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「江戸の卵は一個400円」 その17

2015年06月06日 01時18分56秒 | 雑学知識
 「江戸の卵は一個400円」 モノの値段で知る江戸の暮らし 丸太 勲 光文社新書 2011年

 「時は金なり」 P-83

 時計が普及していない江戸で時間を知る唯一の手段は、時を知らせる鐘の音だった。
 江戸で最初の時を知らせた鐘は「石町(こくちょう)の鐘」だ。この鐘は将軍秀忠の時代に江戸城内で撞かれていた。しかし、鐘撞き堂は将軍の御座近くにあったため、鐘の音は差し障りがあるとして太鼓に代わられ、この鐘は日本橋石町に作られた鐘楼堂に移された。

 鐘の音が届く範囲は、江戸の中心地で一番の繁華街であった日本橋をはじめ、東は隅田川、西は麹町、南は浜松町、北は本郷あたりまで広範囲にわたっていた。その鐘の音が届く範囲内の家持ち一軒それぞれから一ヶ月4文(80円)ずつ、一年で48文(960円)を受け取っていた。
 もちろん裏長屋も鐘の料金徴収の対象だが、裏長屋の住人ではなく大家が支払った。といっても、家賃にはその分も加算されていたのだろう。
 
 江戸時代は一日に12刻しかなかった。日の出が「明け六つ」、日没が「暮れ六つ」だ。
 日が長い夏と日の短い冬では「明け六つ」と「暮れ六つ」の時間は変わってくる。だが、日の出とともに起き出し日の入りとともに家に入る江戸の暮らしでは、これで不便を感じることはなかった。
 このように、江戸では時を知るのにも金がかかった。まさに「時は金なり」なのだ。