京都で、着物暮らし 

京の街には着物姿が増えています。実に奥が深く、教えられることがいっぱい。着物とその周辺について綴ります。

KIMURAの読書ノート 映画 空海

2018年03月03日 | KIMURAの読書ノート

『―空海― KU-KAI 美しき王妃の謎』
チェン・カイコー 監督
夢枕獏(『沙門空海塔の国にて鬼と宴す』角川文庫/徳間文庫) 原作
ワン・フイリン チェン・カイコー 脚本 染谷将太 ホアン・シュアン 出演
2018年2月24日 日本公開
 
1200年以上前の中国・長安。奇病に罹っていた皇帝を法術で治すため遣唐使で日本から来ていた空海(染谷将太)は王宮に呼ばれるが、目の前で皇帝が亡くなるのを目撃する。丁度その場にいた記録係の白楽天(ホアン・シュアン)と空海は皇帝の死に不信を抱き、調査をしていく。その過程でこの死が先々代の皇帝とその皇帝から寵愛を受けた楊貴妃の死が関係していることを知る。楊貴妃は何故死んだのか更に二人は真相を追っていく。
 
阿部寛(阿倍仲麻呂役)が出演するというだけの不純な動機で映画館に向かったため、全く予備知識なしの観覧となった。てっきり、空海の自伝的な話だと思いこんでいたのだが、大間違い(夢枕獏が原作であるのも、映画館に入ってから知った)。まさにタイトル通り、現皇帝や楊貴妃の死の謎を追うというミステリー作品であった。しかし、本作品の見どころは、何と言っても、巨大なセットであろう。当時100万人が住んでいたといわれる大都市長安。このセット建設に4年かかり、樹木だけでも5万本植えたそうである。地平線の彼方にまで広がる長安の街並みは圧巻である。まさに広大な国土を持つ中国ならではのダイナミックさである。同様に宮殿内のセットにも圧倒される。例えるならジブリ映画『千と
千尋の神隠し』の舞台となる湯屋をそのまま実写化したような感じである。また、妖術が物語の中にふんだんに出てきて幻想的で魅惑の世界が繰り広げられる。エンターテイメントやファンタジーを追及するとこのような形で表現されるのかということを知らしめる作品である。
 
監督のチェン・カイコーは空海役を染谷俊太に指名した理由の一つに頭の形が僧侶ぴったりだと話しているが、まさにその通りできれいな剃髪姿を見るだけでも目の保養になる。と同時に、あまり多いとは言えない台詞を表情や佇まいで表現するその雰囲気は長安の巨大な都市に飲み込まれないオーラーを発していた。白楽天の人物的な背景を全く知らないため、ホアン・シュアンがどこまで白楽天に近いのかということは分からないが、長髪と躍動感のある姿は空海と対照的に演じられ、お互いを対比しつつも双方が絡み合う世界観を楽しむことができた。
 
さて唐突であるが本題。この作品、主役は「空海」ではない。主役は一匹の「黒猫」。作品を最初から最後まで牽引し、気が付くと涙腺を崩壊させてくれている。パンフレットによると、この猫はCGで作品に組み込まれているらしいが、物語に完全に溶け込んでおり、意識しないとCGとは気づかない。それだけ愛らしくもあり、ごくごく普通の動きをしている黒猫。だからこそ、彼の表情、仕草がぐっと胸を突き刺し、魅了され涙腺が崩壊するのである。彼が作品にどのような役割を与えられているかは是非映画館に行き、自身の目で確認して欲しい。しかし、愛猫家の方々には強くお薦めできない。それでもと思う方は、涙腺崩壊覚悟でタオルを何枚か持参することに喚起を促しておく。

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文責 木村綾子
 

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