■夜の柳ヶ瀬 c/w 愛は茜色 / カサノヴァ7 (日本コロムビア)
昭和40年代の我が国には未だ外人コンプレックスがあって、だからこそプロレスでは日本人対外人という試合が当たり前に成立して盛り上がっていた様に、芸能界においても外人やハーフのモデルが売れっ子となり、おまけに海外からの出稼ぎグループがハコバンとして人気を集めていた事は、今や隔世の感もあろうかと思いますが、そんなこんなの証拠物件のひとつが本日ご紹介のシングル盤であります。
なにしろそれはイタリア人のバンドたるカサノヴァ7(セッテ)が演歌をやってしまったという、ある意味じゃ~所謂「色物」なんですが、しかし独特のハイブラウな音楽性も同時に表出していたところにウケた理由があったのでしょう。
それはまず作詞作曲:柴田博、そして編曲:ブルーノ・ダラポッサ&ロレート・ルチェッティが提供のA面「夜の柳ヶ瀬」でいきなり全開!
曲調は完全にムードコーラス系の演歌なんですが、全篇でシャバダバ&ドゥドゥッドゥのスキャットコーラスがついていますし、バックの演奏パートにしてもソフトロック風味がミスマッチの魅力とでも申しましょうか、加えてリードボーカルが妙にソウルフルなんですから、たまりません。
発売されたのは昭和44(1969)年でしたから、ちょうどGSのバンドがムードコーラスに転向していくという業界の流れの中では、それなりにすんなりと受け入れられたかのようにラジオからは相当に流れていましたし、秋頃には芸能ニュースでそのヒットが伝えられた記憶があります。
で、肝心のカサノヴァ7(セッテ)については知るところも無いんですが、それでも有名なのはヒデとロザンナで活躍するロザンナの実兄と言われるフラビアーノ・ザンボンや叔父であるブルーノ・ダラポッサがバンドに在籍していたという事でしょう。
ただしサイケおやじとしては、掲載のジャケ写を見ても、誰がどの人なのかは判別出来ないんですけどねぇ……。
また、同じくバンドメンバーの扱いでジャケ写に登場している二人の女性の一方、グリーンの衣装の人が後にブレイクするキャシー中島という事実は、尚更に有名でしょう。
ただし、これは本人が現在までに告白されているらしいんですが、レコーディングには参加していなかったそうですし、ライブの現場でも別人がステージに出ていたそうですよ。
まあ、そんなところにも、昭和の芸能界がどっぷりの事情があって、サイケおやじは好ましく思うのです。
それとリードボーカルを担当しているマリオ・ランディは本当に歌謡曲向きのボーカリストで、後にテレビドラマ「めくらのお市」の主題歌と挿入歌をレコーディングしていて、それが秀逸な仕上がりゆえに今では堂々のコレクターズアイテム!
実は近々、それを入手出来そうな気配になってきましたので、その折にはご紹介させていただきますね♪♪~♪
さて一方、作詞:中村小太郎&作曲:城二三八、そして編曲:ブルーノ・ダラポッサが提供のB面「愛は茜色」が、これまたスブズブのムード歌謡にシャバダバスキャット&ヨーロピアンなコーラスワーク、おまけにテナーサックスの下世話な咽び泣きが絡みつくという、憎らしいほどの仕上がりなんですねぇ~~♪
個人的には、こっちの「愛は茜色」を愛でるのがサイケおやじの偽りのない気持ちであります。
ということで、外人コンプレックスなぁ~んていう、些か懐かしくも面映い言葉を使ってしまいましたが、それにしてもここまで狙って完成された洋楽演歌は流石と思うばかりっ!
まさに歌謡曲の雑食性と汎用性を証明したのがカサノヴァ7(セッテ)かもしれず、そこでこれからも追々ご紹介は続ける所存でございます。