■Dizzy On The French Riviera / Dizzy Gillespie (Philips)
既に今年も半分近く過ぎたところで、急に暑くなって来ましたですね。
なんか、もう、真夏が思いやられる気配ということで、本日のご紹介は初夏向けの1枚♪♪~♪
エンタ系を貫いた天才トランペッターのディジー・ガレスピーが自らレギュラーバンドを率いて作ったライプ盤という体裁ながら、実は様々なスタジオの魔法が上手く施された結果の楽しいアルバムなんですねぇ~~♪
一応の録音は1962年5&7月、メンバーはディジー・ガレスピー(tp,vo,per)、レオ・ライト(as,fl,vo,per)、ラロ・シフリン(p,arr)、クリス・ホワイト(b)、ルディ・コリンズ(ds,per) のレギュラー陣に、ジャケットのクレジットでは、Elek Bacsik(g)、Pepito Riestria(per) の他、実際は数人の助っ人が参加しています。
A-1 No More Blues (Chega de Saudage)
いきなり波や渚のざわめきが聞こえてくるあたりは、既に通常のモダンジャズアルバムを超越(?)した作りになっていますから、こういう効果音の使用について、イノセントなファンはちょいと面食らうかもしれません。
しかし自然に響いてくるボサノバのリズムと哀愁のメロディが流れてくれば、そこは素敵な桃源郷♪♪~♪ 「No More Blues」とクレジットされていますが、実はカルロス・ジョビンが畢生の「Chega de Saudage」と同じ曲なんですから、たまりませんよねぇ~~♪
しかもAメロをリードするレオ・ライトのアルトサックスには絶妙の湿っぽさがあり、サビで登場するガレスピー親分のトランペットが開放的というコントラストも秀逸ですから、後は流れに身をまかせというか、メンバー各々のアドリブとサポートの妙技に耳を奪われること必定です。
中でもラロ・シフリンのミステリアスにして奥の深いピアノから、楽しさ優先モードのディジー・ガレスピーが登場する件はジャズ者が絶対にシビレる決定版でしょうし、幾分の引っ込み思案が逆ら素晴らしいレオ・ライトのアルトサックス、さらには再び躍動するラロ・シフリンのピアノを煽る打楽器隊の浮かれた雰囲気の良さは絶品!
そしていよいよ登場する Elek Bacsik のギターが、これまたシブイ! ジャズギターの王道からは外れているかもしれませんが、随所にオクターヴ奏法やトレモロ的なフレーズをミックスさせる匠の技は侮れません。
ちなみにこのトラックはライプレコーディングというデータがあるものの、前述したSEや拍手の雰囲気も含めて、スタジオでの加工が良い方向に作用していると思います。
A-2 Long, Long Summer
ラロ・シフリンが書いた思わせぶりな哀愁ハードバップの人気曲で、そのエキゾチックなムードとファンキーな味わいの匙加減が流石の仕上がりですよ♪♪~♪
もちろんファンキーな部分を担当するのがディジー・ガレスピーであることは言うまでもなく、何時もとなんら変わらぬスタイルを披露しつつも、十八番のアフロキューバン節も抜かりありません。
また、ラロ・シフリンが要のリズム隊は力強く、時にはゴスペルファンク的な煽りも素晴らしい力演は最高だと思いますが、レオ・ライトの出番が少ないのは残念……。それでも要所では情熱的なフレーズを吹いてくれますから、まあ、いいか♪♪~♪
それとこのトラックは多分、スタジオレコーディングでしょう。テープ編集の痕跡も散見されますし、ラストでは正体不明のバリトンサックスがアンサンブルで登場していますから!?
そしてギターは誰?
