強く語ってくださいました。
ぼくはその式には参加できませんでしたが、枢機卿さまの説教を後から読んだりビデオを見たりして、たいへん感銘を受けたのは、本当についこの間のことでした。
(ちなみに、そのときの説教を読むことができます。こちらからどうぞ。)

白柳枢機卿さま、日本の教会のため、また世界の教会のために最後までご尽力くださり、本当にお疲れさまでした。
また、出会われた一人ひとりに、そのお人柄を通してキリストの愛を伝えてくださいました。

「キリストの愛がわたしたちを駆り立てているからです」(2コリント5:14)

枢機卿さまがご自身のモットーとされたこの言葉を胸に、ぼくも歩んでいきたいと思います。
どうか、わたしたち一人ひとりのために、祈りを取り次いでください。

白柳枢機卿さま、本当にありがとうございました。

写真は、前回鶴岡に行った折のもの。上の写真の遠くの雲の中に月山が隠れています。下の写真は、雪の上に小さな動物の足跡が見えます。
映画「おくりびと」の舞台となった鶴岡の土手とは、ちょっと場所が違うと思いますが、はるかに広がる風景の中に、この世の別れをした人々を想い出していました。


(画像をクリックすると大きく見られます。)

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