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民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

語り手のわたしと聞き手のあなたが
一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

「啖呵売」 口上

2012年12月10日 00時11分57秒 | 大道芸
 「啖呵売」 口上  大道芸 

 大道芸の啖呵の中には扱う商品がどんな物であっても使えるものがある。
言葉の調子や奇抜さで笑いを誘い、客に興味を持たせるねらいがある。

 結構毛だらけ猫灰だらけ。
見上げたもんだよ屋根屋のフンドシ。
見下げて掘らせる井戸屋の後家さん。
上がっちゃいけないお米の相場、下がっちゃこわいよ柳のお化け。
馬には乗ってみろ人には添ってみろってね。
物のたとえにもいうだろう。

 物の始まりが一なら、国の始まりは大和の国。
泥棒の先祖が石川五右衛門なら、人殺しの第一号が熊坂長範。
巨根(でかいの)の手本が道鏡なら、覗きの元祖は出っ歯で知られた池田の亀さん出歯亀さん。

 兎を呼んでも花札にはならないが、兄ィさん寄ってらっしゃいよ、
九に八つぁんお座敷だよと来りゃ花街のカブ。
憎まれっ子世にはばかる、日光結構東照宮、
産で死んだが三島のお仙、お仙ばかりが女じゃないよ、
四谷赤坂麹町、チャラチャラ流れる御茶ノ水、粋な姐ちゃん立小便、
驚き桃の木山椒の木、ブリキに狸に蓄音機、弱ったことには成田山、
ほんとに不動の金縛り、捨てる神ありゃ拾わぬ神、月にすっぽん提灯じゃ釣りが無え、
買った買った さァ買った、カタコト音がするのは若い夫婦のダンスの管(かん)だよ」<

「国定忠治~赤城山」 新国劇 

2012年12月06日 00時23分33秒 | 名文(規範)
 「国定忠治~赤城山」 新国劇 

 江戸後期の侠客、国定忠治を描いた行友季風の作品。
新国劇の代表演目の一つ。
悪代官を斬って 赤城の山に たてこもった忠治は、
やがて 無数の敵方に囲まれて 味方を失ってしまう。

忠治「赤城の山も 今夜を限り、生まれ故郷の 国定の村や、縄張りを捨て、国を捨て、
可愛い子分の 手前(てめぇ)たちとも、別れ別れに なる門出だ」
定八「そういや、なんだか いやに 寂しい気がしやすぜ」
巌鉄「ああ、雁(かり)が鳴いて 南の空へ 飛んでいかぁ」
忠治「月も 西の山に 傾くようだ」
定八「おらぁ、明日は どっちへ行こう」
忠治「心の向くまま、足の向くまま、あても 果てしもねぇ 旅へ立つのだ」
定八・巌鉄「親分!」

「田能久」 高知の民話

2012年12月04日 00時10分25秒 | 伝統文化
 「田能久」 高知の民話 民話をもとにつくられた噺

 阿波(あわ)の国、徳島の在、田能村の農民、久兵衛。
芝居が好きで 上手なので、村芝居の人気者。
とうとう 趣味が高じて「田能久一座」を結成、本業そっちのけで あちこちを興行して歩いている。

 あるとき、伊予(いよ)の宇和島から依頼が来たので 出かけ、これが大好評。
ところが、ちょうど五日目に、おふくろが急病との知らせが届き、
親孝行なたちなので、急いで、愛用のかつらだけを風呂敷に包み、帰り道を急いだ。

 途中、法華津峠を越え、鳥坂峠に差しかかると、一天 にわかに かき曇り、雨がポツリポツリ。
山から下りてきた木こりに、この峠は化け物が出るという噂だから、
夜越しはやめろと忠告されたが、母親の病状が気にかかり、それを聞き流して山越えにかかる。
山中でとっぷり日が暮れ、途方にくれていると、木こり小屋があったので、
これ幸いと、そこで夜明かしをすることに決めた。

 昼間の疲れで ぐっすり寝込んだ田能久、山風の冷気で 夜中に ふと目を覚ますと、
白髪で白髭の老人が 枕元に 立っている。
気味が悪いので 狸寝入りを決めると、
老人「おい、目を開いたままイビキをかくやつがあるか」

 実は、この老人は大蛇の化身。
人間の味もすっかり忘れていたから、素直にオレの腹の中へ入れと 舌なめずり。
田能久、震えあがり、実は 母親が病気でこれこれと 泣き落としで命乞いするが、もちろん聞かばこそ。