A-3 I Waited For You
これはディジー・ガレスピーが永遠の定番演目としていた自作の美メロパラードですから、ここでもツボを外していません。短いながらも、実に密度の濃い仕上がりは手慣れたというよりも、集中力でしょうね♪♪~♪
もちろんラロ・シフリンの些か暑苦しいピアノも要注意だと思います。
B-1 Desafinade
これまたボサノバの大有名曲をミュートで軽く吹いてくれるディジー・ガレスピーが良い感じ♪♪~♪ そしてレオ・ライトのフルートやリズム隊のキメも鮮やかですよ。
当然ながら、そうした部分を担っているのはラロ・シフリンのアレンジの冴えということで、3分半ほどの短いトラックですが、きっちりとした纏まりが最高です。
ただし如何にも疑似的なライプの拍手は、些か無用という感じがします。
B-2 Here It Is
こちらは真性ライプトラックでしょうか、自然な臨場感が熱いファンキーハードバップにジャストミートした素敵な演奏が楽しめますよ♪♪~♪
それはグイノリの粘っこい4ビートで「お約束」の手練手管を駆使しするメンバー全員の意志の疎通であり、またモダンジャズ全盛期の証でしょう。こういう輝きこそが、わかっちゃいるけど、やめられない! それに尽きます。
B-3 Pau De Arara
ついに出ましたっ!
これぞっ、ガレスピー楽団伝来のラテンジャズをハードバップで煮〆た味わいが最高潮です。あぁ、こういうアップテンポの祝祭的なノリは、やっぱりジャズ者の琴線に触れまくりでしょうねぇ~~♪
う~ん、山本リンダの歌と踊りが出そうな雰囲気と言っては、贔屓の引き倒しでしょうか?
いえいえ、きっちり4ビートで突進するディジー・ガレスピーのトランペットには絶対に溜飲が下がるでしょう。
くぅぅぅう~~、本当にたまらん世界です♪♪~♪
B-4 Ole
そしてオーラスはモードを使ったエキゾチックな新風モダンジャズで、なかなか意欲的なバンド演奏が楽しめますが、親分がミュートを吹いているだけに、なんとなく同時期のマイルス・デイビスがやっていた事に共通する何がが感じられると思いますし、そういえばジョン・コルトレーンにも同じようなタイトルで似たムードの曲がありましたですね。
しかしこれはガレスピー親分のオリジナルという事になっていて、しかも絶妙の親しみ易さが隠しようもありません。
ですからレオ・ライトのフルートが神妙なフレーズを綴り、おそらくは Elek Bacsik であろうギターがしぶとさを聞かせるうちに、演奏は何時しか最初と同じような渚のざわめきと波のSEが被さってきて終焉するという演出がニクイですねぇ~~~♪
ということで、なかなか用意周到に作られた快楽盤だと思いますが、その仕掛人はプロデューサーのクインシー・ジョーンズなのでしょう。もちろんディジー・ガレスピーも納得ずくの結果であり、そうでなければ、これほど気持良いモダンジャズ作品は生まれなかったはずです。
ただし、そういう点を素直(?)に受け入れられないジャズファンも少なからず存在しますから、このアルバムがガイド本等々で名盤扱いにならないのも、これまた納得するしかないのでしょう。
それでもジャズ喫茶では局地的な人気盤になっている事実も否めませんし、なによりも楽しいジャズを求める愛好者が、このLPを競ってゲットしていたのが、往年の中古盤屋の風景でした。
まあ、今となってはCD化もされているようですし、再発も何度かありましたから、誰でも気軽に聴けるようになったはずでありながら、どうもイマイチ、注目されない事実は???
どうやら電力不足の猛暑は避けられない夏に向かって、このアルバムで涼をとるのも一興だと思うばかりです。
「I remember clliford」の男泣きのペットも堪りませんよね♪
あの盤の良さを高校生で分かった事は本当にラッキ-だったと思いますo(^o^)o
コメント、感謝です。
バードは破天荒な求道者であり、ディズはエンタメ系というのが、両天才に対する一般認識かもしれません。
しかしバードにだって楽しさ満点、癒しの名演がどっさりあるように、ディズにもガチンコなプレイは夥しく、問題は紹介のされ方なんじゃ~ないでしょうか。
1970年代までのジャズの聴き方は、特にジャズ喫茶においては悩んでいるのが本物という風潮がありましたからねぇ……。
とにかく「心」で聴きましょうよ。