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「江戸の卵は一個400円」 その16

2015年06月04日 00時12分41秒 | 雑学知識
 「江戸の卵は一個400円」 モノの値段で知る江戸の暮らし 丸太 勲 光文社新書 2011年

 「江戸っ子の視力は超良好」 P-81

 街灯にネオンサイン、終夜営業のコンビニの灯り・・・。現在の日本の夜は宇宙から見ても輝いているそうだが、それに比べて人工的な灯りがほとんどない江戸の夜は真っ暗闇だった。夜間に斬り合う場面が映画や時代小説の中に登場するが、実際には相手の姿も見えず、とても斬り合いなどできなかったはずだ。

 江戸の夜の照明と言えば、油を使った行燈(あんどん)だった。陶器の小皿に油を満たし、そこから伸びた灯芯に火を灯して灯りとした。その灯りの周りを障子紙で囲い、床や台の上に置いて使用した。障子紙は煤(すす)けたり黄ばんだりすると暗くなるので、しょっちゅう新しい物と張替えられた。

 二本灯芯、三本灯芯とより明るくする工夫がなされたが、それでも文字がやっと見える程度。その中で縫い物や手内職をしていたのだから、江戸の人々は現代人より目がよかったのだろうか。あるいは、我々が明るさに馴らされて暗がりで物を見る能力が衰えたのかもしれない。

 灯りの元となる油も菜種油が臭いもなく煤も少ないが、米二升は買えた高級品で一升300文(6000円)近くした。裏長屋の明かりともなると、使用できるのは魚油だった。これなら菜種油の半値程度だが、臭いはするし煤も出た。そこで「油がもったいねえから早く寝ちまいな」ということになる。

 油を使った行燈よりもよほど明るいのが蝋燭(ろうそく)だ。しかし、これは菜種油よりも値段が高く、一本200文(4000円)くらいした。