 そこで とっさの機転で、自分は狸で人間に化けているだけだと、うそをついた。
大蛇は「ふーん。これが本当の狸寝入りか。
阿波の徳島は狸の本場と聞いたが、呑むものがなくなって 狸を呑んだと あっちゃ、
ウワバミ仲間に顔向けできねえ」と、しばし考え、本当に 狸なら化けてみせろ、と言う。

 これには困ったが、ふと 風呂敷の中のかつらを思い出し、
それを被って 女や坊主、果ては 石川五右衛門にまでなって見せたので、
大蛇は感心して、オレの寝ぐらは すぐ側なので帰りにぜひ尋ねてきてくれと、すっかり信用してしまった。

 近づきになるには、なんでも打ち明けなければと、互いの怖いものの噺になる。
大蛇の大の苦手は煙草のヤニ。
体につくと、骨まで腐ってしまうという。
田能久は「金が仇の世の中だから、金がいちばん怖い」と口から出まかせ。

 夜が明けて、オレに会ったことは決して喋るなと口止めされ、ようよう開放された。
麓に下り、これこれ こういう訳と話をすると、これはいいことを聞いたと、
さっそく 木こりたちが峠に上がり、大蛇にヤニをぶっかけると、大蛇は悲鳴をあげて退散した。

 帰ると、母親の病気はすっかり治っていたので、安心して一杯やって寝ていると、
その夜、ドンドンと戸をたたく者がいる。
出てみると、血だらけで老人の姿になった大蛇。
「よくも喋ったな。おまえがおれの苦手なものをしゃべったから、
おれもおまえのいちばん嫌いなものをやるから覚悟しろ」
抱えていた箱を投げ出し、そのまま消えた。

 開けてみると、中には小判で一万両。

「七味唐辛子」 口上

2012年12月02日 00時32分09秒 | 大道芸
 「七味唐辛子」 口上

 みなさま おなじみの「薬研堀り七色唐辛子」でございます。
 薬研堀り七色唐辛子は、今を去ること 三百六十有余年、徳川の名君とうたわれました
三代将軍 家光公の時代、寛永三年 菊の宴に際し、初代 からしや徳上衛門は、
謹んで これを将軍家へ調味料として献上いたしますれば、
「おお、これはよきかな、珍味じゃ」と、ことのほか御意に召し、その褒章として、
徳川の徳の一文字を賜り、それ以来、山徳の商標を以って、
九代目現当主(徳一郎)に至るまで、秘伝の製法に研究を重ね、ご愛顧をいただき、
ために「薬研堀り七味唐辛子」が代名詞となりました。

 さぁ、これから、みなさまの目の前で、この七色を調合してご覧に入れます。
名にしおう 江戸 薬研堀り七味唐辛子、家伝で合わせます 元祖のさじ加減。
さぁ、ようくご覧くださいませ。

 ね、胡麻というのは、たいへん身体にいい。植物のバターと言われるほど栄養価の高いもの。
みかんの皮。これ、江戸時代は風邪薬ね。ああ、いい香りはするしね、ビタミンCがいっぱいだ。
で、これ、唐辛子、唐辛子というのはカプサイシンがいっぱいで血の流れをよくしてくれる。
山椒の粉、脳の活性にいい。内臓にたいへんよろしいものでございます。
全部身体にいいものばかり。
これは、あんパンの上にちょろちょろとかけるやつ。ケシの実ね。
これは細かいけれど、これはね、めまい、動悸、息切れをとってくれるという、全部漢方薬。
 
 じゃ、どうやって合わせるかというと、
まず、最初に入れますのは、武州、川越の名産、黒胡麻をこのように二杯入れます。
続いて、紀州、有田の名産、ミカンの皮の粉。
その次が、江戸は内藤 新宿 八つ房の焼き唐辛子。
それから入れますのは、東海道 静岡、朝倉の粉山椒。
さて、その次が、四国讃岐、高松の名産、唐辛子の粉。
それから、大和の国のケシの実。
そして最後が野州日光、麻の実。

 これにて七色が揃いましてございます。
 大辛、中辛、小辛、辛し抜き。
辛い辛くないは お好みに応じて いかようにも 調合いたします。
さあ、さあ、いかがですか、いかがですか。